表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

第一話「再誕少女」/ アツイオモイ

いつぞやぶりに情熱が再燃して書き始めました。

リハビリも兼ねてなのでそのうち色々と再編集もするかと思いますが、お付き合いいただければと思います。


また舞台設定の都合上、ジャンルをハイファンタジーにしておりますが、私自身もっとしっくりくるものを探しております。指摘等があればこっそり変更するかもしれません。

まだ春先だというのに、寝苦しさを感じて目が覚める。ぼんやりと瞼を開けると、その先には窓があってカーテンが小さくはためいていた。

窓の外にはまだ闇が広がっていた。カーテンと対照的な色は吸い込まれそうなほど深く深く広がっている。


(領に戻る頃には満月かしら?)


隙間から見える夜空には優しい目を向ける半分の月が浮かんでいた。

同じ国内だからだろう。見える月はいつもの姿をしている。


いくら北部で寒さに慣れていると言っても、寝ているときまで我慢するのは難しい。部屋の中が温かいのはとてもありがたかった。


この旅行でやることは昨日を最後に終わっている。一番の目的だった魔力の測定もつつがなく終わり、あとはここから数日かけて我が家に戻るだけだ。


(…ふふ。あの人は待ちきれないかもしれないわね)


普段は領主としてあちこちを飛び回っており、家に帰ってゆっくりすることなど考えられない生活をしている。そんな彼でも娘のこととなると別だった。今回も帰宅の予定を確認した上でその前後は空けておくと言っていたから、おそらく今日か明日くらいから家にいるのだろう。

いつもより書き損じなどを作りながら、いつもより少しだけ時間をかけて仕事をしているに違いなかった。もしかしたら周りからのお小言も増えているかもしれない。


(そういうところは子供みたいだものね)


こういうところを男はいつまでも子供というのだろうか。楽しいことや嬉しいことを我慢できずにはしゃげるのはそれはそれで羨ましい気もした。

きっと帰りの知らせを受ければ玄関でソワソワしているのだろう。首を長くしているのが容易に想像できてしまった。


(それにしても、思ったより暑いわね……)


目が覚めてしまったこともあるが、背中にじわりと汗が滲んでいるような感覚がしている。気がつけば足先は布団の外に出ているというのに全く寒さを感じなかった。

冷え性と言うわけではないが、こんなことはなかなか無い。


(間違えて暖房が入ったとか……?)


部屋全体を温めるために備え付けられた暖房は窓から少し遠い位置にある。窓際は空気が冷えやすいので、温めるには不向きだ。スイッチが入っていないか確認しようと寝返りをうったところで、


(――なんてこと!?)


目の前で炎がベッドを包み込んでいた。枕はベッドと同じように既に火だるま。シーツにあしらわれていた可愛らしいレースも灰になってしまって見る影もない。

数時間前まで寝ているものと同じ形をしていたベッドは、今や炎を揺らめかせてのたうち回っていた。


「リリっ!?」


ベッドを使っていたのは娘だった。

どこかにいるのではないかと部屋を見回すが見える範囲に人影はなく、ドアも閉じたままで誰かが通った様子もない。もう一度燃え上がる炎に視線を移すが、ベッドを燃料にしているせいか火の勢いが強すぎて娘の姿を判別できない。


多少の水をかけたところでなんの変化をもたらすことはないだろう。消火設備がないかとあたりを見回すが、そんなものは見当たらない。

貴族御用達のこの宿は内装にもこだわっており、厨房は遠くセキュリティにも気を使っている。見目をよろしくするのは仕方がないことだが、それがこんな形で歯がゆい思いをするとは思わなかった。


「このままでじゃ……」


火はこの僅かな間にもさらに燃え広がらんとついにベッドの枠にも手を伸ばしている。天井まで届いてはいないが、手をうたなければそれも時間の問題だろう。


「ごめんなさい。リリ。――心凍らす愚か者」


迷っている時間はない。

本来、街中で攻撃性の強い魔法を使うなど言語道断。厳罰を貰っても仕方のない行為。だがそれと天秤にかけてでも今のうちに終わらせることには意味がある。


「空はアワれを聞き届け、生まれ出づるは猛きナき声」


多少強権を振るうことになっても、それはそれで仕方がないと割り切る他ない。人の噂に上がる前に対処しなければ。

そのために受けるであろう誹りも厭わない。


(あまね)くスベてを喰らえ、永久(とこしえ)(すべから)くもタラせ」


高まる魔力に後ろのカーテンが激しく暴れる。もしかしたら外に光が漏れてしまっているかもしれなかった。

騒ぎになる前に終わらせなければならない。


手元の魔力が強さを増しゆっくり大きく広がっていく。ジワリジワリとゆっくり広がっていく光は、触れた先から炎を包み込んでいく。


シン淵よセカイを侵せ(リサルルヴォク)


