【69】 二股の合意成立?
翌日、土曜日の夕方。
坂口大輔は、松島奈美の部屋を訪ねた。
奈美「どうだった、小竹さんは?」
大輔「私と奈美さんの関係を理解した上で『深い友達で行きましょう。その内、自然に別れるから』って言ってた」
奈美「そう、良かった。安心したわ」
大輔「うん」
奈美「本来なら、あなたと小竹さんの方がお似合いだものね。私なんか、子持ちのおばちゃんだもん」
大輔「全然気にしてないよ。そうそう、彼女は、結婚願望が無いんだ」
奈美「それは、私もだから。結婚はもういいわ」
大輔「今のご主人さんとは?」
奈美「去年、弁護士さんと相談して『失踪宣告』の手続きを取ったわ」
大輔「『失踪宣告』か」
奈美「うん。将来的には『離婚』か『死亡』か、迷ったんだけれど、弁護士さんも私も、『死亡』の方が良いという結論になったの。私の言っていることわかる?」
大輔「うん、わかるよ」
奈美「さすが公務員ね。私なんか、最初、さっぱりわからなかったけれど」
大輔「公示期間は?」
奈美「あと一か月で公示期間も終わり、審判が確定するわ。そうしたら、十日以内に『審判書謄本』と『確定証明書』を持って市役所の戸籍係に行く予定よ」
大輔「うん。これでスッキリするね」
奈美「ええ、新しくやり直すわ」
大輔「すごいね。しっかりしてるね」
奈美「大輔さんが『市役所で行ってる弁護士による『法律相談』を利用するのが良いですね』と、言ってくれたからよ」
大輔「そうか。それは良かった」
奈美「すべて、大輔さんのお陰だわ」
その後、大輔は海斗のテレビゲームの相手をし、奈美はその間に夕食の支度をした。
食後、再度大輔は海斗のテレビゲームの相手をし、ときどき海斗の話し相手にもなっていた。
間もなくして、大輔が海斗の相手から離れ、奈美の所で休憩した。
奈美「海斗の相手も疲れるでしょう?」
大輔「私も楽しんでいるから大丈夫」
奈美「ならいいけど」
大輔「こういうのが、一般的な家庭の景色なんだろうな」
奈美「どうしたの? 改まっちゃって?」
大輔「いや、何も」
奈美「ほんとかな? 何か迷っているんじゃないの?」
大輔「『何か』って?」
奈美「これからのことよ」
大輔「『これから』か?」
奈美「うん。これって、世間に言わせれば『二股』でしょう?」
大輔「そうとも言えるけれど、その言葉は不適切のような気がするなぁ」
奈美「だったら何?」
大輔「なんだろう? すぐに言葉が出ないけれど……う~ん、小竹さんとは『恋愛体験』で、松島さんとは『家庭体験』かな? とにかく、私にとっては、どちらも初めての体験で、今後の私の人生、私の仕事に必ず役に立つ、貴重な体験になると思うな」
奈美「そうね。『二股』じゃなくて『ふたつの異なる男女生活の実体験中』がいいわね」
大輔「その通り!」
奈美「そうね。そうだわ、きっと」
大輔「たまたま、その2つの体験を私は同時にしているだけで、他の人は順番を追ってひとつずつ体験して行くんだろうなぁ」
奈美「男女の関係なんて、恋愛して、結婚して、そして離婚よね。その内、私たちも別れるわよ」
大輔「うん。すべて、なるがままさ。考えるより、今を毎日楽しく生きるだけさ」
奈美「賛成! 楽しまなくっちゃぁ!」




