第20話 橋上の血戦②(大事なのは、最後までやり抜く精神!)
「まさか、二人なら勝てるとでも?」
「倒すためここにいるのです、貴方に復讐するために!」
「ハッハッハ、面白い。吸血鬼の血で育てる花はどんな色になるんだろうねぇ。ぜひコレクションさせてくれたまえ!」
ヴァルクがコートの前を開く。ポーズだけ見たら露出狂のイメージ。中は黒のぴっちりインナー姿。全身には蔦を巻いて、花も真っ赤に咲かせてた。あれが巫女の血で育てたやつってこと……? キモいなぁ…………
「興味――ありません!」
鬼狩りのお姉さんが駆け出し、大ジャンプ。空中で足を振り上げてヴァルクの脳天へ踵落としを繰り出した。でも相手に分かりきった攻撃、ヴァルクが両腕で受け止めると、足元のコンクリートにめり込んだ。
「さすが吸血鬼、さすが鬼狩り! 作った眷属たちとは桁違いの膂力だ!」
「黙れッ!」
お姉さんがヴァルクの腕を踏み台にもう一度宙に舞い攻防を繰り返す。援護の為に踏み込もうとすると、周囲の植物が再びうねり始めた。
「ったく、私の血は貴重なんだぞー!」
血の付いた刃で切り払って距離を詰めても、ヴァルクが蒔いた種が芽吹いてトラップよろしく茎が槍のように伸びて阻まれる。
「しつ、こいっ!」
ひとつひとつは大した脅威じゃない、それは金髪の手下召喚と似てる。ただ前よりも単純な物量差に押されてる…………私の処理速度よりも、巫女喰らいの能力が上回ってる。
それはお姉さんの方も同じで、ヴァルク本人のスペックがお姉さんと互角くらい。でも、植物操作の能力で差が出てる。
人間の血を吸い続けた吸血鬼は、何らかの能力に目覚める。単純な身体の肥大化とか、金髪分身の手下ストック・召喚とか、目の前のヴァルクの植物操作とかね! お姉さんは単純に馬鹿力で暴れてるだけ。考えてみれば、お姉さんの能力ってまだ見たことない……!
「能力も持たぬ吸血鬼が勝とうなど、思い上がりも甚だしいねェッ!」
「そんなものが無くとも、わたしは――!」
「お姉さん!」
言い出しっぺの私がフォローしなきゃダメでしょ!
強引に草を切り伏せてお姉さんのところまで走る。残っていた草が頬を、腕を、足を掠めて肌を裂く。それでも気にせず突進、打撃に合わせて刀でヴァルクの首を狙う。お姉さんが殴って、私が周りの草を切って! 切って殴って殴って切って!
「二人で来ようと同じこと、遅い遅い遅いィッ!」
さらに種がばら撒かれるのと同時に、ヴァルクの身体も植物の茎で守りを固められる。単純な草花の鎧だけど……お姉さんの打撃が効いてない。攻守一転、気づけばヴァルクの攻撃に後退し始めてた。
「くっ……捌き、きれない………………」
途切れることなくアスファルトに根を張る植物は増え続ける。蹴っても爪で裂いても、血の斬撃で切断しても次々と分岐し、私達へ襲い掛かる。
「あの時の悲しみに比べれば……この程度の痛みなど――――!」
お姉さんは叩きつけられる前に太い茎を掴み、腕力に任せて引きちぎる。ものすっごい怪力なんだけど、金髪男も手数はあった。けど、あいつと比べてこのおじいちゃんは能力の性能と相性が悪すぎる。一度の量が多いんだってば!
しなる草がじわじわと身体を掠めて出血が増えていく。滴る血が増えれれば、足元の草たちは私をさらに追撃する。悪循環が続く中で考えられる手段は……
瞬間、お姉さんが私を庇うように前へ立った。
「朝緋、私が隙を作ります……だから、あの男を……巫女喰らいを…………!」
苦しそうに、大事なことを忘れて声を絞り出した。もぅーさっきまでの勢いはどうしたんだっての。目の前に超憎い奴がいるんだから、私なんて庇う必要ないんだって。復讐に大事なのは、最後までやり抜く精神!
「だめだめー。復讐は自分の手で終わらせないと達成感ないよ、おねーさん」
「朝緋……?」
「この前は道開けてくれたでしょ。今度は私の番、下がってて」
痛くても、どうせ治っちゃうんだから……いいや。
自傷を加速。左手の掌を裂き、刃に血を追加する。刀身の赤みはさらに増して巫女刃術の派生は準備完了。白神朝緋、お姉さんの為にもぅちっとがんばりますよ。
「ハッハッハッハッハァッ! 無駄に血を流さないでくれ、花に与える栄養分がなくなってしまう」
「残念だけど、完売なんだよね。売り切れで~す」
巫女喰らいによる新たな種の追加。種類が違うのか、口を開けたように花弁を広げる植物が現れたけど……様子見はもういいかな。そう考えていると、ヴァルク特製の植物が真正面から突っ込んでくる。再三見せられた植物操作は、これ以上バリエーションはもうないみたい。植物操作はすごいけど、基本パターンはもう分かった。
「び、た、みっ、ん!」
余計な行動はナシ。必要最低限の動きで植物の突進をいなして茎を断つ。けど、大元を切らない限り、ヴァルクから血の供給が続く。切って躱して、いなして刻んで、しつこいナンパみたいな波状攻撃はまだまだ続く。それでも前に進むよ。
「我慢比べで勝てるとでも? 我が植物の成長は、喰らった巫女の血の量だけ続くのだぁッ!」
「……いっぱい食べたんだね」
「そう! 我が生と能力は巫女の血と共にある……さぁ、その血を寄越せぇッ!」
優位に立ったと思ったのか、おじいちゃん、ここにきて金髪男と同じようにキモく笑った。分身と似るもんなんだね。マイナス百点。
刺されたら血を吸われて終わり。回避が遅れたら身体がバラバラになって終わり。巻きつかれたらR指定シーン入って終わり(これは半分冗談だけど)。終わりのない物量と植物の成長は止まらない。ならどうするって?
────だったら答えはシンプル。植物の成長速度よりも疾く切り裂くだけ。簡単でしょ?
「あげないよ。私の血は、お姉さんだけのものだから!」
一閃、それだけで植物たちは進行を止める。血の斬撃による軌跡は、前方の草花を薙ぎ払う。ま、実際は一閃じゃなくて三閃なんだけど。
「……は?」
「もう見飽きたんだって……物量ゴリ押し作戦は終わりだよ、おじいちゃん――!」
復讐は手を抜くことなく、確実に敵を仕留めるために動くもの。タネがわかってるなら、もう止まる必要はないよね。ギア……上げていこっか。