――視界を白が覆い尽くした。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ガタガタと揺れがひどい。定期的に整備がされているとは言え、地面をならしただけの道。繰り返しの通過や雨風で路面はボロボロだ。食い縛らなければ歯がかけてしまうかもしれないほどだった。

普段ならこんなスピードで馬車を走らせることはない。横転の危険性が高いし、何より引いている馬の体力が持たない。道に躓いて跳ね上がる車体、激しく上下する馬の首が限界を物語っていた。

それでもスピードを緩めるわけに行かない。逸る気持ちが手綱を持つ手を震えさせる。悪天候でなくて良かった。雨が降っていればすでに見る影もない様相になっていたことだろう。


「あとどのくらい!?」

「もうまもなくです!!」


怒鳴るようにして話さなければ互いに声が聞こえない。馬車の中の事は想像もしたくない。せめてその時間が一秒でも短くなるようにと祈るしかなかった。


空は疾うに白み、太陽もそろそろ顔を覗かせるだろう。早馬を走らせたが、故郷の街は蜂の巣をつついたようになっているに違いない。


「奥様は仮眠をとってください!」


きっとそんなことはできないとは思ったが、それでも万が一には手綱をとっていただかなければならなかった。

日が昇る頃には街には着くだろう。しかしそれまで自分の体力が続くかは五分五分だ。本当なら最後まで一緒にいなければならないが、それ以上に迷惑をかけたくなかった。


本来、この馬車も護衛の移動のために用意していたもので、貴族の、ましてや現当主の婦人が乗るものではない。いくら故障してしまったとはいえ、それを使わなければならない状況が冷静さを奪っていく。


「あとはあなただけです。持たせなさい!!」

「――っ!! 舌を噛まないでくださいね!?」


長い付き合いになっているせいで気づかれたくない弱音を見透かされてしまう。

誰よりも不安だろうというのに、それでも他人に叱咤できるのが奥様の強いところだった。助けられたのは一度や二度ではない。


勢いよく走る馬に合わせて手綱が踊る。下半身で必死にバランスを取るが、時々馬車が跳ね上がるせいで手に力が入るのは避けられない。じわりじわりと滲む汗が風に流されていく。身体の芯は恐ろしく燃えているというのに、指先に熱が伝わろうとしていない。


疲れた視界に過ぎていく木々が映るが、どれもこれも同じ木に見えてくる。そんなはずはないのだと自らに言い聞かせ、白い手が更に白くなるほど力を入れた。




それから少し経って太陽が山際から顔を出す頃、ようやく森の端にたどり着いた。

指し示すようにして目の前を照らす日光。視界には黒々とした土が広がり所々に草がはえていた。踏み固められた道の先を辿ると石のような材質の壁が見える。


「奥様、着きましたよ……」


夜通し手綱を握りつづけた身体は砂埃にまみれ、首元もジャリジャリして気持ちが悪い。

急ぎたい気持ちもあるが危険な夜の森を抜けてしまった以上、意識さえ保っていればゆっくりと進んでも危ないことは無いだろう。馬の息もあがってしまっている。もう一度走れと言ったところでできないに違いなかった。


「ならあなたも休みなさい。ここからは私がやるわ」

「……だめですよ。これは私の役目です」

「もう……相変わらずなのね」

「ほら、みんな来ますからね」


冷え切った汗が最後の体力を奪おうとしている。手に力が入らないのを誤魔化すために前方を指し示すが、震えてしまって真っ直ぐに指差せない。きっと気づかれてしまっただろう。

その先にはまだ豆粒のようにしか見えないが、日の光の中をこちらに向かってきている一団が確認できる。早馬はちゃんとその責を果たしたようだ。


「奥様も準備があるでしょうし、私も一旦仮眠を取らせてください」


引き継ぎさえしてしまえばこのお役目は一旦終わり。奥様は新たに用意された新品の馬車で、私はこの一晩でタイヤも何もかもがボロボロになってしまった馬車で、あと半日を過ごすことになるだろう。


その後のためにも今からはお互いに休みを取らなければならない。


「――ぃ、―く――ょう―」


いよいよ声が聞こえる距離になる。安心してしまったのか、疲れ切った体が休息を欲してまぶたを下ろそうとしてきた。


「すぐに休みなさい? 無理しちゃだめよ?」

「ふ……ええ。もちろん」

「でもお風呂は入りなさいよ?」

「慣れておりますので」

「だめよ?」


言外に休ませろと行ってみたが、それはできない相談のようだ。


「寝たら頭から水をかけるわ」

「まだ春先ですよ? 風邪を引いてしまいます」

「ふふ、あなたなら大丈夫でしょう?」

読んでいただきありがとうございます。

第一話はおおよその構成はできておったのですが、時間が取れないため毎日投稿は難しいかもしれません。

少なくとも切りのいいところまでは書き上げるつもりですので、お待ちくださいますようよろしくお願いいたします。


随分と時間が空いてしまいました。8月はちょっと頑張りたいです。


次話以降のネタを思いつくのはなんででしょうね……(妄想したいだけ??)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