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非覚醒者のダンジョン攻略~魔力を持たないダンジョン探索者は魔法少女とコンビになり【戦う度に強くなること】が判明する~  作者: 夜月ネイン


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第3話 体の傷が勝手に治るんですが

 ゴブリンの足を掴みながら俺はゴブリンメイジとの距離を詰める。ゴブリンメイジは焦っているのか慌てつつ口を開く。


「キーーシャーシャー!」


 さっき聞いたのと同じ発音だ。あいつ、またフレイムボールを撃とうとしてるな。あと、ゴブリンが俺に足を掴まれて引きずられているので喚いている。


「お前の弱点は!」


 俺は喋りながらゴブリンの足を掴んだまま放たれたフレイムボール、もとい炎の弾に向かって跳躍した。


「近接戦闘ができないことだ! この野郎!」


 俺はフレイムボールの上へと飛びそして両手に持ったゴブリンを下から上へとゴルフのスイングのように振ってフレイムボールにぶつける。その瞬間、手に痺れるような衝撃が伝わる。


「あちちちちちぃ!!」


ゴブリンと炎の弾が衝突するとゴブリンのつんざくような絶叫が耳に届く、そして火だるまになったゴブリンを持っている俺の手が火に巻き込まれた。


「!?」


 俺が地面に着地して、顔を見上げるとゴブリンメイジは大口を空けていた。近くまで俺が迫ってきたことに驚いたのだろうか。それとも俺の行動に驚いたのだろうか。だがそんなことは今はどうでもいい。


「これが人間の知恵だ! この野郎! 熱い! 熱い! 手がやばいわ! このまま生卵持ったら温泉卵ができあがっちまうよ!」


 燃え盛るゴブリンを持ったまま駆け出し、ゴブリンメイジの目の前で体を捻る。


「くらえ! 必殺! ゴブリンファイヤー!」


 俺は捻った体の反動を利用し思いっきり燃え盛るゴブリンをゴブリンメイジに叩きつける。それと同時に俺はゴブリンから手を離した。


 ゴブリンとゴブリンメイジは火だるまになりながら俺の前方へと吹っ飛んでいき、地面を転がった。


「探索者の心得、その二!」


「うわ、びっくりした!」


 俺が手をズボンで叩いて手に着いた火を鎮火させてると少女が後ろからなんか言ってきた。


「きゅ、急になんだよ」


 俺は振り返りながら口を開く。


「知らないの? 探索者になった人達に渡されるガイドブックがあるでしょ?」


「いや、探索者じゃないから知らんがな」


「じゃあ黙って聞いて」


「お、おう」


 俺は黙って少女の言葉を聞くことにした。


「探索者の心得、その二には戦闘で倒したモンスターの生死は必ず確認すること、モンスターの中には死んだふりをして不意打ちをするから注意すべし! と書いてるわ」


「まどろっこしいぜ! 要は死亡確認すればいいんだろ!」


 俺は倒れて黒焦げになっているゴブリンとゴブリンメイジに近づく。


 死んでいるのか?


 二体の顔を覗き込むと、


「――うわっ!」


 ゴブリンメイジが拳を突き出してきたので顔を右に反らして回避する。


「あぶねぇ! 正義の鉄拳!」


 俺は左拳をゴブリンメイジに叩き込むと、


「――――!」


 ゴブリンは声を上げる暇もなく、俺の拳で頭部が粉砕してお亡くなりになってしまった。


「う、うぁ……妙な感触……てか……あれ? 俺こんなに力強かったっけ? それに火傷の跡、どんどん小さくなってきてね?」


 頭部を破壊できる力があるならダガーナイフで棍棒を弾いたときにもっとゴブリンを圧倒して斬り倒すことができたはずだ。


 それに手の火傷跡が小さくなっている。


「っと、今はそれよりもう一体の止めを刺すか」


 俺は手が汚れないようにゴブリンの首をダガーナイフで斬った。


「全く何がしたかったんだ」


 俺は肩を落とし体を弛緩させて少女の方へと戻る。


 一方、少女の方は俺に右手のひらを向けて「サーチ」と唱えていた。俺のステータスを確認しているのだろう。彼女の目の前に青透明のモニターが浮かび上がる。そこには文字が書いてあるようだ。というか、サーチの魔法って他の人にも視認できるものだったんだな。


 さらに少女は手のひらを下に向けて手招きをしていた。


「あ、はい」

 

