第14話『和の国、ヤヨイ』
そこはステラ国の家とは雰囲気が全く違った。
畳に脚の短い茶色いテーブル、座布団。
和や礼儀、伝統を重んじる国、ヤヨイ国ーー
その部屋にそぐわない黒いドレスを着た少女が居た。
「シク、シロキがお呼びだぞ」
暑苦しいコートを着て、目の下に痣がある青年、クロキが呼びかける。
「はぁ?今、髪をといていたのですけど〜」
「ちゃっちゃっと、結べ。遅刻すれば、お怒りになるぞ」
「ふん、わたくしは悪いこと、していませんもの」
シクはマイペースで、いつものツインテールを作り上げる。
最後のカールも忘れない。
「さぁ、行きましょう?」
「あぁ」
シクはクロキの後について行くのだった。
♢♦︎♢
クロキは勢いよく襖を開ける。
バンッ。
壊れるんじゃないのかという音が鳴った。
「シロキ、連れて来たぜ」
「ありがとう。クロキ」
ワイシャツを着て学生のような風貌の青年はシロキ。
真っ白な髪が静かに揺れる。
彼は読書家の為、常に水色のカバーがかけられている小説を持ち歩いているのであった。
「シク、この前の任務はどうでしたか?」
「目標は見つけましたわ。邪魔が入りましたけど」
「シクがしくったからな?くっはははっ!おもしれー!」
「全然!面白くないですわ!」
シクは頰を膨らませ、腰に手を当てて怒った。
「そうプンプンするなって、お前がプンプンしても、可愛くないぜ?」
「なっ!」
「こら、クロキ。からかうのはやめなさい。シク、報告を」
「ふん。目標は灰色の髪に白い肌。緑の瞳でしたわ」
「やはり、そうですか……ありがとう。私はフミオ様の所に参ります」
「そっか、気をつけてな」
「はい……」
シロキは優しい表情から一変、緊張感を持った表情に変わった。
♢♦︎♢
主の部屋に近づくに連れて、廊下は暗くなり、蝋燭の数が減っている。
初めて来る者は不気味だと言うだろう。
だが、ここは特別な場所だ。
ヤヨイ国の中で唯一、和の風景を保っている。
ヤヨイ町ーー
昔は首都であったが、他の場所に移され、そこにはビルという建物が並んでいるらしい。
ここだけが、和や伝統を守り続けている。
そして、ヤヨイ町を治めているのは我が主、タチバナ・フミオ様なのだ。
「フミオ様、シロキです。ご報告に上がりました」
「入れ」
「失礼しますーーっ……」
この部屋に入ると毎回、体が重くなり、気持ち悪い。
その理由はフミオ様が首に巻きつけ、撫でている二匹の影の大蛇のせいだろう。
大蛇の体の周りからは闇が溢れ出している。
大蛇は「シャー」と威嚇なのか、そうでないのかよく分からない鳴き声を出していた。
「フミオ様、シクに調査をさせた所、目標を見つけたようです」
「あぁ!ミド、もう少しで会えるのですねぇ」
緑色の着物や赤い数珠を少し揺らし、ニヤリとする。
「シロキ、ミドを連れ戻す準備を進めてください」
「了解しました……」
ーー連れ戻すじゃなくて、誘拐するの間違いじゃないか……。
シロキはもちろん、口にすることはなかった。




