【57】 係長、異動発表後おかしかったぞ
潤平「『上司』『部下』『同僚』『市民』の4方向の角度(90度×4)からの評価を参考に昇任を決める方法だね」
育美「すごーい! 電話や窓口に出なければ『同僚』や『部下』からの評価は下がる訳ですね」
潤平「そうだよね。『同僚』たちからの評価がゼロになるかも知れないからね」
潤平「ところで係長は『異動者一覧表』、ご覧にならないのですか?」
由夏「うん、後で見るからいいわ。みんな先に見て」
潤平「係長、なんか元気ないですね」
由夏「そんなことないわ。いつも通りよ」
潤平「そうですか? なら良いのですが」
由夏「ちょっとがっかりしただけよ、森口さんや渡辺さんが良い所へ行けなくて。私の力不足だったのかな?」
歩み「そんなことないですよ。人事異動なんて、上が勝手に決めることなんですから」
育美「そうですよ。もう、まったく(上は)!」
由夏「そお?」
その言葉が、また元気が無かったし、気持ちがまったく入っていなかった。言葉の選択もずれていた。そして、また下を向いて字を書き始めた。
潤平は(おやっ?)と、思った。
潤平(いつもなら、もう少し言葉を返してくるのに。慰めだったり、フォローだったり……)
由夏は、字を書いている振りをしながら、
由夏(坂口さんは、この異動をどう思っているんだろう? お互い二人とも異動しなくてほっとしているかしら? それとも残念に思っているかしら?)
由夏(ちょっと、顔を見てみようかしら?)
由夏は、坂口の席をチラッと見た。そこに坂口は居なかった。坂口はカウンターで接客していた。
由夏(坂口さんが接客していることも知らなかったなんて、私、どうかしている)
由夏は、カウンターにいる坂口大輔を見た。
由夏(いつもと同じね。そうよね、変わらないわよね、むこうの方がしっかりしているわ)
さみしく、また、下を向いた。
潤平は、その由夏の一連の行動をさりげなく、気づかれないように見ていた。
◇
平沼潤平は、ワンルームマンションに帰ると、坂口大輔に電話した。
潤平「あ、もしもし平沼ですが」
大輔「ああ、どうも」
潤平「今日、係長、異動発表の後、おかしかったぞ。何か知っている?」
大輔「うん、心当たりはある」
潤平「あれだけ、元気が無い係長を、初めて見たよ」
大輔「そんなに落ち込んでいたのか?」
潤平「ああ、ただ事じゃない感じがしたなぁ」
大輔「それ、みんなに気付かれた?」
潤平「いや、みんなは気付いてないと思うけれど」
大輔「そうかぁー」
潤平「いったい何があったんだよ?」




