【68】 深い友達で行きましょうよ
戸部「『一夫多妻制』の国といっても、いろんなパターンがあり過ぎて」
坂口「あり過ぎてですか?」
戸部「ええ。『エジプト』とか『モロッコ』とかは、現在の妻の許可を取らないと、次の妻をめとれない、みたいな」
坂口「そうですよね。なんでも相手の『ご理解とご協力』が必要ですよね」
戸部「ははははは。うまいことを言いますね。日本では、結婚していなくとも、二股騒ぎで、芸能人とかが、週刊誌のネタにされますからね」
坂口が自分に結び付けて、ドキッとした。
坂口「そうですね。最後にひとつ。日本は、まだ『夫婦別姓』は認められていませんよね?」
戸部「はい、認められていません」
坂口「ありがとうございました。以上です」
戸部「お疲れ様でした」
坂口の最後の質問は、自分の二股をごまかすための質問だった。
坂口は、国民健康保険課に戻りながら、
坂口(ふーっ、危ない危ない。怪しまれないうちに、戻れて良かった)
坂口(『二股』か。あまり良い言葉じゃないな。自分はそんなつもりはなかったんだけれど)
坂口(すべては、成り行きだったんだ。学校から奈美さんへの誤報。私が言った『3つの願いを叶えます』という言葉、そこからこうなってしまったんだ)
坂口(奈美さんからの復縁を断れば、それは『約束破り』になる)
坂口(どうしようも無かったのさ。とにかく奈美さん、由夏さん、自分の3人が一番幸せになる方法を取るしかないんだよ)
◇
週末、金曜日の夜。
大輔と由夏は、この前と同じラブホテルに居た。
大輔「実は、話があるんだ」
由夏「えっ! いやよ、そんな真剣な顔をして」
大輔は、『こどもの森』でのイベントから始まり、学校側が『ジョーブ君が海斗君を蹴飛ばした』と言ったこと。奈美が『高校生のせいだ』と知ったこと。大輔が『3つ、願いを叶える』と言ったこと。奈美から『好きだ』と言われたこと。月曜日に奈美の家に泊まったこと。すべてを包み隠さず話した。
由夏「わかった。月曜日は泊ったんだ」
大輔「うん」
由夏「もちろん、そう言う関係よね」
大輔「うん」
由夏「そして、その誤解がなければ、私が入る隙は無かったのよね」
大輔「……」
由夏「私のほうが、後だもんね」
大輔「……」
由夏「私は、別れたくないな。結婚は希望してないし。いいじゃない、深い友達で。坂口さんが良ければ、深い友達で行きましょうよ。ダメ?」
大輔「私は、いつも受け身ですから」
由夏「ゴメン。聞き方が悪かったわ。私は、深い友達でいたいの。あなたは?」
大輔「私もです」
由夏「ふふふふふ。良かった。」
二人は、浴室に向かった。
由夏「もう、坂口さんの真剣な顔を、見たくないわ」
大輔「ごめん」
由夏「大丈夫よ。その内きっと私、自然に別れるから」
大輔「うん」
由夏がキスをした。




