第18話 二人だけの作戦会議
「アメリア……」
「エドワード……」
私たちはじっとお互いを見つめ合い――
「「無事で良かったーーーっ!!」」
同時に叫びながら、
再び両手をガシッと力強く繋ぎ合わせた。
「エドワード、
男子寮の方はどうでしたか!?
私は、あまりに豪華すぎる個室を
あてがわれて本当に驚いてしまいました!
ここは罪を犯した断罪者たちが送り込まれる
隔離された学園のはずなのに、
ですよ!?」
「うん、本当にその通りだよ。
僕も全く同じさ。
まさか豪華な家具付きの一人部屋を
用意されるなんて……。
てっきり日当たりも悪くてジメジメした
狭い大部屋に、
共同で押し込まれるものかとばかり
思っていたからね」
「私なんて、この島へ来るまでは、
地下牢へ放り込まれるものだと
覚悟していました」
私とエドワードの興奮は止まらない。
するとエドワードがハッと我に返ったように
提案してきた。
「とにかく……お互いに積もる話があるだろう。
一旦落ち着こう。
まずは、あのベンチに座って話さないか?」
エドワードが指さした先には
可愛らしい屋根付きの木製ベンチが
設置されている。
「いいですね。
日差しも遮れるし、
ここなら街の景色も一望できるので大賛成です」
私たちは早速そのベンチへと向かい、
並んで腰を下ろした。
すると――
キィ~~……。
「キャッ!?」
「うわっ!?」
座った途端、
突然ベンチが前後にゆらりとスイングし始めたのだ。
驚くことに、このオシャレなベンチの正体は――
「「ブランコだ(わ)!!!」」
私たちは同時に、
驚きで目を丸くして声を上げた。
「これは驚いた……。
屋上に日よけ付きのベンチがあるだけでも
十分に凄いのに、
まさかブランコになっているなんて」
「ええ、本当に……!
さすが悪党ばかりの学園ですね。
要求がどんどん贅沢になっているのでしょう。
きっと学生たちが『ブランコを作れ』と
無茶を言ったのですよ!」
こんな素晴らしい絶景を眺めながら、
ブランコに揺られるなんて。
けれど、私たちの興奮と恐怖は
どこまでも加速していく。
「この学園には、
裏で巨大な資金が動いているに違いないよ。
きっと学生たちが今の現状に退屈して、
『ここから解放しろ』と暴動を起こさないよう、
あらかじめ最高の設備を整えて
懐柔しているんだ。
アメリア、君も見ただろう?
学生寮の様子を」
「はい、見ました。本当に驚きです。
まるで高級美術館か、
お城の中を歩いているかのような気持ちに
なりました。
まあ、お城へは実際に行ったことは
ありませんので、これは想像ですけれど」
「……そうか。だけどここは、
本当に謎に満ちた場所だよ。
なんだか、豪華な檻で
『生殺し』にされているような気がするんだ」
エドワードが青ざめた顔でぽつりと言う。
「はい、私も全くの同意見です。
いっそ、分かりやすく恐ろしい場所だった方が
納得できます。
……尤も、そんなハードな場所は絶対に
お断りですけれど」
「とにかく、今は下手に騒ぎ立てたり、
疑問があっても上層部を問い詰めたりするのは
やめよう。
何にしろ、今の僕たちには分が悪すぎる。
もう少し大人しく様子を見るべきだと思うんだ」
真剣な眼差しで私を見つめる
エドワード。
何て頼もしい人なのかしら。
「分かりました、
エドワードの言う通りにします。
私、本当に……一緒にこの学園に転校してきたのが、
あなたで良かったです」
心からの本音を、そのまま口にする。
「僕もだよ、アメリア」
「エドワード……」
キコキコと静かにブランコに揺られながら、
私たちはじっと見つめ合った。
――その時。
ボーン、ボーン、ボーン……。
学園中に、
どこか厳かな大きな時計の音が響き渡った。
エドワードが、
懐からすっとシルバーの懐中時計を取り出す。
「あ、もう十五時だ。
誰にも何も言われてはいないけれど、
そろそろ寮に戻った方がいいかもしれないね。
この学園には、まだ僕たちの知らない
規則があるのかもしれないから」
「そうですね。
私も特にこれといった理由はありませんけれど、
これ以上出歩くよりは、
一度寮に戻るべきだと思います」
私が大きく頷くと、
エドワードは先に揺れるブランコから降りた。
そして優しい笑顔で
私に向かって左手を差し出してくれたのだ。
「それじゃ、そろそろ行こうか」
「は、はい。エドワード」
胸の高鳴りを感じながら
私は彼の手を取った。
差し出された温かい手が、
私の手を包み込むように握りしめる。
こうして私たちは、
絶景の見える白亜の屋上を後にした。
お互いの手を、しっかり繋いで――




