第15話 今後の方針を練ろう その1
俺とくるみんは軽口を叩き合いながら応接室に入る。俺は部屋の中央に置かれてるふかふかのソファーに座り、前にあるテーブルを挟んだ位置にあるソファーには羽衣姉妹が座る。机にはチョコチップが入ってるクッキーが一〇枚ほど置かれてた。
「クッキーが一〇枚で人が三人、割り切れないぞ、どうやって分ける」
俺は気にしなくてもいいであろうことを気にした。
「お姉ちゃん、この人大雑把な癖に変なところ細かいよ」
「あはは………大雑把かどうかまでは知らないけど。でもクッキー分けるいい方法があるわ」
あやねんはクッキーを一つ取りながら喋り続ける。
「ブルー君にクッキーをあげず、私達で五個ずつ分けましょう」
「さっすがお姉ちゃん! それグッドアイディア〜」
くるみんは親指を立てる。
意地悪姉妹め! でも、この人ら天邪鬼な性格だからな。
「俺、その弄りには応じないぜ。どーせ口だけだろ」
俺はそう言ってクッキーを一つとって頬張る。
「「ああ〜!」」
前にいる二人は俺がとった行動を見て思わず声を上げていた。
パサパサ系クッキーだな紅茶が欲しくなる。
「飲み物ない?」
「うわ、人の家なのに図々しい! 自販機に行って買ってこい!」
くるみんは俺の問いかけに応じながらレモンティーが入ったペットボトルを投げてくる。やはり、やはり天邪鬼
「なんか俺てっきり、メイドか執事が現れて紅茶を入れてもらえると思ったわ」
俺はそれをキャッチし、遠慮なくレモンティーを飲む。
やっぱり天邪鬼な子だ。
「くるみんと仲良いわね、本当にこの前会ったばかり?」
あやねんは不思議そうに俺とくるみんを見る。
「ああ、三日の付き合いだ」
俺が指を三本立てた後、くるみんがうんうんと頷く。
「よし……そろそろ本題に入ろうぜくるみん、ここに俺を呼んだ理由を教えてくれ」
俺は昨日、ダンジョンから脱出した後、くるみんと浅井さんに半ば強制的にここに連れられた。だが、その理由は分からないままだ。
「仕方ないから本題に入ってやる」
くるみんは快く俺に応じてくれるようだ。
「ちなみにそれって私関係ある?」
「うん」
くるみんは姉に対して返事をしたあと、真剣な面持ちで話を切り出す。
「昨日出会った知性種に対する対処とブルーが探索者証明書を手に入れるための話と今後の話、その三つのことを考えないとダメかなって思って話し合いの場を設けたのよ」
知性種のことはほっとけないもんな。
それに俺、探索者にならないと無職のままだし。そしてその後、動画配信で収益を得ないと駄目だし。
そうだな話さなきゃならないことたくさんあるな。
「なるほどな……俺さ、自慢じゃないけど今の三つのこと何も考えてないぜ!」
俺は自信満々に言葉を吐く
「駄目だこいつ……はぁ……」
くるみんが呆れながらため息を吐く。次に彼女は二の句を継ぐ。
「まず最初の問題を解決するか、知性種に関しては戦いの記録をドローンで録画してるからダンジョン協会に提出すればいいんだけど、滅びたはずの存在が生きてると知れ渡ると大騒ぎになるのは必然だよね」
「……でも協会に提出するしかなくね」
俺はくるみんに応えながら再びクッキーを手に取り口に運ぶ。
「ダンジョン協会の窓口に渡したとして、その後の初動が大事なの」
「へ、へぇーそーなんだ。大事よね初動。分かるわーそれ」
よく分らないので適当に相槌を打った。
「……この人何も分かってないよ」
くるみんは呆れ顔を横にいる姉に向けると次はあやねんが話を始める。
「ブルー君、いい? 協会は映像を見て世間に公開するかしないかの判断したりするのだと思うけど、最初に判断をするのは過去に知性種と出会って詳しい者の方がいいでしょ?」
「確かにな、よく知らん職員に話を進められたくないしな。でもそこまで杜撰な組織じゃないだろ。窓口に渡したらしかるべき人が見てくれるんじゃないの?」
「そうかもね、でもそうじゃないかもね。でもどうせならダンジョン協会にいて過去に知性種の全滅に最も貢献した人物に最初に見せれば、初動をまず間違えることないでしょ」
「なるほどな! あれ……? 過去に知性種の全滅に最も貢献した人物って……」
確かにそんな人物がダンジョン協会にいる。有名な人だ。
