【66】 海斗「『三角関係』って何?」
その日の夜。
坂口大輔が、半年ぶりに、松島奈美の部屋にやって来た。
大輔は奈美の部屋に着くと、まず始めに海斗を強く抱きしめた。次に、奈美と抱き合った。それだけで、半年間のわだかまりが、すべて消えて行った。
海斗が冷蔵庫からアイスを1本取り出し、
海斗「市役所のお兄さん、食べる?」
大輔「ううん、食べない」
海斗「わかった」
そう言うと海斗は袋からアイスを取り出し振り回し始めた。
大輔「まだ、あのおまじないやってるんだ」
奈美「そうなの。変わってるでしょ」
大輔「ううん。愛想が良くなったよ」
奈美「ありがとう」
海斗は5、6回アイスを振り回して食べ始めた。
大輔「海斗君、」
海斗「はい」
大輔「学校でいじめられたりしてない?」
海斗「大丈夫。そうだ、今日道徳でね」
大輔「うん」
海斗「いじめについて勉強した」
大輔「それはいいことだね。どんなことを教わったの?」
海斗「いじめに遭わないためには、三角関係が大切だって」
大輔「『三角関係』?」
海斗「うん、三角関係。人と人との関係、学校だとクラスの仲間との関係」
奈美「それ『人間関係』じゃない?」
海斗「そうか」
海斗はテレビのある部屋へと移動しテレビゲームをやり始めた。
海斗がテレビゲームに夢中になると、
奈美「戻ってきてくれてありがとう」
大輔「約束だからね」
奈美「嬉しい」
大輔「でも、最初に言っておきたいことがあるんだ」
奈美「うん」
大輔「実は、付き合っている女性がいる」
奈美「うん」
大輔「相手は、同じ国民健康保険課の係長、小竹さんなんだ」
奈美「秋石病院で会った人ね」
大輔「うん」
奈美「あなたと同じようにやさしいし、それに美人だわね」
大輔「うん」
奈美「もう、深い関係よね」
大輔「うん」
奈美「じゃぁ、私たちの関係は終わりなのね?」
大輔「……」
奈美「私が、いけなかったのよ。大輔さんの親切が偽善かと思ったら、悔しさがこみあげてきて、憎しみが抑えきれなかったのよ」
大輔「……」
奈美「それだけ、大輔さんのことが好きだったのよ。本当に好きだったから、」
大輔「いや、奈美さんは、ちっとも悪くないよ」
奈美「でも、いいの。自業自得。いくら怒っていても抑えないとね。私のこれからの人生に、きっと役立つわよね」
大輔「いや、奈美さんさえ良ければ、結婚は出来ないけれど、付き合いたいと思っています」
奈美「ほんとに?」
大輔「本当です」
奈美「私は良いけれど、小竹さんが、それを許すかしら?」
大輔「わかりません。が、これから聞いてみます」
奈美「そうね。明日は、休みだし、泊まって行く?」
大輔「そうですね」
しばらくして海斗が大輔と奈美の所に戻って来た。
海斗「そうか、人間関係か」
奈美「そうよ。人間と人間、お互い尊敬して、仲良くしましょう、ってことよ」
海斗「同じようなことを先生が言ってた」
奈美「でしょう」
海斗「じゃぁ『三角関係』って何?」
その夜、三人は並んで寝た。海斗が眠るのを待ち、眠ったのを確認して二人は深い関係へと入って行った。