 素直に従った方がいいと思った彼女に駆け寄る。


「今サーチって唱えただろ? 俺もしかして強くなってる? いえーい」


「うざ……はい、ヒール」


 少女は呆れ顔をしながら、俺に杖を向けて「ヒール」と唱える。すると、俺の全身は黄金色のオーラに包まれて傷がみるみる治っていく。


「おお! まるで柔らかい絹に全身が包まれてるようだ。心地が良いぜ……俺が地球の一部だと認識させられるような感覚」


「意味の分からない感想ありがとう、おっさん」


「お兄さんだよ! 俺はまだ二二だ!」


 思わずおっさんという言葉に反射してしまった。


「そんなことより、分かったわ、お兄さんの体質が」


「そうだろ、俺はお兄さんだろ」


 お兄さん呼びに戻ったことで俺はうんうんと頷きながら満足する。


「お兄さんはゴブリンと戦ってる間にステータスが上がってた、だから急にゴブリンの頭を拳一つで潰せるぐらい強くなってわけ」


 少女は右手の人差し指を立てて俺が強くなっている経緯を話してくれる。


「……………」


 俺は彼女の話を真剣に聞きつつ、


「つまり俺は天才ってことか」


 ふざけてみた。


「癪に触るけど、そういうことになるわね、ちなみに私も天才よ」


 少女は自信満々に口端を吊り上げる。


「君が天才なら俺はスーパー天才ということになるぞ」


 負けじと応じてみた。


「じゃあ私はウルトラスーパー天才」


「じゃあ俺はウルトラスーパーデラックスデリシャス天才」


「頭悪そうな発言」


「お互い様だろ」


 互いに不毛な会話だと感じていた俺達はかぶりを振ったあと、少女が口を開く。


「話を戻すわ、お兄さんのステータスはさらに上がったわ。コボルトとの一戦目は死の寸前まで追いやられて、二戦目は簡単に勝った。今のゴブリン戦も最初は苦戦してたけど最後は相手を圧倒できた。激しいトレーニングをしたあとに筋力が大きくなるように、厳しい戦いの中で成長する特異体質とみたわ」


 なるほど。それなら、圧勝したコボルトの二戦目で大して強くなってなかったことと辻褄が合う。


 って、ちょっと待て死の寸前までとか言ってなかったか?


「俺、コボルトの一戦目、死の寸前だったの!? いや、正直死ぬかなって思ってたけども……やっぱりそうだった?」


 思わず自分に向かって人差し指をさす。


「出血の量からしてね、でもお兄さんの傷口はそれほど深くなかった、今の戦いで心当たりある?」


 といいつつ少女は治りつつある俺の傷を見る。


「そういえばゴブリンメイジのフレイムボールで両手が火傷したけど、火傷の跡がだんだんと治っていたな」


「つまりお兄さんには再生能力がある、それも特異体質とみたわ」


「話聞いてる限り俺、化け物じゃん」


「やーい化け物」


 少女はニヤニヤしながら俺をからかう。


「いや、少しは気を遣えよ!」


 俺は手のひらをビシッと向けてツッコム。


「でもなんかありがとうな、いや俺もさ二二年生きてきて、なんか人より傷の治り早かったりするよなとは気になってたんだ。さすがに戦いの中で苦戦すればするほど強くなるのは予想外だけど」


「平和な世の中だから気付かなかったわけね、でもありがとうはお互い様よ。面白半分でお兄さんをからかってみたかっただけだし~」


「性悪すぎるだろ」


 彼女に呆れ顔を向ける。


「それは人のこと言えないと思うかな?」


 彼女は小首を傾げる。


「おいおい、俺は君みたいに死にかけの人間を戦わせようとするほどイカれてないぜ!」


「じゃあ、言わせてもらうけど覚醒者でもないのになんで一人でダンジョンに潜ってるの? 非覚醒者は同行者としてダンジョン協会に認定された覚醒者がいないと駄目なのに~、あっれれ~、もしかしてルール違反ってやつ?」


「…………君は素晴らしい人だ。俺を治療して俺の力を見出した、素晴らしい人だ!」


「クズ野郎だね!」


「ぐっっ!」


 俺は苦虫を嚙み潰したような顔をする。


「ふっ、勝った! 年上言い負かすの気持ちいい~」


 少女は鼻で俺を笑い、片眉を吊り上げて、いかにも相手がムカつくであろう顔をしていた。


 腹立つが何も言えねぇ!


「まあ、百パーセント中百パーセントお兄さんが悪いけど、ダンジョン協会の警備もザルすぎるのも問題だね。いくらモンスターがダンジョンが出現してから六〇年間外にから飛び出さない事実があっても、そういうモンスターの性質だとしてもね。大人って駄目ね」


 ダンジョンが出現したら二四時間、通常の警備員とは別に覚醒者の警備員と周辺に警備用の攻撃型ドローンとカメラ付き監視型ドローンを置く決まりになっており、ダンジョンのランクによって警備員とドローンを配置する数が増える。


 俺の家の近くで出現したこのダンジョンは最も低いランクであるFランクのダンジョンだ。覚醒者の警備員は二人、警備用のドローンは攻撃型ドローンと監視型ドローンが1台ずつ配置する決まりになっている。


 とはいえ、俺は別に警備員の目を搔い潜ったわけではなく、ここが家の近くなのでたまたまダンジョンに入れる裏道を知っていただけだ。


「つか、なんか誰か近づいてきてね」


「魔物じゃない……人間だね」


 俺と少女はダンジョンの奥へと続く通路を見る。


 何故なら、数多の足音が近づいてきたからだ。

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