第10話 巫女と乙女の二重奏(ロックだぜぃ!)
イントロから飛ばしていくぜぃ!
「せーのっ!」
前方から二体、側面からそれぞれ一体ずつ。お姉さんと同時に前へ踏み込んで、刀とギターで首を刎ねる。私の得物は無事だけど、お姉さんのギターはそこでスクラップ。でも側面からの敵は待ってくれるわけない。
まぁ、お姉さんなら大丈夫でしょ!
お姉さんの後ろにいる吸血鬼の首へ刀を突き刺していっちょ上がり。お次はお姉さんの番!
「失礼」
私の横を生足ブーツが横を掠めて背後の吸血鬼の首を蹴り飛ばす。何がすごいって今気づいたけど、ロングスカートは動きやすいように深めのスリットが入ってる……ちょっと見えた?
「…………お姉さん。スリットエグいよ」
「ふふ、もっと深くします?」
それ以上はヤバいって、謎の光が差し込まれちゃう深夜アニメになるよ。
「粋がるなよ小娘が」
「こらこら、隣にいるお姉さんも小娘扱い? レディーの扱いがなってないんじゃない?」
「黙れッ!」
想定外でイラついてるねー。カルシウム足りないんじゃない? あとビタミンも。
「女の吸血鬼が増えたところで何ら問題ない。手下は何人、何十人でも出せるのだからなぁッ!」
威勢良く叫んでるけど、やることは同じ。
まーた4体呼び出し。いっぱい出せるんだったらなんで一斉に出さないんだろ? ……なんて、ずっと少しずつくらいしか出してないから制限があるんでしょ。
「朝緋、気づいてますか?」
「うん。私なら突っ込むけど、お姉さんどうする?」
「恋人に危険なことはさせたくありませんが……」
良いこと言ってる風だけど、私まだ恋人じゃないからネ……?
お姉さんの冗談は本気に聞こえちゃう。
「あの男を倒せるなら構いません。道は開けます」
「オッケー了解」
仕込みは上々。あとは邪魔な手下を突破するだけ、おねーさんもいるし心強い。吸血鬼なのにね。
「生意気な巫女に同族討ちの鬼狩り……何だ、何なんだお前たちは!」
「恋人です」
「まぁッだ!」
熱烈すぎるでしょ⁉︎
右足の踏み込みと同時に、正面の吸血鬼たちの両腕が何倍にも膨らむ。たぶん巫女喰らいが出せる手下は、みんなこの能力しかない。
私は伸びる腕と腕の間を縫うように真ん中を切り抜ける。追撃は全てお姉さんが弾いて蹴散らし、手下の首を潰していく。道は開けた、散々踊らされた分、お返しするよ。
ステージへ退く巫女喰らいに、笑う余裕はなくなってる。けど身に纏う服からは、黒い靄を噴き出し続けて新たな手下を呼び出す。靄にかかったままの、ごく僅かな召喚。これなら確かにいっぱい噛みつけるかもね、奇襲なら。
「お前の剣など──!」
避けられるよね、さっきまでの速さなら。
前の話で私、モノローグでなんて言ったかな?
そう……『さすがに雑すぎる』。だいたい、剣の速度を変えて相手を乱すくらい……一人で狩れる巫女ならやるんだってば。
膨張する巫女喰らいの両腕を、肩から切り落とす。そこでようやく騙されたことに気づいたのか、歯をむき出しにして怒って見せる。
「遅いよ」
ムカついたから力を込めて回し蹴り。血ぃついちゃったし、もうスニーカー買い替えよ。防御する手段のない吸血鬼は、ステージから宙を舞う。なんかワケありみたいだし、あとは譲るよ……おねーさん。
「ありがとう、朝緋」
「いーえ、どういたしまして」
ダンクよろしく、お姉さんは巫女喰らいの金髪を掴んで真下へ思いっきり叩きつけた。この時点で顔面が凹んでまぁまぁお見せできない状態になってるんだけど、お姉さんのブーツが追い討ちみたく踏みつける。Sっ気あるよね、この人。
「このオレが……こんな、ところで…………ェッ!」
「退魔の巫女舐めんなっての」
「わたしの愛した人を奪った報いです」
「ふざけるな、鬼狩りなんぞオレは会ったこともないッ!」
「…………そういうこと」
もしもーし、私は生きてますけどー?
ツッコむ暇もなく、お姉さんの右足は巫女喰らいの頭を無慈悲に踏み潰した。
「ひゃー、遠慮ないねぇ。お姉さんお疲れ!」
「えぇ……」
やっぱ誰か隣にいるの楽ぅ〜。
これで巫女喰らい退治は一件落着だね。あーぁ、返り血ついちゃったし早く着替えたーい。
そんなダルっとしてる私に対して、お姉さんは潰した相手を睨んだまま小さくため息。
「どうしたの? 復讐達成したのに」
「…………残念、コレもハズレです」
「えぇ⁉︎ この吸血鬼、巫女喰らいじゃないの?」
「本物ならもっと強いはず……これは、『ヴァルク』ではありません」
「……ヴァルク?」
偽物ってこと? というか誰それ。
刀の血を振り払うように、お姉さんは脚を素早く振るう。いちいち所作がかっこいい。
「『巫女喰らいヴァルク』。退魔の巫女を狙い、各地を移動している同胞であり……わたしの恋人を殺した、わたしが狩るべき相手です」




