第20話 理事長のおもてなし?
重厚な扉が開かれた理事長室の中に
いたのはエドワードだった。
私と同じように
ネイビーブルーの美しい制服に身を包み、
緊張した面持ちで、
理事長と丸テーブルを挟んで向かい合って
座っていたのだ。
「アメリア……!
君も呼び出されたんだね!?」
私を見た瞬間。
エドワードがガタンと激しく椅子を鳴らして
立ち上がった。
するとテーブルの向こうから
理事長が笑顔で手招きをしてくる。
「おお、待っていたよ、アメリアさん。
さぁ、遠慮することはない。
君もこちらへ来なさい」
不気味なほど優しい笑顔を顔面に貼り付け、
私を手招きする理事長。
(いやです……
絶対に行きたくありません……!)
けれど、青い顔でこちらをじっと見つめる
戦友のエドワードを見捨てることなんて、
私にはできない。
だって、私たちは一蓮托生なのだから――!
「わ、分かりました……理事長。
い、今そちらへ参ります」
緊張のあまり、
右の手と右の足を揃えながら
私は二人のいるテーブルへと進み出た。
理事長の前で、
私とエドワードは直立不動のまま
固まっていた。
すると理事長の顔に怪訝そうな表情が浮かぶ。
「おや? 君たちは何をしているのだね?
用意が出来ないから座り給え」
チョイチョイと、
手首を上下にスイングさせて促す理事長。
(用意……?
用意って、一体何の用意なのですか!?
ついに刑の執行の用意が始まるというの!?)
声を大にして問い詰めたい衝動を
グッと飲み込み、
私は引きつった声を絞り出した。
「わ、分かりました……。
エドワード……す、座りましょうか?」
「う、うん。そうだね、アメリア……」
私たちは互いに決死の目配せを交わし合うと、
ストンと腰を下ろした。
その様子を見届けた理事長は
ニカァッと白い歯を見せて笑い、
おもむろに卓上の小さなシルバーベルを鳴らした。
チリンチリン……!
高らかで、どこか不穏なベルの音が部屋に鳴り響く。
すると――
「失礼いたします」
突然、別の扉が厳かに開かれ、
なんと副理事長が大きなワゴンを押して現れたのだ。
「理事長、朝食をお持ちいたしました」
「あぁ、では用意を頼む」
ジョージ副理事長は頷くと、
高級ホテルの給仕ばりの鮮やかな手つきで、
私たちの前に料理を次々と並べていく。
香ばしく焼き上げられた肉厚の
ハムにベーコン。
みずみずしいグリーンサラダに、
湯気の立つ濃厚なポタージュ。
さらには、焼きたてのスコーンにマフィン。
色鮮やかなジャムやハチミツ……。
その信じられない光景を、
私は目を点にしながら見つめていた。
(なぜ……? なぜ私たちの前にこんなに
豪華な料理が並べられていくの?
しかもなぜ、
学園のナンバーツーである
副理事長自らが配膳をしているの……!?)
エドワードも私と全く同じ気持ちなのだろう。
茫然とその様子を眺めている。
ふわりと、焼きたてのスコーンの
甘い香りが鼻をくすぐる。
こんな……こんな幸せそうな香りに
包まれながら、
私たちはこれから一体何を
告げられるというの……?
恐怖と混乱が極限に達したその時。
テーブルの下で、
私とエドワードの指先がそっと触れた。
どちらからともなく、
私たちは互いの手をぎゅっと握り合う。
そう。
たとえこの料理に毒が盛られていようが、
この後、理事長がいきなり豹変して
襲いかかってこようが……
エドワードの手だけは
絶対に離さないのだから!
互いに握りしめた手に力を込めたとき。
「さぁ、料理も並んだことだし……
頂くことにしようか?」
理事長のその声にハッと我に返り、
私たちは慌ててパッと手を放した。
私たちのパニックなど露知らず、
優雅にナプキンを広げながら言葉を続ける理事長。
「この学園の伝統的な習わしとしてね。
転入生は初日の朝、
必ず私と朝食を共にすることになっているのだよ。
さぁ。美味しい朝食を食べながら、
これからのことについて
腹を割った話をしようではないか?」
そして意味深な笑みを浮かべた――




