第9話 楽にゴブリンを倒せるようになってきた
ダンジョンの中に入ってすぐにくるみんが口を開く。
「足引っ張るなよブルー」
彼女は杖を前に構える。
「俺誰だと思ってる!」
勢いよく腰に携えたダガーナイフを一本だけ手に取る。
「魔力なしの雑魚」
「うるせえ! 魔力有りの天才!」
「けなしてる風に大褒めするのなんなん?」
歩を進めながらダンジョンの奥へ入っていく。
「確かダンジョンのボスを倒したらダンジョン内部のモンスターが数も減って狂暴性が減るんだっけ、そんでボスの近くにダンジョンコアってのがあってそれをぶっ壊したらダンジョンが四八時間後に消えるんだっけ」
「ほとんどの場合は消えるね」
「消えない場所もあるのかよ、こわ」
「何事も百聞は一見に如かずだよ」
「おお……」
俺はくるみんに対して感嘆してしまった。ちなみにここのダンジョンコアはダンジョン協会は壊さず、ダンジョンを保護するという形をとっているらしい。
「なによ」
「なんか年上と喋ってる気分だぜ!」
「お前精神年齢ガキってこと! ってなんか来たわね」
くるみんが前方に視線を向ける。
――――ザザッ!
ダンジョンの土が足で擦れるような音がする。
「何体いるか魔法で探知するわ」
「いや、多分しなくても分かる気がする」
「……?」
くるみんは怪訝そうにこちらを見る。
「二足歩行生物が四体きている。歩幅の小ささからしてゴブリンかな」
「ふーん、すごいね」
くるみんは俺の台詞に驚きもしなかった。
そして待ち構えてること数十秒後。
「確かにゴブリンが四体ね」
棍棒を持ち皮をきたゴブリンがぞろぞろとやってきて、俺達を視界に入れると、
「ギギ!」「ギー!」
指をさしながらわめいてきた。
「じゃあ俺つっこんでいくぜ」
俺はゴブリンに向かって駆け出そうとする。
「そこがブルーの弱点だな」
「どういうことだよ」
「近接戦闘しかできないってところ」
「しょうがねぇだろ! これしかできねえからな!
俺は駆け出しながら肩越しにくるみんをチラ見して開き直る。
すると、くるみんは右手に持った杖ではなく左手の人差し指をゴブリンに向けていた。
「水刃・二連」
彼女の指から水の刃が二つ飛び出す。
それは走っていく俺の横を通り過ぎ、
「「グギャ!」」
水の刃は前方にいた二体のゴブリンの首を切断した。
すげぇ……自信過剰なだけあるわ。
心の中でくるみんのことを感心しながら俺は左右から棍棒を振るってくる二体のゴブリンに応戦することにした。
俺はダガーナイフを右にいるゴブリンの喉元に投げつける。
「グェ!」
ゴブリンは喉を抑えて後方へと倒れる。俺は息の根を止めるために突き刺したダガーナイフの柄の頭を殴りつけ、ナイフで喉を貫かせつつ、左にいるゴブリンの攻撃をよける。
俺は今倒したゴブリンの棍棒を拾いあげて、生きているゴブリンと向き合う。
「そいや!」
俺が棍棒をゴブリンに投げつけるとゴブリンはよろめく、その一瞬の隙を突いて俺はゴブリンの懐に飛び込んで腹を殴ると、拳がゴブリンのお腹を貫いて絶命してた。
「まあ、こんなもんか」
俺は以前、苦戦したゴブリンを余裕で倒していた。
「どうだみたか俺の力を!」
くるみんの方を向いて拳を宙につきつけ、力を誇示する。
「私が水刃・四連撃ったら、水の刃を四つ飛ばせて一気に殲滅できたけどね」
「四連もできるのかよ」
「やったことないから分かんない」
「分かんないのかよ!」
俺はツッコミながらくるみんと共に歩を進める。
「――――上!」
くるみんは大きな声を出す。
「うわ!」
「ガウゥ!」
くるみんの言葉で上を見たら天井に張り付いた茶色の二足歩行の獣――コボルトが飛び出してきた。
俺は後方に飛びのいてコボルトの爪による攻撃を避けた。
さらにコボルトは飛び蹴りをしてきたが俺はコボルトの足を掴んで、
「そいやぁ!」
壁に叩きつける。
「水刃」
そして、くるみんが水の刃でコボルトの体を真っ二つにした。
「少し奥に進むとガンガンにモンスター出てくるな」
「それがダンジョンよ、でもおかしい」
くるみんは立ち止まって顎に手を当てて考え込むような仕草をしていた。
「おかしいの?」
