48話 私たちが参加するってアリですか!?
何処からか花火の音が聞こえる。
それに続くように音楽、さらにかき消すように人の賑わい。
今日は待ちに待った祭り。
筋肉祭。
……いや、私たちが待ちに待ってたんじゃなくて、周りの人たちが待ってたっていう話であって。
聞くところによると年に一回行われる村全体を使った大きな祭りらしく、色んな村から、色んな国から観光客と参加客が集まっているみたい。
何に参加するのかって? それはもう筋肉祭に決まってる。
だからと言うべきか、ここ参加者の控え場所には男の人ばかり、女性は私たちだけ。
必然的に注目を浴びてしまう。この空気が、いたたまれない。
だけど臆してる場合じゃない、頭の中を整理しないと。
「私たちは初の女性参加者ということもあって、特別に一種目に一人ずつ参加出来る許可をもらいました。だからそれぞれ得意分野で勝ちましょう」
「それ、他の参加者からは不満は出なかったの?」
「ユノの言う通り、男性参加者からは『えこひいき』とか『ズルい』とか不満が出まくってたみたいよ。だからあたしが言ってやったの」
「……なんて?」
「条件を一緒にしないと女に勝てないの? って」
あー……。
そう言われると折れるしかないかも。男性のプライド的に?
……というか。
「リースさんが、妙に静かなんですけど……ライラさん?」
「ん? あ、いや……美味しそうな屋台が出ててね、食べたがってるのを無理やり止めたんだけど、そしたらこうなっちゃってー……」
屋台って……今日大食い出るのわかってる、よね……?
いや、でも目の前に全力になれるのはリースさんの良いところなのであって、呆れるところじゃないはず。
「リースさん、もう少し待てばお腹いっぱい食べられますから」
「…………その後なら、あの屋台のやつ、食べてもいーい?」
「……いいですよ?」
大食いの後に食べられるなら、だけど。
「じゃあ最後に整理しますよ」
一番目、徒競走はユノさん。一番身軽だから。
二番目の大食い競争はリースさん。
三番目は腕相撲。これは私たちの中で一番力持ちなライラさんが。
四番目は計算問題。商会長であるシルフィさん。
そして最後、丸太を斬る競技は私が。……他のモノを斬らないように注意しなきゃ。
「準備はいいですか?」
全員の顔を見渡す。しっかりと頷いたのを見て、私も頷き返した。
「じゃあ……勝ちましょう! 優勝目指して!」
……なんで勝たなきゃいけないのか覚えてないけど!
でもやるからには全力で!
「えいえいおー!」
私たちが腕を突き上げるのと同時に、アナウンスが聞こえてきた。
『お待たせしましたー! これより最強の筋肉を決める筋肉祭が幕を開けます!』
『まず第一種目、最速の筋肉を決めるこの対決……待機中の方は、スタート位置までお越しください!』
ついに始まった……!
筋肉隆々の男の人が腕の筋肉のコンディションを確かめながらスタート位置へと歩いて行く。
腕関係無いと思うんだけど。
「ユノさん、お願いします!」
「まかせて」
もともと小柄なユノさんだ。
ムキムキの男の人に混ざっていると、余計小さく見える。
『村の周囲をぐるっと一周していただきます! 給水場は折り返しの地点に設置してあるので、ご自由にどうぞ! それではよろしいでしょうか……!?』
全員がスタート体勢に入る。そんな中、ユノさんは……?
「ミチっとしてる」
筋肉の壁に阻まれてた! ズルくない!?
『それでは……スタート!』
盛大な地鳴りと共に筋肉たちが走り出す。ユノさんは男の人の大きな背中に阻まれて、前に行けないみたい。走行妨害じゃないの!?
「シルフィさん、あれ!」
「安心なさい、ユノがあの程度の妨害で遅れを取るわけないでしょ」
シルフィさんが言う通り、家の角を曲がるというその時だった。
ユノさんの姿が……消えた!?
ううん、屋根の上にいる! 屋根の上に乗って筋肉の壁を無理やり乗り越えたんだ!
「お先」
妨害していた二人の男の人は、驚いた顔でユノさんを見る。慌てて追いかけようとするけれど、前に阻むものが無ければそれはもうユノさんの独壇場。
あっという間にゴールした。
『これは……!? 大差をつけて初参戦の女性がゴール、ゴールです!!』
「余裕だった」
息がまったく切れていない状態でゴール。
さすがユノさん。
マスクをズラして水を飲むユノさんに、疲れた様子はまったくない。
ちびちびと少しずつ飲んでいたけれど、飲み終わる頃にようやく先頭の男性がゴール。
『第一位はカルディラ傭兵団チーム! 第二位は瞬速のマッチョと名高いスタリオンでしたが……圧倒的な開きを見せつけられましたあ!』
『第二種目は三十分後に開始します!』
響き渡るアナウンス。
「ユノさん、おめでとうございます!」
「ん、当然」
次は大食い対決……つまりリースさんの出番。
……あれ? リースさんは何処に……?
「もぐもぐ」
「………………ちょっと待ってください、リースさん何食べてるんですか?」
「…………もぐ?」
「あっ! さっき言ってた屋台のやつですか!? うわいつの間に!!」
「が……我慢できなかったんだもん!」
大食い前だって言うのに!
「こうなったらリースちゃんには無理やり胃袋に収めてもらうしかないね……最悪の場合を想定しながら見守らせてもらおうかなー」
「大丈夫、胃薬なら持ってきた」
ライラさんは冗談めかして言っているけれど、目は本気だった。
ああ、こんな調子で三十分後にはどうなってるのか……!
「おかわりー!」
心配する必要はなかったみたい。
三十分後始まった大食い競争、色んなメニューが大皿に乗って山のように出てきたけれど、リースさんは盗み食いしたにもかかわらず、そんな様子を微塵も見せずに次々と平らげていく。
さすが、たまに食料庫を空にしてるだけのことはある。いつも怒ってるのにやめてくれないんだよね。
『あ……圧倒的だあ! 小柄な女性が自分の体よりも大きな量をどんどんと食べていきます!』
「おかわりまだー?」
制限時間は三十分。周囲の人たちはギブアップしていたり、食べる速度が遅くなったりしてる中。
リースさんは食べる速度が衰えない。それどころかおかわりがやってくる速度が間に合わないほどだった。
そうこうしているうちに三十分は経過。大食い対決はリースさんの圧倒的勝利だった。
『終了~! 一位は五十二皿を食べきったカルディラ傭兵団チーム! 筋肉の盛り上がり一つ一つが胃袋だと豪語していたカーリィさんは二十四皿で惜しくも二位! 突如現れた女性チームが次々と一位をさらっていきます!』
『第三種目は三十分後となります!』
「さて、次はアタシの番だね」
「その次はあたし、だけど……」
次回は第三種目から!
「……あれ、これってまだ続くんですか!?」
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