【62】 3回目のデート、「あそこに入ってもいいですか?」
それからまた2週間後。小竹由夏と坂口大輔の3回目のデート。
大輔は、前と同じ荒川べりにあるちょっとした駐車場に車を停めた。
大輔「今日は、なんか駐車している車が多いですね」
由夏「なんでだろう、天気のせい?」
大輔「なんでしょうね?」
由夏「ちょっと落ち着かないし、そのうちトイレに行きたくなりそう」
大輔「私もです。すぐそこに公衆トイレがありますが、さすがに怖くて行けないですね」
由夏「無理よ」
大輔「どこか他の場所へ行きますか?」
由夏「うん」
大輔は、車を荒川の土手から街中へと走らせた。すぐにラブホテルのネオンが見えてきた。
大輔「あそこに入ってもいいですか?」
ラブホテルのネオンを指さした。
由夏「うん」
小さく頷いた。
二人が部屋に入った。
由夏「きれいなのね。こう言うとこ、入って見たかったんだ」
大輔「ほんと、きれいですね」
由夏は、いろいろなスイッチをさわり始めた。そのたびに、照明がついたり、消えたりした。大輔は、その様子をベッドに座って見ていた。
由夏「テレビも冷蔵庫もカラオケまであるのね」
大輔「いいですよね。なんでも揃っていて。こんなワンルームマンションを借りたかったな」
由夏「ふふふふふ」
大輔は、無邪気に笑っている由夏を、初めて可愛いと思った。今までは、やはり係長として見ていたからだろうか、由夏の方が年上だったからだろうか。
由夏「坂口さんの部屋だって、きれいでなんでも揃っているんでしょう?」
大輔「とんでもない。なにもないのに、きたないんです」
由夏「本当かな?」
そう言いながら、由夏は冷蔵庫を覗いたり、浴室を覗いたりしていた。
大輔「やはり係長は、じゃない、由夏さんは研究熱心で、なんでもすぐ覚えちゃうんでしょうね。仕事みたいに」
由夏「うん、なんでも興味はあるわね。ちょっと、トイレに。ついでにトイレも研究してくるわ」
大輔「はい、どうぞ」
由夏が、トイレから出てきた。
大輔「私も、トイレ研究してきます」
入れ替わりで、大輔がトイレに入った。そして、すぐに出てきた。
大輔「お風呂は、どうしますか?」
由夏「男の人から、そう聞かれるのって、なんかリッチな気分ね」
大輔「なんなら、もう一回言いますよ。お風呂は、どうなさいますか?」
由夏「わぁー、結婚したらそう言う会話があるんだろうな。でも、私、結婚願望が無いのよ。かまわない?」
大輔「私もです」
由夏「坂口さんって、なんでも『私もです』って言うんだから」
大輔「はい、考えたり、逆らうのが面倒なんです」
由夏「そう言うところが、好きなんだなぁー」
大輔「良かった!」
由夏「お風呂なんだけれど、実は、家で入って来たんだ」
大輔「私もです。じゃあ、一緒に入りますか?」




