第13話 隣の部屋は公開断罪された令嬢でした
「私は、あなたの隣の部屋なの。
これからよろしくね」
コツコツと足音を立てながら、
アリスさんが親しげに話しかけてくる。
「あ、は、はい。
こちらこそよろしくお願いします……わ」
私はアリスさんと一緒に
美しい女子寮の廊下を歩いていた。
見上げる程に高い天井には、
青い空と白い雲の天井画が描かれている。
まさに南国の島らしい光景だ。
ジルさんと来た時は緊張していたので、
天井画にあまり気を取られる余裕はなかった。
けれど今は、さらに緊張が最高潮に達している。
(もしかして私はまんまとおびき出されて、
物陰から突然刺客に襲われてしまうのでは……!?)
そんなよからぬ妄想ばかりが先走る。
すると私の心の内を察してか、
アリスさんが話しかけてきた。
「フフ、驚いているようね?」
「え? ええ……もちろんです……よ」
私は引きつった笑みを浮かべ、
なんとかそれだけ返事をした。
それは驚いているに決まっている。
だって、アリスさん。
あなた、先程大勢の前で盛大に
公開断罪されていましたよね!?
もしかして第二弾の断罪がこれから
行われる予定で、
よもや新入りの私をついでに
巻き込むつもりなのでは……!?
「あ、あの~ところで私たちは一体、
どこへ向かっているのでしょう……かしら?」
駄目だ。
意識して敬語を崩そうとすると、
妙な言葉づかいになってしまう!
「フフフ、学生食堂よ」
「え? 学生食堂?」
食欲などほぼ無かったけれど、
ひとまずホッとした。
どうやら私には、「食事抜き」という罰は
下されないらしい。
……待って。
でも、それとも。
(まさか、
皆が美味しそうに食事している姿を、
私は『お預け』状態で
見物しなければならない罰を……!?)
それはそれで、
精神的にかなり辛い。
だからこそ、
どうしても今ここで聞いておかなければ
ならないことがある。
「あ、あの……アリスさん」
「え!? どうして私の名前を知っているの?
これから自己紹介しようと思ってたのに」
アリスさんが驚いたように目を見開いた。
しまった……!
講堂で、たまたま聞いてしまった名前を
うっかり口にしてしまった!
「え、えっと、
それは……こ、ここへ案内してくれた
寮母のジルさんが、
お名前を教えてくれたからです……のよ!」
いけない。
焦るあまり、
またしても妙な話し方になってしまった。
「あら、そうだったのね。
そうよ。私はアリス・グロリア」
どうやら私の嘘を信じてくれたみたい。
……ごめんなさい、ジルさん。
身の保身のため、
嘘をついてしまいました。
「これからあなたも、
仲間になるってこと。
よろしくね、アメリアさん。
あ、私が名前を知っているのは、
事前にアメリアさんがこの学園へ来ることを
知らされていたからよ」
ニコリと、どこまでも眩しい
笑顔を浮かべるアリスさん。
「あ、そ、そうなのね……
こ、こちらこそよろしくね……です」
仲間……?
仲間って何!?
悪女同盟か何かに、
私は勝手に組み込まれてしまったの!?
私の脳内パニックが限界突破した、
その時。
「プ」
すると突然、
アリスさんが口元を両手で押さえて
肩を小刻みに震わせ始めた。
「フフ……アメリアさんって、
面白い話し方をする人なのね。
ユーモアのある人だわ」
……え?
これは……好意的に思われていると、
受け取って良いのかしら?
「は、はぁ。ありがとう……ございます」
ホッと胸をなでおろしかけた。
けれどアリスさんの次の一言で、
私は再び肝を冷やすことになる。
「それにとってもお人好しそうだし。
フフ、気に入ったわ」
「え? は、はぁ……」
引きつった笑いを返す私。
(お人好し!? お人好しがどうだって言うの!?
利用しやすそうって意味!?
そんな意味深なセリフ、
この悪女の巣窟で言わないで
欲しいのですけど……!?)
嫌な予感に
自然と身体が小刻みに震えてしまう。
「あ、着いたわ。ここが学生食堂よ」
アリスさんがぴたりと足を止めた。
目の前には、
美しいサンゴのレリーフが彫られた真っ白な扉。
「ここが食堂よ、入りましょう」
「は、はい……」
ごくりと、喉を鳴らして息を飲む。
アリスさんがノブを握り――
ガチャ……。
扉が大きく開かれる。
「!」
私は驚きのあまり
心臓が止まりそうになった――