俺がその人の名前を口にするより早く、くるみんが口を開く。
「――――九条 厳。日本のダンジョン協会の会長にして引退するまでに日本最強の覚醒者と呼ばれた御年62歳のお方よ」
「知ってる知ってる! 恰幅のいい人だよね、ちょい悪親父系の見た目の人だよな。何度かテレビで見たわ。多分、俺も将来ああいうワイルドな見た目になっちゃうね」
「黙ってろ」
「はい」
俺は口を噤んだ。
てかどうやって九条厳に直接コンタクト取るんだ。
「そもそも九条さんとは知り合いなのか?」
と、俺が問いかけると羽衣姉妹は首を横に振るので俺は眉をしかめる。
「はい? じゃあどうやって誰が九条さんに取り次ぐんだよ」
「「パパ」」
姉妹は同時に喋る。そうか、羽衣製薬の社長なら取り次げるのか。
次いでくるみんは髪を掻き分けながら口を開く。
「まっ、これも私の権力のおかげね」
「親の権力だろ!」
俺は突っ込みながらレモンティーを飲み干す。
「そうとも言うかな〜」
「そうとしかいえないだろ」
俺は呆れつつくるみんの話に耳を傾ける。
「とりあえず、九条厳に知性種との戦いを見せるのを兼ねてブルーの特異体質についても知ってもらうことで探索証明書を手に入れるから、ブルーも後でパパに挨拶してね」
「ほいほい〜」
俺は軽く返事をした。せめてものお礼に差し入れでも持っていきたいが手持ちがないな。
「くるみん、親父さんに手土産持って行きたいんだけどお金を貸してもらえないか」
「なんで私のパパのお土産代を私に用意させるのよ」
冗談半分で言ったがやはり、駄目か。
「じゃあ、あやねん貸してくれ」
「いやいや、私のパパでもあるから」
あやねんは吹き出しそうになっていた。冗談はこの辺にしとこう。残りの一つの問題をどうするかについて聞こう。
「で、今後はどうするんだ。探索者になって、配信で稼いでダンジョン配信事務所を設立する方向性かなとは勝手に思ってるんだけど」
俺はふわっとした今後の展望を言う。
「私もその方向性だと思うけど、そこに至るまでの過程考えてる?」
「全然考えてないぜ」
「少しは自分で考えろ」
「戦闘だけじゃなくて人事、企画、戦術、戦略、広告、営業の担当はくるみんだろ」
「ふ、負担でけぇぞ、てめぇ! というか全部じゃねえか!」
くるみんは立ち上がって拳を振り上げてきた。
「落ち着こ胡桃」
「ま、ブルーのことだから適当に喋ってんだろうけど」
くるみんは姉に嗜められてソファーに座り直す。
いや、正直、適任だと思うが。だって俺、戦闘しかできなさそうなんですが。
自分で言うのもなんだが戦うしか能がないよ。
「で、今後は具体的にどうすんだ。くるみん」
虚しい考え事をしながら俺は最後の問題について話すように促した。
「そうね……とりあえず、今後のために人手が欲しいわね」
くるみんは人差し指を顎に当てながら視線を宙に漂わせたあと、姉の方に顔を向ける。
「お姉ちゃんお願い! 私達の仲間になって! 大学で忙しいのも分かるけど、事務所建てたら所属してちょうだい。たまにでいいからダンジョンの攻略を手伝って! 裏方でもいいから!」
「私をここに呼んだ時点で何言われるか分かってたけど、そうね、ダンジョンに潜ったことがないわけじゃないけど、うーん」
あやねんは腕を組んで考え込む。ちなみに彼女も覚醒者だ。魔法の属性は召喚属性でコアはセカンドコアに到達してるらしい。
ちなみに俺は今のくるみんの発言で気になったことがある。あやねんは俺と同い年だ。現役で大学に入学して留年することなく卒業してるなら今頃、社会人のはずだ。
「あやねん、まだ大学に通ってたのか」
「薬学部だからね」
「ああ、そうか薬学部って6年制か。てか製薬会社の娘なら、薬学部か医学部にいそうだもんな、少なくとも理系の進路に進みそう」
彼女がまだ大学生な理由が分かったわ、納得した。
「手伝うのはいいんだけど、時間作れるかな。それに事務所に所属するのはいいけど、私、大学卒業したら就職したいし――」
「ほんと! ありがとお姉ちゃん!」
くるみんは姉の言葉を遮って姉の手を取って感謝を述べていた。
「でも私、就職したら辞め――」
「ありがとお姉ちゃん!」
「話聞け!」
あやねんは強引なくるみんに押されていた。




