第14話 悪女たちとの恐怖のランチタイム
「あ、アリス。
転入生のアメリアさんを
連れてきてくれたのね?」
いきなり目の前に現れて
笑顔で出迎えてくれた人物を見て、
私は完全に度肝を抜かれてしまった。
ま、まさか彼女は……!?
激しく動揺する私の横で、
アリスさんがニコニコと楽しげに言葉を交わす。
「ええ、ニーナ。
連れてきたわ、フフ。
アメリアさんってね、
とっても面白い人なのよ。
きっと仲良くできそうだわ」
ああっ……!!
やっぱり、あのとき講堂の壇上で
断罪していたニーナさんだったのね……!!
「それは良かったわ。
またこの学園に仲間が増えるのね」
笑顔で和やかに会話を交わし合う二人。
私は捨てられた犬の様に、
震えながら見守ることしかできない。
ニーナさんの背後には、
女子学生たちがテーブルの前で
ひしめき合っている。
恐らく、
その数は百人……いや、二百人は
軽く超えているだろう。
まさか、
こんなに大勢の凶悪な女子学生たちが、
この『断罪学園』に集められているというの……!?
「あ、あの……こ、ここで何を……?」
カチカチと歯を鳴らしながら尋ねると、
アリスさんとニーナさんは顔を見合わせ――
「「アハハハハ!」」
二人合わせて、
楽しそうに高笑いした。
こ、これこそ……
本物の悪女の高笑い……!?
でも、一体なぜ!?
確かアリスさんは、
ニーナさんに断罪されていたはず。
気のせいかもしれないけれど、
二人は、とても親しそうに見える。
「や、やだ。
本当に面白い人ね、アメリアさんって」
ニーナさんが笑みを浮かべながら
私を見つめる。
「ええ、本当に面白い人なの。
これからの学園生活が、
さらに楽しくなりそうだわ」
またしても不穏なセリフを言うアリスさん。
楽しくって……
それ、一体どういう意味なのでしょう……!?
「ここは食堂だって言ったでしょ?
フレデリック学園の食事は、
とにかく最高に美味しいのだから」
「何しろ、理事長自らが吟味した
料理人ばかりなのよ。
もちろん、私たち学生のためにね」
ニーナさんとアリスさんが交互に
説明してくれるものの、
私の中でさらに不安が大きくなる。
(もしや……理事長まで、
この断罪学園の学生たちの言いなりに……!?
彼女たちの権力に脅されて、
一流料理人を連れてくるように命じられて……!?)
「それじゃ、
早速料理を取りに行きましょう」
アリスさんに背中を優しく押されるようにして、
私はビュッフェカウンターへ連れていかれた。
****
トレーに乗せた料理は、
目を見張るほど豪華なメニューだった。
魚介類をふんだんに使ったクリーミィなスープ。
焼き立てのブレッドは驚くほど柔らかくて、
ジャムやバターを塗らなくても、
それだけで十分に美味しく頂ける。
さらには、ふわふわのスフレオムレツに、
彩りの美しい新鮮なサラダ。
そして南国らしく、みずみずしいフルーツ。
まさか、こんな素晴らしい料理を
学生たちに提供するなんて……!
二人の悪女に挟まれて、
あんなに緊張と恐怖で
食欲など全く無いと思っていたのに。
本当に、こんな状況で食べていいの……!?
****
――気づけば私は、
すべての料理を美味しく完食していた。
さすがは「断罪学園」。
きっとこの学園に流された学生たちは全員、
実家が立派な家柄なのだろう。
そしてその権力を行使して、
「最高のご馳走を用意しなさい!」と
学園側に命じているに違いないわ。
「はぁ……美味しかった……」
幸せな食事の余韻に浸っていると、
ニーナさんが嬉しそうに話しかけてきた。
「フフ、そうでしょ?」
「フレデリック学園の料理は最高なのよ」
アリスさんも見事に完食している。
「そ、そう……ですよね」
曖昧に頷きながらも、
私は周囲の様子をそっと伺った。
うん……間違いない。
自惚れでも何でもない。
私は間違いなく、
この食堂中の生徒から注目されている。
ここの食堂に来てからずっと、
四方八方から熱い(?)視線を感じていた。
(もしや……新しい獲物が来たと、
全員に思われているんじゃ……!?)
背筋に冷たいものが走った、
その時。
「さて、食事も終わったことだし……」
「行きましょうか?」
私の両隣にいたニーナさんとアリスさんが、
同時に席を立った。
え?
い、行くって……一体どこへ!?
行きたくない、絶対に嫌です……!!
などと、
恐ろしくて口に出すこともできるはずがなく――
「そ、そう……ね。い、行きましょう」
私は引きつった笑みを浮かべ、
震える声で返事をした――




