第18話 Dランクダンジョンへ
老若男女で賑わうアンティーク調の内装が施されたカフェで俺とくるみんは今後のことについて話し合ってる中、くるみんがあることを提示してきた。
「一週間後の今日、Dランクダンジョンに潜るわよ」
「マジかよ」
Dランクダンジョンはサードコア・レベル九の覚醒者が一人で無事に出入りできる難易度だ。あくまで無事に出入りできる難易度であってダンジョンを制覇するとは限らない。というかそもそもダンジョンは一人で制覇はできない。階層ごとに異なる環境への対処、様々な罠やモンスターへの警戒、食料や仮眠場所の確保などしなければならないことが多いため低級かつ低層のダンジョンはともかく、階層が多いダンジョンは人手が必要だ。
そして、配信をしているなら尚更、人手が必要だろう。
「謎の特異体質とセカンド・コアの人間でDランクダンジョンを制覇しようとか言うんじゃないんだろうな」
「Fランクならともかく二人でDランクダンジョンを制覇しようなんて言わないわよ」
くるみんはこう見えて計画的でリアリストな面があるから流石にそこまで無茶言わないとは思ってはいる。Dランクダンジョンに潜ると言うからには何か打算があるはずだ。
「制覇までしなくていい、目立てばいいだけ」
彼女は人差し指を立てる。
「……つまりどういうこと?」
俺は彼女が言ってることの要領を得られなかった。
「数カ月前、渋谷駅の再開発工事中に地下で新しいダンジョンが見つかったのよ」
「そこがDランクダンジョンってわけか」
「そうそう、ダンジョン協会が覚醒者達の出入りを許可するのが来週の月曜なんだよ。東京二三区内で久々に新しいダンジョンが見つかれば配信者達はそこに食いつくわ」
「ふむふむ」
なるほど、話が見えてきたぞ。とりあえず、くるみんの話に耳を傾けよう。
「その証拠に大手配信事務所が大々的に来週の月曜にそのダンジョンに潜ると告知してるのよ。んでそこでその人達より目立って世間に認知される作戦」
「ふーん」
俺は相槌を打ちながらティーカップに入ったミルクティーを一気に飲む。
そして、くるみんに人差し指を向けながら口を開く。
「つまり事務所を立ち上げる前に大手のリスナー達を奪おうってわけか、お主もワルよのぉ~」
「人に向けて指さすな。でも、リスナー稼ぐにはうってつけでしょ」
と言いながら、今度はくるみんが俺を指差してきた。
「くっくっ……まあな」
「ふふ……」
俺とくるみんは静かに笑いながら口端を吊り上げる。きっとこれが俗に言う悪い顔というやつなんだろう。
「で、その大手事務所はどこなんだ。最大手のレクイエムしか思いつかないが」
「レクイエムじゃない方よ」
「エデンの方か」
エデンはレクイエムに並ぶ最大手ダンジョン配信事務所であり、エデンとレクイエムは国内二大ダンジョン配信事務所と呼ばれてる。
「エデンのやりそうなことだよな、いいぜ月曜日、Dランクダンジョン制覇する勢いで目立とうぜ」
俺はくるみんの案に賛同する。
レクイエムもエデンも所属している覚醒者は同じぐらい強い。ただ、配信の方向性が違う。レクイエムはダンジョン攻略を優先する実力主義の事務所で世界三大ダンジョンの一つである東京メインダンジョンでの配信が多く、サブダンジョンでは若者の育成をする。そしてエデンは企業案件に強くアイドル的立ち位置の事務所であり、サブダンジョンを見つけては攻略していく配信が多い。
「その息や!」
「なんで関西弁やねん」
急に関西弁喋ったくるみんに対して俺は関西弁でツッコミを入れた。
それから俺達は実力を上げるために平日はダンジョンに潜ることにした。
俺が住んでいた高尾山にはサブダンジョンが八つもある。くるみんと出会い、そしてヴァルグとの戦いを繰り広げたFランクダンジョンはダンジョン協会で高尾第八ダンジョンと命名されており。その名の通り高尾山で八番目に見つかった新しいダンジョンだ。
修行にうってつけの場所なので俺達は高尾山にある高尾第七ダンジョンと高尾第六ダンジョンを潜り続けた。どちらもEランクダンジョンだ。初のEランクダンジョンである。
Dランクダンジョンへ挑むための前哨戦と思って戦い続けた。
どのダンジョンもボスが倒されてるのでモンスターが活性化されておらず数も少なく比較的安全だったがヴァルグ以上に強い敵が現れるかもしれないので警戒は怠らなかった。
――――そして、一週間後の午後六時。
すでに俺達はヴァルグとの戦いで飛躍的に成長している。そして、その戦いでくるみんのコアのレベルが上がったことで彼女は新たな魔法を覚えることができたし魔力量も増えた。特に一定範囲内にいるモンスターを探知できる補助属性の魔法が役に立つ。俺は相変わらず強靭な肉体と再生力を駆使した戦い方をしていた。以前に潜っていたFランクダンジョンに出てくるモンスターなら瞬殺できる強さを得ていたことを実感したし、Eランクダンジョンのモンスターにも苦戦することはなかった。
その上、俺達は実力を伸ばし続けていた。
満を持して俺とくるみんは新しく見つかったDランクダンジョン――渋谷迷宮と名付けられたダンジョンへと向かった。




