【45】 母子家庭への調査
翌日。美浦市役所こども家庭課。
電話が鳴った。
太井「はい、子ども家庭課、太井です」
太井健一(ふとい・けんいち・34歳)が、電話に出た。
住人「美浦市に住んでいる者ですけれど」
太井「はい」
住人「本町に住んでいる松島奈美さんだけれど、男性が出入りしているんじゃないの? 男が出入りしているところを見かけたよ」
太井「わかりました。調査してみます。ありがとうございました」
太井がそう言うと、電話は切れた。
美佐「たれこみ?」
隣に居た主任の並木美佐(なみき・みさ・45歳)が聞いた。
太井「ええ、松島奈美さんの所に、男性が出入りしているそうです」
美佐「そうなんだ。あそこは、旦那さんが失踪したということで、ジフ(児童扶養手当)が出ているわよね」
太井「はい、ジフが出ています」
美佐「旦那さんが戻って来て、それを隠しているのかな?」
太井「そうかも知れませんね」
美佐「じゃぁ、悪いけれど、調査してくれる」
太井「はい、すぐに調査します」
子ども家庭課では、母子家庭に対して児童扶養手当など子育ての支援金を支給している。美浦市役所では『児童扶養手当』を略して『ジフ』と言っていた。
先月も、電話が鳴り、
太井「はい、子ども家庭課、太井です」
民生委員「東町の民生委員だけれども」
太井「いつもお世話になっております」
民生委員「7丁目の篠原冷子さんのところ、毎日男性が来ているけれど」
太井「そうですか、」
民生委員「なんなんでしょうね?」
太井「と、言いますと?」
民生委員「偽装離婚かしら?」
太井「なるほど、私どもで調べてみます。ありがとうございました」
その後、子ども家庭課で調査体制を組み調べたところ、篠原冷子の所に出入りしていたのは、元夫であることが判明した。『児童扶養手当』を受給し、『国民年金保険料』を免除してもらうなど、さまざまな手当や減免を受けるための偽装離婚であることが明らかになったのだった。
児童扶養手当法第23条により支払った手当を返還させる手続きをし、 児童扶養手当法第35条に基づき、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられることもあり警察に告発した。




