第4話 腹を割った話と、縮まる距離
澄み渡る青空。
目の前に広がる牧草地帯。
そして放牧された牛さんたち……
とてものどかで美しい光景なのに。
近くにあったベンチに座り、
その景色を眺める私たちの表情は
陰鬱そのものだった。
「……ところでアメリア。
差し支えなければ、
どうしてこの島に来ることになったか、
お互い腹を割って話し合わないかい?
これから『断罪学園』で生活していくにあたり、
必要な情報は共有しておきたいんだ。
……その、ここに来るまでに
僕自身が色々な経由を辿ってきたからね」
少し寂し気な様子で言い淀むエドワード。
(……気の毒に、
きっと彼も私同様に……)
そこで再び、
元婚約者の言葉が脳裏に蘇る。
『お前のような受け身の人間は
どこへ行っても流されるだけだ。
あの島で果たして生き残れるかな?』
そう、受け身は駄目。
受け身は……。
そこで私は愛想よく笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、もちろんです。
では私の方からお話ししますね」
「え? 僕から聞いたのに、
アメリアから話すのかい?」
エドワードの目が丸くなる。
「はい、この際順番など些細なことです。
私が『フレデリック学園』に来ることに
なったのは、婚約者が別の女性と恋仲に
なったからです。
そこで嫉妬に狂った私が、彼女に嫌がらせをして
傷つけたと婚約者に訴えられました」
息をつかず一気に話すと、
エドワードの表情が曇った。
「そんなことが……」
「はい、そうです。
私は彼から婚約破棄された挙句、
この島に追放されました。
尤も彼女に嫌がらせなどしていません。
濡れ衣を着せられただけです」
「そうか。
……僕も君と同じようなものだよ。
婚約者はね、
本当は僕の弟が好きだったんだよ。
それで僕が二人の仲を嫉妬して
弟の命を脅かしたと、
根も葉もないことを言われてね……。
何故か周囲の人々は二人の話を信用して、
このざまだよ。
もちろん僕はそんなことしていないけどね。
でも、誰も信じてくれなかった」
自嘲気味に肩をすくめるエドワード。
そこで私は小さく首を振った。
「私はエドワード様の話を信じますよ」
「え? 本当に? どうして?」
「だって目を見れば分かりますから。
エドワード様の目は正直者の目をしています」
特に根拠は無いけれど、大きく断言した。
「ありがとう、
そんなことを言ってくれたのは
アメリアが初めてだよ」
「エドワード様……」
じっと見つめ合う私たち。
モォ~……
モォ~……。
相変わらず、牛たちの
のんきな鳴き声があたりに響き渡っている。
「お待たせいたしましたー!
車輪の取り付けが終わりましたので、
どうぞお乗りください!」
ふいに、少し離れた場所から
ジョージ副理事長に呼ばれた。
振り向くと大きく手を振っている。
「それじゃ行こうか」
「はい。エドワード様」
すると――
「エドワード、だよ」
「え?」
「僕のことはエドワードでいいよ。
なんならエドでもいい」
じっと真っ直ぐに見つめてくる彼。
その真摯な眼差しが、
なんだか無性に気恥ずかしい。
「そ、それなら……エドワードで……」
「うん、それじゃ行こう。アメリア」
「はい」
私たちは立ち上がると、
副理事長の待つ立派な馬車へと歩き出した――




