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むりやりサインさせるってアリですか!?~つきつけられたのは雇用契約書でした~  作者: 佐藤ヒロフミ


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18話 住み慣れた町で迷子なんて、アリですか!?


 リース・ストレニア。


 明るく・楽しく・元気良くが信条の快活な女の子で、周囲にいる人を自然に笑顔にさせる。

 そんな優しい子……なんだけど、彼女にはすこーしだけ欠点……というか、愛嬌というか。

 とにかく、ドジっ子なのだった。

 洗濯物を取り込むのを頼んだら、転んで全部泥だらけにして。

 中庭の草むしりを頼んだら、花から何まで引っこ抜いたり。

 お風呂掃除を頼んだら、全身ずぶ濡れで帰ってきたり。

 とりあえず空回ってしまう。

 本人も自覚はしているようで、直そうと努力をしてはいるのだけれど……正直なところ、それも空回りしている様子。

 今回は、そんな優しい少女の話。



「ライラちゃーん!」


 静かだった傭兵寮に、いつもの元気な声が響き渡る。

 声がした方向を見てみると、敷地の出入り口付近でライラさんを捕まえたリースさんがいた。

 ライラさんの右手をがっしと掴みながら、屈託のない笑顔を見せている。


「お買い物手伝ってくれないかなぁ? 今日少し、量が多くて……」


 ストレートなお願い。

 もしも私がお願いされたら、彼女の上目遣いを見れば拒否するという選択肢は出てこないのだけれど……。

 そこはそれ、相手はライラさんだ。


「めんどいからパース。頑張ってねー」


 サボりの常習犯である彼女には通用しない。

 今日買う量が多いのも、前日の当番だったライラさんが調味料の買い足しとかをしなかったからなのに。


「うん、ごめんね! 忙しいのに!」

「いーよいーよ、じゃあね…………ふぁ」


 どう見ても忙しくなさそうな様子で家の中に入ってきた。

 窓から見ていた、私の咎めるような視線を受ける。


「どしたのヴィナちゃん」

「……まったく気にしてないし。手伝ってあげたほうが良かったんじゃないですか?」

「でも眠いし……」

「あまり不真面目過ぎると、クビになってしまうかもしれませんよ?」


 そうやって素行不良をたしなめようとしたのだけれど。

 言ってすぐ言葉を間違えたと後悔した。


「んー、それならそれでいいよ。あたしは楽して生きていきたいだけだしね。クビになったらまた別の所探すよ。じゃ、おやすみー」


 私の脇を抜けて自室へと帰って行く。

 振り返ること無く部屋の中へ入っていき、残されたのは私一人。

 ……自己嫌悪。もう少し言い方があったんじゃないだろうか。

 いやでも、非協力的なライラさんにも問題はあるわけで。ゴブリンの時は協力してくれたのに……あれは非常時だったからかな。

 ああ、でもとにかく自己嫌悪……。


「って、してる場合じゃない!」


 ライラさんが手伝わないなら、代わりに私が手伝いに行こう!

 慌てて家を出て、街の方向へと走り出す。


 ここ、カルディラ傭兵団の家は王都の城壁の外側にある。といっても街までの道はそう長くないし、街への見晴らしは良い。

 だから人ひとり歩く姿はすぐに見つけることが出来た。


「いた! リースさーん!!」

「~♪」


 何やら楽しげにスキップしながら進んでいた。

 鼻歌に夢中で私の声は聞こえていない様子、走って追いかけるけれど……。


「……速い…………!?」


 スキップしてるだけなのに! ちっとも差が埋まらない!

 それとも私が遅いだけ……? ううん、リースさんが速いだけ!


 そうこうしてる間に、リースさんはヒザーク王国の王都の城壁へと差し掛かる。

 本来であれば入国のための受付が必要なのだけれど、私たちはシルフィさんが会長を務めるカルディラ商会の人間だと知られているので、受付は必要無く。

 要するに顔パスだった。


「リ……リース、さん……ぜぇ、はぁ……」

「~♪」


 どうして、あの速度で疲れないんだろう……!

 息も絶え絶えに城壁をくぐっていく私を見て、受付の門番の人は目を丸くしていた。

 リースさんの後ろ姿がどんどんと遠ざかっていく。

 彼女の小さいポニーテールが…………あ、今日は左側なんだ……。


「お、追いつけない……もう、ムリ……」


 不器用なショートポニーが遠ざかっていく。

 そう、リースさんのショートポニーは、日によって位置が違う。

 オシャレや気分転換なのかな? と最初は思っていたけれど、実はただ不器用なだけだったみたい。


「って、リースさんそっちじゃない……!!」


 店の方とは違う方向へ曲がっていく。

 そっちはただの住宅区画で、行っても私たちには縁のない場所なのだけれど。

 まるで間違っているという自覚すらないように、あたかも自信満々に見えるように曲がっていった。


「ま、待って……ぇ……っ!」


 追いかけて曲がるけれど、リースさんの姿は既にもう無い。

 ここ住宅区画は細い道が多く、何処で彼女が曲がったのか見当もつかない。

 息を整えることを優先しながら前へと進む。

 ハァハァしながら歩いていると、すれ違ったお婆さんに怪訝な目で睨まれた。だってしょうがないじゃない……?


 ……見つからない。

 細い道から細い道へ。蜘蛛の糸から蜘蛛の糸へ。土地勘の無い私からしてみれば、何処を見ても同じ場所に見えてくる。そんな場所で、迷い人を探すなんてムリなんじゃ……。

 ……というか、私も迷い人になってない!?

 このままじゃ、私が探されるパターンで終わってしまうかも……!?


「……どうしよう」


 左を見てみる、見たこともない路地。右を見ても、前を見ても後ろを見ても。

 四方が知らない道。

 迷子になってしまうかも、じゃない。

 これはもう、迷子だ……っ!?


「とりあえず、戻って……」


 そう、戻ってみれば案外あっさりと大通りに出れるかも。

 とりあえず戻ってみる……あ、割と見たことある場所……かな?

 自信はまるで無かった。


「こ、ここは……」


 建ち並ぶ民家。左右に伸びる道はまるで見たことが無くて。

 色々言い訳したけれど、これはもう、間違いない。


「何処……ここ?」


 私は、迷ってしまったみたいだ――

 

読んでいただきありがとうございます。


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