結局いつも通りってアリですか!?
ようやく帰ってきた我が家。
……そっか、もう我が家と思えるくらいには、馴染んでるんだな。
私たちの足音が聞こえたのか、フェンさんが出迎えてくれる。
「やあお帰り! 万事上手くいったかい?」
「お帰りなさいませ皆様」
「ただいまフェンさんエレナさん、なんとか」
「そうかいそうかい、それは良かった。ライラくんも無事で何よりだ!」
「ええそうね、あー……馬車で疲れたし、ちょっと寝ようかなー」
続いてリースさんもユノさんも家の中に入って行って、残ったのは私とシルフィさんのみ。
フェンさんは入り口の方角を見ながら、少しだけ驚いたような表情。
「……ライラくん、なにやら……少し明るくなったかい?」
「そう、ですか? わかるんですか?」
「ああ、声が弾んでいると言うか、声の出し方がいつもよりほんの少しだけ高かったからね」
やっぱり聴力が発達してると、そういう……機微? とかもわかるようになるんだ。
ちなみに私が聞いても全然わからなかったけど、表情とかは明るくなったように感じる。
それに、野宿での食事の準備も進んで手伝ってくれた。以前のライラさんなら考えられなかったこと。
「それはそうとヴィーナくん、まだ元気かな?」
「え? ええ、まあ。ちょっと座りっぱなしで体が痛いくらいですけど……」
「色々作ってみたんだ、見てくれないかな?」
そう言って鍛冶場まで案内されると……そこには確かに、色んなモノがあった。
槍に短剣、ハンマーに鎌、果ては吹き矢まで。
剣以外の多種多様な武器が並べられていた。
「凄い……これ全部、作ったんですか?」
「そうさ、剣を使うと壊れるんだとしたら、剣以外を使うのも選択肢の一つじゃないかと思ってね。どれがしっくり来るかわからなかったから、とりあえず打ってみたんだ」
「武器の種類を捻り出すために首を傾げてたフェン様は大変面白かったです」
「ああ、ちなみに吹き矢はエレナくんの案だ」
「それ言う必要ありましたか?」
「キミもね!?」
楽しそうにじゃれあう二人を見ながらも、並べられた武器に目を落とす。
……どれもこれも、持ったこと無いものばかりだ。あ、でもこれはある、包丁。
じゃあまずは、一番大きなハンマーから……持てるかな。
と、手を伸ばした瞬間のこと。
「却下」
「シルフィさん?」
「ヴィーナは剣じゃなきゃダメ」
「どうしてだい、武器が壊れなければその分費用だって浮くのに」
そうそう、それに毎回壊すのも申し訳ないし……。
今回だって、しっかりと武器を一本破壊して帰ってきたわけで。
「ヴィーナはいずれ剣聖……ううん、剣神として売り出すんだからダメ」
「それは……目標が高すぎる思うけどね。確かにヴィーナくんの剣の潜在能力は底知れないけど、だからっておとぎ話同然の剣神なんて……」
「ううん、ヴィーナならなれる。あたしはそう信じてる」
……シルフィさん。
………………プレッシャーが凄いんですけどー!
剣聖ですら夢のまた夢なのに、更にその上なんて……!?
「……ま、雇用主のキミが言うなら従うよ」
「ありがとうフェン。ごめんね、サンプルで色んなモノ作ってもらったのに」
「え? サンプル?」
「違うの?」
フェンさんが押し黙る。エレナさんも目を逸らす。
……なんか、不穏な空気が二人の間に抜けていった。
「……エレナくん、パス」
「…………良いんですか? あることないこと伝えますけど」
「あることだけ伝えてほしいなあ!」
「わかりました……シルフィ様、ここにある品々は確かに大部分が鉄です。ですが……職人の見栄といいましょうか、それともプライドとでも申しましょうか。いくらかは、希少な鉱石が使われておりまして……そのまま廃棄となると、コストが」
「…………」
今度はシルフィさんが押し黙る。
横顔をちらりと覗いてみると……無表情だった。
あ、いや、違う。怒ってる……!?
「フェン」
「はい……」
「後二回」
「一体何のカウントだい!?」
「こうなったらヴィーナ、勿体ないから一応試してみなさい! ああそうだ、ついでに三人も呼んできて試させましょ!」
なんかもうヤケクソだった。
こうして疲れ切った三人は叩き起こされ、一通り武器を試してもらったのだけれど。
もちろん今持っているモノよりしっくり来るモノは無かった。
私? 私もどの武器もしっくりは来なかった。だけどどれも壊れることは無かったけどね。
剣を握った時に感じる、力を吸い取るような感覚はどの種類の武器でも味わえなかった。
「フェン、後一回」
「何もしてないのに!? 怖いんだけど!」
あ、でも包丁だけはキッチンに使われることとなりました。
切れ味が今までのよりも良くなって、硬いものでも切りやすくなった!
それだけは皆から好評でした。
「いっそのこと包丁職人にでもなろうかな……」
「お似合いです、フェン様」
「似合ってたまるもんかね」
……そして翌日の朝、リビングに行くと。そこにはライラさんが誰よりも早く起きていた。
真っ青な顔で……って!?
「ライラさん!? いったいどうしたんですか!?」
「あ、ヴィナちゃん……おはよー……」
「風邪とか……怪我とか?」
ライラさんの手にはおたまが握られていて、見ればスープを混ぜようとしているところみたいだ。
おたまを奪い取るようにして、ライラさんを椅子に座らせる。
そうこうしているうちにリースさんもユノさんも起きてきて、ライラさんの表情の悪さに心配する声をあげる。
「いやー……たぶん、あれだよ。ここ数日間超頑張ったからね、その反動が来てるんじゃないかな……」
「反動……?」
「うん、もう体が頑張ることに拒絶反応を起こしてるみたいだね。さすがのアタシもビックリだよ」
「私もビックリなんですけど」
椅子からよろよろと立ち上がるライラさん。ふらつきながら立ち上がる姿に不安になるけれど。
「というわけで、今日のアタシは一日寝ます。訓練もサボらせてもらうねー……おやすみぃ」
重い足取りでリビングから出て行った……。
私とリースさんとユノさんはお互いに顔を見合わせる。
「やっぱり」
「ライラさんはライラさんで……」
「変わらないんだね!」
彼女は彼女のまま。
変わって欲しかった……って思わなくもないけれど。
それでも、ライラさん“らしい”いつもの光景に、笑みを浮かべずにはいられなかったのだった。
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