第15話 とっておきの場所へご案内
私は両隣をがっちりアリスさんとニーナさんに
ホールドされた状態で、
校舎を案内されていた。
「あ、あの~……こ、校舎の案内を
してくれるのは、とても嬉しいのだけど。
じゅ、授業に出なくても良いのかしら?」
今の恐ろしい状況から少しでも解放されたくて、
私は当たり障りのない質問を投げかけた。
というか、
学生食堂を出たときから
ずっと疑問に思っていたところだったのだ。
「あら、いいのよ。
私たち、今日は午後の授業はない日だから。
必要な授業だけ受ければいいのよ。
だってここは、そういう学園だから」
またしても
不穏な微笑みを浮かべるアリスさん。
「そ、そういう学園って……?」
一体どういう意味で言っているのでしょう!?
私たちは好きで、
こんな学園に来たわけじゃないのよ!
「受けたい授業だけ受けさせなさい!」という、
学園に対するボイコット精神の
表れなのだろうか!?
「色々な学校から来ているから、
それぞれ学んだ範囲も違っているしね」
アリスさんとニーナさんが
説明してくれている。
けれど、あいにく私の脳内は
パニックを起こしているので、
そのまともな説明を理解するどころでは
なかったのだった――
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次に連れてこられたのは、
今まで案内された教室よりもさらに広々とした
部屋だった。
「はい、ここが家庭科室よ。
ここで刺繍を刺したり、
ドレスを縫ったりしているわ」
ニーナさんが誇らしげに説明してくれる。
広々とした明るい教室には、
大きな作業台テーブルや高価そうな
トルソーがズラリと並んでいた。
「すごいですね……」
実は刺繍が好きな私。
目の前の素晴らしい設備に心の底から
感心してしまった。
……けれど。
続くアリスさんの言葉で、
私の背筋は一瞬にして凍りつくことになる。
「定期的に発表会も行っているのよ。
皆で作品を見せ合って、
感想を言い合うの。
ちょっとした余興ね」
よ、余興……!?
まさか……全員で一人の作品を
中央に吊るし上げて、
『あら、何よこれ。へたくそね』
『本当、恥ずかしげもなく、
よくこんなもの縫えるわね』
『雑巾にした方がマシなんじゃないの?』
なんて嘲笑いながら、
心を込めて刺繍した作品を床に
落として踏みつけるつもりなのでは……!?
何しろこの学園は
世界中から集められた断罪者たちの巣窟。
(きっと、常に新しい獲物を、
なぶり殺しにするチャンスを狙っているに
違いないわ……)
想像するだけで、
自分の顔から一気に血の気が引いていくのが分かった。
すると、ニーナさんがふと眉を顰める。
「あら......?」
え?
ま、まさか私の態度が
彼女の機嫌を損ねてしまった……!?
背中にドッと冷たい汗が流れる。
「どうしたの?
何だか顔色が悪いようだけど?」
「い、いえぇ……
そん、なことないです……よ?」
引きつった筋肉を必死に動かして、
無理に笑顔を作る。
「そう?
もしかして、歩き疲れたかしら?
この学園は、とにかく広いから。
どこかで少し休む?」
今度はアリスさんが、
心配そうに顔を覗き込んできた。
「い、いえ!
や、休まなくて結構!
ま、まだまだ行けますわ!」
絶対に、個室や物陰に連れ込まれて
休憩するわけにはいかない……!
まだこうして広い校舎を歩き回っている方が、
圧倒的に安全な気がする。
何しろ先ほどから、学園の先生方や
事務員の方々とも頻繁に
すれ違っているのだ。
人目があるうちは、
流石の悪女たちも派手な凶行には
及べないはず――!
「そうだわ!
とっておきの場所があるわ!」
「そうね!
あそこに連れて行きましょう!」
すると突然、
二人が顔を見合わせて嬉しそうに声を弾ませた。
「え? あ、あそこって……!?」
尋ねる私の声が恐怖で裏返る。
「いいから黙ってついてきて」
「そうそう。着いてからのお楽しみよ」
しかしニーナさんもアリスさんも
悪戯っぽく笑うだけで、
場所を教えてはくれない。
お楽しみって……一体、
何のお楽しみのことなのでしょう!?
「それじゃ早速、行きましょう!」
「え? あ、あの……」
ガシッ!
ガシッ!
「きゃっ!?」
抵抗する間もなく、
左右から両手をしっかりと握られた。
(そ、そんな――!!
誰か助けてぇぇぇぇぇっ!!)
心の中で絶叫しつつ、
私は二人の悪女に手際よく連行されていった――




