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退魔の巫女は吸血乙女と血で結ばれる  作者: ムタムッタ
1章 限界巫女は血に恋されて

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第7話 巫女喰らいの跡を追え(with 仙ちゃん)

 

 そういえば『退魔の巫女』について詳しく言ってなかったっけ? まぁ吸血鬼を倒す仕事してる女の子って認識でいいよ。それは前の説明と同じ。


 あんまり口外しちゃダメって言われてるんだけどね。簡単に言えば『異形を討つ女の子』のこと。十代~二十代の女の子が一番実力が伸びやすくて強いから、高校生くらいがよく現場に駆り出されてるのが現状。少子化によくやるよ、まったく。


 昔は鬼とか妖怪とか色々相手にしてたけど、今はもっぱら吸血鬼専門になってるかな。やっぱあいつら(お姉さんは知らないけど)長生きだし。


 元々は『徒桜(あだざくら)』とかって名前の独立組織だったけど、今は警察の『異形対策課』と連携して動いてるんだ。担当地区ごとに配置されてて吸血鬼の通報で対処するんだけど、普通は二人一組か三人一組で行動が決まり。単独で動いても勝てないし、意味ないからね。


 え? 私は一人だろって?

 関係ないよ。私、死なないから。よくドジ踏むけど。


 で、目の前にいる仙果……仙ちゃんは私と同じ単独行動を許可された一人で、見習いたちのまとめ役もやってる子なんだ。通常の巫女業務と並行してやってるんだからすごいよマジで。まぁ押し付けたのは私だけど。


「仕事中なんだからメリハリをつけろと言ってるの」

「えーいいじゃん、私と仙ちゃんの仲でしょ~」


 軽く突っついてみると、露骨に嫌そうな表情で仙ちゃんがこっちを睨んだ。怖いというより目のクマでこっちまで疲れそ。


「何の用?」

「真澄ちゃんが行けっていうから仕方なく」

「昨日負傷した人間が来るところじゃないわ」

「辛辣ぅ、朝緋ちゃんショック〜」

「馬鹿言ってないで…………こっち」


 なんだか見習いの巫女ちゃん達がそわそわしてるけど、気にしなくていいのに。仙ちゃんツンデレなんだもの。


「被害者は最近見習いから上がった巫女の一人。二人一組(ツーマンセル)での行動中に発生」


 警察が囲む中に一人、横たわる女の子が在った。

 仙ちゃんと同じセーラー服の上から無数に噛み付かれて滲んだ全身。露出している首筋には二本の牙の噛み痕。血の気はなく、肌は蒼白。その傍には地面に座り込むもう一人セーラー服姿の生きている女の子。説明されてたもう一人の巫女だね。


「通報は今日の午後十二時半、公園内を歩いていた一般人から。現場にはこの子と、犠牲になった巫女の二人。噛まれた子は、発見時には失血でもう亡くなっていたそうよ」

「お昼? ……ここって今日、ゲリラ豪雨でもあったの?」

「日の出からずっと快晴。地面でわかるでしょう?」


 だよね、今日の天気予報『晴れ』だったし。

 木があるって言っても、真上からお天道様が見てる中で吸血鬼に噛まれたってこと? 太陽の光が効かない吸血鬼? そんなことある?


「一般人もいる街中でわざわざ対魔の巫女を襲ったということは、警戒対象である巫女喰らいの仕業と見ていいでしょうね。忌々しい」


 私も別の吸血鬼になら噛まれてプロポーズもされたけどね。まぁあのお姉さんは『鬼狩り』だから違うと思う。お腹いっぱいって言ってたし。


「どうかした?」

「ん? いやぁ、こんなに噛むなんてよっぽど腹ペコか……」


 マーキング、自己主張か…………二つ名つくような吸血鬼にはよくいるんだよね、犯行の手口を見せびらかすようなことする奴。


『あなたなら大歓迎なのですけど』


 いやいやいやいや、ダメダメ! 今は仕事中! お姉さんは関係ナシ!


「本当に大丈夫?」

「問題ないない。それで、あの子は?」

「あぁ、現場検証にもいてくれてはいるけど……相当ショックだったようね」


 名前も知らないショートカットの女の子は、刀を置いて俯いたまま、じっと蹲っていた。大事な証人だからさっさと聞くべきことは聞いておかないと。


「ねぇ、この子噛んだ奴ってどんな見た目だった?」

「わ、わたしが……わたしが……」


 放心状態で独り言リピート中、会話になんないや。この子がほとんど傷もないってことは、手出しできなかったレベルの相手ってことなんだろうね。


「対峙した者の情報は貴重だけど、下手に聞き取れば心が壊れかねないし。本来なら早く安全な場所に移動させたいところよ」


 あー……真澄ちゃんが振ってきた理由なんとなくわかった。仙ちゃん優しいからなぁ……強気に詰めるのとか苦手だもんね。ま、そこは適材適所ってことで。色々押し付けてるし。


「仙果、この子の名前は?」

「……柊千尋(ひいらぎちひろ)よ」

「ありがと仙ちゃん」


 千尋ちゃんの目の前にしゃがんで目線を合わせる。視線は交わらない。


「千尋ちゃん、吸血鬼はどんな見た目だった?」

「わたしが……わたしが、ちゃんとしてれば……わたしが…………!」

「ちゃんとしてても、ちゃんと死んでただけだよ」


 口数が多いから『アサヒナ』なんて言われるけど、一言二言多いからそう呼ばれることもあるんだよね。わざとじゃないけど。現実は突きつけとかないと物事が進まないし。

 外の声は聞こえてたようで、千尋ちゃんは刀を拾って右手で抜こうとしたから、できないように右手を力づくで制止する。


「武器を抜くなら相手を見据えて、間合いを把握。習ったよね?」

「習った! 習ったけど……血がなくなっていくあの子を目の前にしてできなかったのッ!」

「それをできるように、身体に染み込ませるしかないよ」

「わかってたッ! ずっと鍛錬して、やっと巫女として認められたのに…………いきなり襲われて…………わたしが、わたしがちゃんと戦えてればッ!」

「千尋ちゃんがここでするのは泣くことでも後悔することでもないよ。見た情報を私達に教えること。わかる?」

「仲間が死んで何も思わないんですかっ⁉︎」

「何か思いたいからさっさと仕事したいんだよね私。対魔の巫女の教訓、覚えてる?」

「そんなの……っ!」

「言って」


 泣きじゃくる巫女に詰めるのは正直しんどい。でも、泣いてるだけじゃなんにもならない……対魔の巫女なら尚更だ。泣いていいのは普通の人だけ。


「人を思い、人を守り、人であれ……」

「異形を狩るなら『油断せず、迅速に、的確に』……オッケー、覚えてるね」


 後半は真澄ちゃんのスパルタ。私と仙ちゃんくらいしか言われてない。

 平穏に生きる人間のことを考えて、その人達を守って、自分もその一人で在れ。異形を狩るとしても、血に染まってはいけないとかなんとか……血のシミってなかなか落ちないんだよね。


「私はこれ以上犠牲が増えないように狩らなくちゃいけない。その手がかりを持ってるのは生き残ってる千尋ちゃん。記憶を見せてくれるだけでいいから……できそう?」


 涙は止まらないけど、千尋ちゃんは首をゆっくり縦に振った。

 よーし……可愛い後輩を泣かせた奴の手がかりを探そっか。


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