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森蝕のユグドラシア~終末世界の歩き方~  作者: にとろ


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1話 ここはどこ私は…

全体的に文字数少なめかもしれません。


おはようございます。

良い天気ですね?

今日も良い一日になるといいですね。


………さて、そろそろ現実逃避はやめよう。


「ここはどこだろうか?」


はい。私は今、何処か分からない森の中に居ます。

私、地下鉄の電車内に居たよね?


少し思考の整理をしてみよう。

私の名前は天都紗枝(あまつさえ)。

28歳彼氏なし(作るつもりもなかったが)。

平穏な日々をこよなく愛する会社員である。

いつもの如く会社に出勤しようと電車に乗っている最中に不穏な音がした直後、身体が何かにぶつかって痛かったことまでは覚えている。


断じて森の中ではなかったし、そもそも私はスーツを着ていたのだ。

今は何故か生成りのワンピースを着ているが。

それに足下は俗に言う木靴というやつだろうか。

更に言うなら私は髪を染めてなどいない。

今は何故かちょっと緑がかった色になっているが。


「まさか、異世界転移とか転生じゃあるまいな」


そういったサブカルチャーは嫌いではないが平穏を好み変化を嫌う私としては、自分の身に降り掛かるなど言語道断である。


でも一応…


「ステータス!!」


ステータスは出なかった。

めちゃくちゃ恥ずかしい。



◇



ステータスさんは強敵でしたね?

まだ顔から火が出そうな程だ。

恥ずかしーい!


さて、兎にも角にも行動せねばなるまい。

この仮称異世界、更に森の中だ。

何が居るか分かったものではない。

隠れられる場所や水場の確保は最優先である。


(とはいえ現在地が分かるわけでもなし、歩いて探すしかないかぁ…)


この広大(推定)な森の中を闇雲に歩いて探さなければならない事態に気持ちが萎えそうになるが、危険な生物に襲われてからでは遅い、と言い聞かせて足を前に出す。


時折り、聴こえてくる鳥の声にビクビクしつつ辺りを見回し不思議な感覚を覚えている。


仮称異世界とは思っているものの…植生があまりにも普通、というか。

異世界っぽさがまるで無いのだ。


「立派だなぁ…杉だよねこれ?」


それも屋久杉とか縄文杉とかそういった類いの。

それが見渡す限り全方位に生えている。

隙間がないとはいかないまでも、そんな木々が至る所に生えているものだから森の中は日差しを遮って薄暗い。

空がハッキリ見えたのは目覚めた場所くらいだろうか。


まさに大樹海といった趣だ。

そんな色々な意味でスケールが大きい森の中に居るからなのか、あらゆる物が大きく見える。

そう、動物さえ。


(うさぎよね?)


うさぎには見える。

体長2m近いが。

フレミッシュジャイアントなんて目じゃない大きさである。


そしてそんなうさぎさんは今、死にかけている。

脇腹を角で貫かれて。

鹿のように見える謎の生き物に襲われた様だ。


(あれ…何?)


鹿のようには見える。

普通の鹿は背中に木など生やしてはいないが。

更に言えば鹿は雑食に近い草食なのでうさぎを襲う事はそうないだろう。


うさぎを角で貫いたまま木鹿は動かない。

今の内に逃げた方がいいだろうか。

幸いにも風下だし大きな杉が陰になっているので気付かれてはいない様に思える。


迷っていると目を疑う事態が起こった。

木鹿に貫かれているうさぎが萎んでいるのだ。


『ゴクンッ』『ゴクンッ』『ゴクンッ』


水を勢いよく飲み込む様な音と共に、どんどん萎んでいき最後にはミイラの如くシワシワになったうさぎを首を振って角から外すと木鹿は去って行った。



◇



未知との遭遇を果たした私は、木鹿が去って行った方向とは逆方向に歩き続けた。


本来であれば、発見した動物の痕跡を追っていく方が水場を見付けられる可能性は高くなるのかもしれないが、あんな危険生物と同じ方向に行くなど冗談ではない。


他にもどんな危険があるか分かったものではないし、何よりあの異常な鹿は巨大なうさぎから体液を吸っていた。

水分というなら充分に摂取出来ている事であろう事からアレの行く方向に水場が無いと仮定して動く事は当然と言えるだろう。


それに普通に怖いし。


◇


歩けども歩けども水場は見付からず食べられそうな物も見付けられてはいない。

偶にきのこを発見するが、素人が手を出しても危険なだけだろうと諦める。


目覚めた時に見えた青空と今現在、森の隙間から微かに見える夕暮れ時といった空の様子から歩いたのは4~5時間位だろうか。

もう歩けないという程に疲れきってはいないが、何も見付けられていないのだから慰めにもならないだろう。


唯一の救いはあれから危険生物に遭遇していない事くらいか。

個体数はそんなに多くないのかもしれない。

そうであってほしい。


兎にも角にも安全な場所を探さねばなるまい。

完全に夜になったら視認性が落ちるし更に危険度は高まるであろう。

あの巨木に登って獣をやり過ごす事など出来そうにもないので探すのは勿論、地上に限定される。


(あ、ここ良いかも)


見付けたのは巨木の洞だった。

巨木の根元に出来たもので、そのサイズも相応にデカいがこの森で見たサイズ感がおかしな動物が入れる程ではない。

一応、何かの巣になっていないかの確認はしてみるが既に辺りは暗いしサバイバル知識がある訳でもないので正直なところ分からない。

虫なんかが気にはなるがこの際贅沢は言うまい。


(動物の糞っぽいものは多分無いし大丈夫だと思いたい)


周辺から使えそうな木の枝や大き目な植物の葉を集めて申し訳程度に木の洞に蓋をする。

本当なら有毒かどうかも分からないのに植物に触るのは避けるべき行動なのだろうが、仕方ない事だと考えるしかない。


ようやく今日の寝床を確保する事が出来た安心感で、今までの疲れがどっと出る。


(疲っかれたぁ…歩き通しだったしなぁ…何よりも精神的に疲れた)


色々考える事はあるが今は取り敢えず身体を休めたいところである。



◇



おはようございます。

いい朝ですね。

まだ辺りは暗いから朝かどうかも分からないんですけどね。


さて、疲れた身体を休めている内に眠ってしまった様だ。

幸いにも危険生物に襲われる事なく目覚める事が出来た。


目が覚めた所で一つ考える事がある。


(何故、私はお腹が空いていないのだろうか?)


ついでに喉も乾いていない。

一応、水場を探して歩いてみたし道中食べられる物を探してもみた。

だが、あれだけ歩いていたのに空腹も喉の乾きも覚えなかったのだ。

寝て起きたらお腹が空くかなぁ?なんて軽く考えていたがそんな事はなかった。


まぁ、食料も水分も確保出来ない現状からするととても都合がいいのは確かだ。


「痛っ」


どうやら身動ぎした時に手を引っ掛けて切った様だ。

その傷からは人間では有り得ない透明な雫が滴り落ちていた。

そして傷があったのが幻だったかの様にすっと消えていく。


「え…」


何時の間にか私は人間ではなくなっていたらしい。




お読み下さりありがとうございます。

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