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婚約破棄された私の追放先は、断罪学園と呼ばれる楽園でした  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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第3話 豪華な馬車と、七度目のため息

 振り返った先にいたのは、

グレーの上品なスーツに

真っ白なクラバットを身に着けた

男性だった。


年齢は私のお父様と同年代に思える。


「あの……どちらさまでしょうか?」


エドワードが一歩進み出た。

すると男性は丁寧に挨拶をする。


「申し遅れました。

私はジョージ・ハミルトン。

フレデリック学園の副理事長を

務めております。

理事長より、お二人のお迎えを

仰せつかりました」


「ええ!?  ふ、副理事長ですか!?」


あまりにも立派な役職の人が

迎えに来たことに驚いて、

私は声が上ずってしまう。


一方、何故かエドワードは落ち着いた様子で

会釈した。


「副理事長自らが僕たちを

迎えに来て下さるとは、

ありがとうございます」


「では、あちらの馬車にお乗りください」


副理事長が指示した先。

黒く艶やかに光る毛並みの馬が引く、

これまた驚くほどに立派な馬車が待機していた。


濃紺の車体に金色の装飾が施された

豪奢な馬車。

扉には精巧な紋章が刻まれている。


「え?  あ、あれが迎えの馬車ですか……?」


私の問いに、

ジョージ副理事長は笑顔で頷いた。


「はい、勿論ですよ。御者も私が務めるので、

どうぞお乗りください」


副理事長が馬車の扉を開けてくれたので、

私たちは二人で馬車に乗り込んだ。


「では出発しますよ」


――パタン


扉が閉じられて副理事長が御者台に乗り込むと、

馬車はガラガラと音を立てて

ゆっくりと動き出した。


向かい合わせに座った私たちは、

窓の外に視線を移す。


青空の下、石畳を進んでいく馬車。


港周辺には白い壁に青い屋根の

建物が立ち並び、

とても美しい光景だった。


「あの建物……お店みたいですね」


外を眺めながらエドワードに話しかける。


「うん、そうだね。

立て看板が置いてあるし……

あ、あれはパン屋さんじゃないかな?」


彼が指さした先には、

テーブルパンのイラストが描かれた

ブラックボードの立て看板がある。


その隣には屋台が並んでいた。


「あれは八百屋さんの屋台ですね。

でも、どうして人の気配がないのでしょう?」


先ほどから人の気配がまったくない景色に、

不安な気持ちが口を突いて出てしまう。


するとエドワードも頷いた。


「うん……僕も本当に、

何というか……先ほどから背中が

ゾワゾワしているよ」


船酔いがまだ残っているのか、

それとも不安のせいか。

彼の表情はまだ青い。


「ですよね。私も実は先程から、

言いようのない恐怖を感じています」


いつの間にか、

私とエドワードは顔を寄せ合って

コソコソと話をしていた。


「そうだよね。

これから僕たちは『断罪学園』に

イヤでも連れていかれる。

それだけでも不安なのに、

町全体が静まり返っているなんて……

不気味すぎる」


「実は私。

こう言っては何ですが、

ジョージ副理事長にも不信感を

抱いているのです」


私はさらに声のトーンを落とす。


「あ、やっぱり。僕も同じだよ。

断罪学園の副理事長があんなに笑顔で

丁寧に僕たちを迎えに来るなんて信じがたい。

しかもこの馬車……見てごらん」


彼に言われて、

馬車内をぐるりと見渡した。


窓には上品な薄水色のカーテンが

取り付けられている。


座面も背もたれもベルベットの素材で

光沢があり、

柔らかで座り心地抜群。


内装は白を基調とし、豪奢極まりなかった。


「私、自慢じゃありませんけど、

こんなに立派な馬車に乗るの初めてです」


「うん、確かにこの馬車は豪華すぎる。

断罪された僕たちをこんな馬車に

乗せるなんて、一体……」


その時。


ガタンッ!


馬車が大きく揺れた。


「キャッ!」


はずみで、私は前に倒れ込む。


「危ない!」


咄嗟にエドワードが支えてくれて、

睫毛が触れ合うほどに顔が近づいてしまった。


彼の綺麗な緑の瞳に、

自分の顔がくっきりと映し出されている。


「キャッ! ご、ご、ごめんなさい!」


顔がカッと熱くなりながら、

慌ててエドワードから離れた。


「い、い、いや。謝らなくてもいいよ。

それより大丈夫だった?」


エドワードが苦笑する。


「はい、大丈夫ですけど……」


しかし、

馬車は大きく右に傾いたままだ。


すると――


「申し訳ございません!」


突然馬車の扉が開かれ、

ジョージ副理事長が姿を現した。


「どうかしたのですか?」


エドワードの問いに、

副理事長は頭を下げる。


「申し訳ございません、

実は車輪が外れてしまったのです。

すぐに直すので

一度降りていただいてもよろしいでしょうか?」


「はい」


「分かりました」


エドワードに続いて返事をすると、

私たちは足元に気をつけながら馬車を降りた。


降りた先は、どこまでも続く牧草地帯。


あちこちで放牧された牛たちが、

美味しそうにむしゃむしゃと草を食べている。


モォ~……。


風に乗って聞こえてくる牛の鳴き声。


その景色を、

私とエドワードはただ茫然と眺めるしかなかった。


断罪された者が流れ着く島にしては、

あまりにも穏やかな景色。


だけど人っ子一人いなかった町。


そして、断罪された者ばかりが

集まる掃きだめ学園への強制入学……。


「「はぁ~……帰りたい……」」


心の底からのため息が、

隣に立つ彼――エドワードと綺麗に重なり、

私たちは自然と視線を合わせる。


モォ~……。


再び響く、のんきな牛の鳴き声。


「「はぁ~……帰りたい」」


私とエドワードの、

本日七度目の深いため息が重なった――

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