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【71】 ひき逃げ犯、松島博之発見される!

【現在に戻る】


 博之は酒を飲んでひき逃げをし、職を捨て、家を捨て逃げ回っていた。


博之(本州を離れて四国なら誰も知っている者は居ないし、ここまでは警察も追って来ないだろう)


 そう考えて、夜行バスに乗って松山市までやって来たのだった。

 事故を起こしてから数年が経ち、

博之(これまで、特に怪しまれることも無く過ごしてきた。それは、これからも続くだろう)と考えていた。


 最初の1年は不安だったものの、2年目からは、少しずつ落ち着きを取り戻していた。

 パチンコ店の店主らから何か聞かれると、博之は、以前税務調査に行った喫茶店の店主になりきり、

博之「店の経営に失敗して、債権者達から逃げているんです」と答えるようにしていた。パチンコ店の店主も日を追うごとに、博之が真面目に働く様子を見て、好意的に接してくれるようになった。店の客も博之に対して、気軽に話しかけてくれる者が徐々に増えていった。


博之(同じ接客の仕事でも、税務署とパチンコ店では、こうも違うんだ)

 痛感していた。

博之(人間、好かれてなんぼの世界だな)

博之(どうせ一生を送るなら恨まれて生きていくより、誰かに喜んでもらうよう過ごしていきたい。ここに来て良かった)

博之(仕事は良いけれど、ただ、気になるのは妻と子。ちゃんと食べていけてるのか?)


 逃げ始めて3年が経ち、初めて家族と連絡を取ってみたいという気持ちが湧いてきていた。


博之(奈美と海斗、元気でいるかなぁ。生活が苦しくなって、まさか親子無理心中なんてことは……)

博之(そんな記事やニュースを見たことがないから大丈夫か。もし、生活が苦しいのなら親の所に戻るだろうし)

博之(自分のこれからは、どうなるんだろう? 過去を捨て一生ここにとどまるのか? それとも別の地へ逃げるのか? 誰か新しい女性と恋に落ちるのだろうか? 警察に捕まって刑務所暮らしになるのか?)


 博之は、考えれば考えるほどこの先が見えなくなっていった。考えることをやめたいとも思ったが、時間が出来ると、そのことを考えずにはいられなかった。


     ◇


 その日、博之は、珍しく無精ひげを伸ばしていた。パチンコ店が台の入れ替えのため2週間ほど休業することになったからだ。

 博之は、部屋でスウェットスーツに身を包み、ゴロゴロしていた。ひとり暮らしで友達もなく、退屈していた。昼間から酒を飲み、寝たり起きたり。

 夜遅くになって、博之は酒が切れそうなことに気づいた。


博之(スーパーマーケットに行って、酒を仕入れて来るか)

博之(酒を買いに行くだけで着替えることはないだろう。このままでいいか)


コンビニは近くにあったのだが、少しでも安く買おうと思い、遅くまで営業している遠くのスーパーマーケットまで歩いて行った。酒の酔いもあり、微妙にふらついていた。


 時間は夜の10時を過ぎた頃だった。博之の後ろでパトカーが停まった。

 中には警察官2人が乗っていた。博之の身なりと行動を見て、

警官A「ちょっと怪しいですね」

警官B「職質(職務質問)かけるか?」

警官A「ええ」


 パトカーの警察官は、少し前から博之に注意を向けていた。スウェットスーツ、無精ひげ、ふらつき、歩いている時間帯、総合的に判断して職質対象に思えた。このようにして、何人もの不審者を取り締まって来たのだった。

 警察官二人がパトカーから降りて小走りし、博之の前と後ろに立ちはだかった。


警官A「ちょっと、よろしいですか?」

 博之は、ビクッと反応して、すぐ後方を振り返った。が、そこにも警察官が居た。

警察官二人(間違いない!)

警察官二人が、疑いから確信へと変わった。


警察官(こいつ、なにかあるぞ。クサ(大麻)か?)

博之(まずい!)

博之(職質に遇うとは!!!)



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