俺はオウム返しで反応した。
「ブルーが自分で言ってたじゃん、普通はダンジョンのボスを倒したら、時間が経つにつれてモンスターの数が激減するし、活動的にはならないの」
「つまりどゆこと」
「こういうとき考えられる原因は三つある」
くるみんは右手で指を三本立てて話を続ける。
「一つはダンジョンのボスだと思って倒したのがダンジョンのボスじゃなかった、もう一つは倒したのはダンジョンのボスだったけどもこのダンジョンには裏ボスがいること」
「裏ボス?」
「もうなんにも知らないよね!」
俺が知らないことが多すぎてくるみんは癇癪を起しかけていた。
癇癪というよりイライラしてるのだろう。年下は怖い。
「し、知っとるわい! 裏ボスって要は裏ボスだろ」
「馬鹿」
彼女は俺を罵倒したあと、ため息をつきながらも再び話を続ける。その間に俺達は歩き続けて、現れるゴブリンとコボルトを屠っていく。
「数が多いわね……水刃! 高ランクのダンジョンには最深部に隠し部屋か隠し階段があるのよ。そこに裏ボスがいるの稀にね……ただここ高ランクじゃないからな」
彼女は水の刃でコボルトを倒しながら説明してくれる。
次いで俺は近くにいるゴブリンが振るってきた棍棒に向かって正拳突きをし、棍棒を粉砕し、そのまま拳でゴブリンの頭を潰した。
「なるほど、で最後の一つは?」
「過去にあった唯一の事例なんだけど、知性種って知ってる?」
「今はいないけど昔いた人語を喋れるモンスターとか亜人のことだろ。世界中のトップクラスの覚醒者が殺されたけど最終的に知性種を殲滅できたのが一九九九年で俺の生まれる四年前だけど学校でも習うぐらい有名な話だよな」
「そうそう、知性種が制覇したはずの低級ダンジョンに現れてモンスター達が活性化した事例があるからね」
「まさに今みたいな状況だな! ははは!」
俺はくるみんの話を笑い飛ばしながら下の階層に続く階段が前方に見えるのに気付く。
「はは、なんかフラグみたい~」
くるみんも軽く笑い飛ばしていた。
そして俺達はダンジョンの地下二階へと到達する。
くるみん曰くこのダンジョンは地下三階までらしい。しかも、地下三階の部屋はたった二つだけらしい。
低ランクのダンジョンにはありがちな造りとのこと。
「おおすげぇ! つーかなんで明るいんだ?」
さっきまで土造りの洞窟内だったのに二階は鬱蒼とした森が広がっていた。
「だいたいどこのダンジョンも低階層は洞窟か森らしいわよ、明るい理由は知らないけど、とにかくダンジョンは地球に流れてきた異世界って説を聞いたことある」
「へぇ……」
森にはレベルが低いモンスターが出やすい証拠なのだろうか。次いでくるみんは立ち止まり地面へ杖を向けた。、
「ボックス」
くるみんが呟くと目の前に木製の箱が現れる。
「……これは召喚属性の魔法だな」
くるみんは水の刃を飛ばしたことで水属性の魔法を扱えることを証明している。
そして、人を治癒できることから治癒属性の魔法とサーチの魔法を扱えることから補助属性の魔法も扱えることになる。
それでもって今行使した魔法は召喚属性だ。
これが世界初の四属性の魔法を行使できる人間か。
「くるみんほんとチートだよな。どれか一つの属性を極めれば世界有数の探索者になれるのに四つもあるとか」
「天才だからね、ふぅ……」
いつもの調子で自信満々なくるみんだが軽く呼吸を整えていた。
「今の魔法で魔力使い過ぎたか?」
「まさか? と言いたいところだけど私のコアはセカンドコアのレベル2だからね、魔力量はまだまだ発展途上、大技は連発できないし召喚魔法そのものに多くの魔力を消費するわ、でもこのままだと世界最強になるのは間違いないね」
「謙遜しろ謙遜、てかその木箱出して何するんだ」
「中に録画・配信用のドローンが入ってるの、前ダンジョンに潜ったときは2階をあんま探索しなかったから今回はブルーの修行ついでにこの階層をくまなく歩こうと思ってね。それと珍しい現象やモンスターに出会った証拠を撮ってダンジョン協会に提出したらお金貰えるのよ」
「へぇ~」
俺は相槌を打ちながら、ちゃっかりしてんなこの子と思った。
こうして俺達は二階の探索を始めた。




