第17話 恋人のふりする二人
「アメリア!?」
エドワードの側にも私と同様、
二人の男子学生がピタリと寄り添っている。
もしや、エドワードも強引に
この屋上へと拉致されてきたのでは――!?
その証拠に、
私に向かって必死な形相で駆け寄ってくる。
「エドワード――!!」
「アメリア――!!」
ガシッ……!!
私とエドワードは、
四人の断罪学園の生徒たちが見守る中、
宙で互いの両手をしっかりと握りしめ合った。
「「まさか、ここで会えるなんて……!!」」
私たちは同時に、
魂の底から歓喜の声を上げる。
「え? もしかして二人は……」
「恋人同士?」
アリスさんとニーナさんが、
目を輝かせて声を揃えた。
「「違いますっ!!!」」
再び綺麗に声を揃えて否定し――
そこでようやく、自分たちががっちりと
両手を繋ぎ合っていることに気づいた。
慌ててパッと手を放す私たち。
「そうだったのか?」
「いやぁ、
まるで運命の恋人同士に見えたぞ?」
二人の男子学生たちが、
からかうような楽しげな笑みを浮かべる。
「確かあなたも、
今日来たばかりの転校生よね?」
「僕とアメリアは、
たまたま島へ向かう船で一緒に乗り合わせた
戦友……いえ、仲間です」
アリスさんの質問に、
エドワードが真剣な態度で答える。
戦友……。
うん、今の私たちには
その言葉が一番しっくりくるかもしれない。
「ふ~ん、なるほど。
でも、あなたたちもやっぱり、
ここに彼を連れてきたのね?」
ニーナさんが男子学生たちに尋ねる。
「それはそうだろう」
「何と言っても、
ここは『とっておきの場所』だからな」
とっておきの場所……!?
彼らの口からも、
その不穏な単語が飛び出した。
(やっぱり、
ここはそういう場所なのだわ……!!)
四人の恐ろしい会話の裏取りに、
私とエドワードは同時に背筋を震え上がらせる。
どちらからともなく自然に、
お互いの体をピタリと寄せ合った。
それを見て、
再びアリスさんがニヤニヤと顔を覗き込んでくる。
「な~んだ。
やっぱり二人は恋人同士だったのね」
アリスさんの追及に、
どう弁明すべきか恐怖に身をすくませた――
その時。
「そ、そうだよ。
僕とアメリアは、実は恋人同士なんだ!」
エドワードが
いきなり声を張り上げた。
「え……? エドワード!?」
驚く私を置き去りにして、
エドワードは私の肩をガシッと力強く抱き寄せてきた。
あまりの必死さに、
彼の腕がかすかに震えているのが伝わってくる。
「か、彼女と二人きりで話がしたいんだ。
わ、悪いけど、
少し席を外してもらえないだろうか!?」
――なるほど、作戦ね……!
このまま悪党どもに囲まれていては
情報交換もできない。
嘘の恋人設定で、
まずはこの場を切り抜けるつもりなんだわ!
エドワードの意図を察した私は、
すぐに彼の胸元にすがりついた。
「ええ、そうなの!
だ、だから……お願い、
彼と二人きりにさせて……っ!」
私はエドワードにしがみつきながら、
心からの叫びをあげた。
すると四人は互いにニヤニヤとした視線を交わし合い――
「ええ、別に構わないわよ」
「私たちだって、
それほど空気が読めないわけじゃないからね。
フフフ」
なんと!
ニーナさんとアリスさんが、
あっさり許可を出してくれた!
「それにしても、
恋人同士でエデン島にやってくるとはなぁ」
「うん、間違いなく初めてのケースだ。
お熱いことで」
二人の男子学生たちも、
感心したように頷き合っている。
(違います、
私たち本当に恋人同士ではないのですけれど……!)
と言いたい気持ちを、必死で押さえ込む。
「分かったよ。
それじゃ、俺たちは行こうぜ」
「また後でな、エドワード」
男子学生がエドワードの肩をポンと叩く。
「あ……う、うん。また後で」
エドワードは、
引きつった笑顔で頷いた。
「大丈夫?」
「ちゃんと寮の場所は分かるかしら?」
アリスさんとニーナさんが尋ねてくる。
(もしかして……逃げ出さないよう、
最後の確認をしているの……!?)
恐怖に怯えつつ、
元気な声で返事をした。
「は、はい!
もちろん、大丈夫ですわ!」
四人は、実に満足そうな足取りで
ぞろぞろと屋上を去って行く。
そして……
激しい潮風が吹き抜ける白亜の屋上には、
ついに私とエドワードの二人だけが残された――




