12話 後処理
ELF第三班隊長補佐・代理
霞夜野 透
脳力・保護色
「とりあえず、外に出るぞ」
緯壱に言われるがまま後追い、2人で表門に向かう廊下を歩く。
それにしてもさっきの彪寧さんと言ったか、それと少年。
あの二人の格好は、以前病室で見たELFの潰瀧さんと似た様な格好だった。
やっぱりELFの関係者なのだろうか。
そしてそんなELFの人達と仲良く喋っていた緯壱...
一体何者なんだコイツ。
(気まずい)
この騒動に一段落着きそうと言うのに、緯壱との間に気まずい空気が流れている。
何時もは他愛も無い会話をしながら歩く所だが、相手の視線は1ミリたりともこちらへ向かず、会話も起こらない。
雑音すらうるさく聞こえ、緯壱から呼吸音すら途絶えて見える。
(コイツ息してるのか? 死んでんじゃないのか?
いや、わざと呼吸を止めて俺をからかっているのか!)
そんな事を考えているが、俺は痺れを切らして問いかける。
「緯壱...俺もこの前さ、ELFの人に世話になったんだよ」
「知ってますよ。」
「..えっ....に、入院した理由だってトラックに引かれたんじゃないんだぜ?」
「ええ、それも知ってますよ。」
今朝の「大丈夫だったか?永禮」ってのも演技してたのか?!コイツ!
白々しく敬語なんか使いやがって...
会話をする度に緯壱への怒りがフツフツと湧き上がる。
「なんで敬語なんだよ!」
「任務中ですので。」
「ELFとお前になんの関係があるんだ!」
「私はELFの隊員です。」
「な!...」
まさかとは思っていたが、ELFの隊員だったなんて、もちろん今までそんな素振り一切見ていない。
「いつからだよ」
「あなたと出会う前からですよ。」
俺は驚愕する。
俺が初めて緯壱に会ったのは、中学2年の時
引っ越してきた緯壱に俺が話しかけたのがきっかけだ。
その時より前となると、コイツは子供の頃からこんな渦中に居たのか....
さっきまでの怒りが、半分くらい同情に変わる。
俺はこの4年間、緯壱と一緒に居といて何もきずけなかった、高二にもなるのに不甲斐ない馬鹿りだ。
そうこう話しているうちに、グラウンドに出る。
「おう、緯壱と....永禮くんじゃないか!」
ELFの人が集まってるならもしやと思ったが、やはり潰瀧さんも来ていたようだ。
「先輩! わざわざ出向かなくても...彪寧さんも来ているのに...。」
「お前は俺の後輩だからな、俺が来なくてどうするよ!」
何か地元ノリを見せられている気分になり、思わず2人から距離を取ってしまう、宛ら今の自分は借りてきた猫と言った所だろう。
「それにしても婆さんの言った通りだな、永禮くんは面倒事の中心になるって」
「ですね、今回ばかりは梵婆さんの予知脳力に、外れて欲しかったのですが....」
何やらヒソヒソと喋っている。
(俺の悪口か?)とも思ったが、潰瀧さんはそんな事言う人でも無いのですぐ我に返る。
2人の観察をしていると奥の門を過ぎたあたりで、おかしな格好をした2人組を見つける。
片方は百均に置いてある飾り付けの様なマフラーにピンクのズボンと白いダウンジャケット着た、男?の様な人。
もう片方は身長が2m超えてるんじゃないかと思うくらい大柄で、何か大きな物を背負ってる様子だ(背負ってる物は黒い布で巻かれていて見えない)
しかもこの時期にタンクトップ、もう9月も終わりと言うのに寒くないのだろうか。
「おかしな人もいたもんだ...」
「何か言いましたか永禮さん。」
「いや、それより....その敬語、やめてくれないか?」
「無理ですね、公務中なもので。」
俺たちの会話を聞いた潰瀧さんは、効果音をつけるならガハハとつけたい様な笑い方をして、それに緯壱が少し怒る。
「永禮くんからも話を聞きたいから、またウチまで来てくれないか?」
「あ、わかりました」
潰瀧さんに誘導され車の方へ向かう、緯壱も一緒に乗り込む様だが、どうも細めで睨みつけて来るのだ。
「なんだよ」
「なんでもありません。」
俺たちは車へ乗り込む。
ーーーーー「あの子、私達のグループの中でも、古株ちゃんだったのに...残念だわ〜」
「風、刃、使い道、アッタ」
「しょうが無いわよ〜、本人は戦いたく無いって言ってたんだから〜」
奇抜な2人は外から学校を見物していた。
「異進すれば、も〜っと強くなったかも♡」
「オデヨリ?」
「貴方の方がステキよ〜」
「ヨガッタ」
「と・に・か・く、証拠隠滅の為に〜、ケスワヨ!!」
「ワガッタダ」
巨大な男が手を叩き、強く握り締め力を入れる。
ーーーーー「よしこれで搬送完了ね!」
「潰瀧さんも帰られたようですし、僕たちも行きましょう。」
「そうね、後処理は私の趣味じゃないもの」
護送車に男を乗せた彪寧、霞夜野は、早々と帰ろうと車へ向かおうとしていた。
「かやのん、なんか変な音しないか?」
「確かにしますが、近くで工事でもしてるんじゃないでしょうか?」
「いや....護送車からだよ!」
立ち去ろうとする2人の背後から、ジリリリリと火が伝う様な音が、小さくはある物の、彪寧の耳はそれを辛うじて拾う。
「いや、い゛や゛ぁだー!」
車内にいる男の意識が戻ったのか、ドンドンと暴れながら戸を叩く、男まるで何かに命乞いをする様に叫び散らし何かに怯えた様子だった。
「やばそうですよ、彪寧さん!」
「そんくらい見りゃわかるよ!掴まんな、かやのん! 走飛ばすよ!」
霞夜野はおぶられ、猛スピードで走り出す彪寧にしがみつく。
「ア゛バッ」
男は最後まで泣き叫び、暴れながら、彼の心は膨らんで逝く。
ーーー「おい緯壱、なんか学校の方から爆発音がしなかったか?」
「彪寧さんがいますし、そんなヘマしないでしょう」
燈彩が車窓から見た光景は、煙の昇る学校だった。




