【40】 海斗の記憶は?
坂口大輔は仕事帰りに松島奈美の部屋を訪れた。
奈美「上がって」
大輔「はい」
奈美の息子海斗はテレビゲームに夢中だった。
奈美「海斗、市役所のお兄さんが来たわよ!」
海斗は大輔をチラッと見ると、テレビゲームを一旦中止し冷蔵庫から棒の付いたアイスを1本取り出した。そして、またテレビの前に座り、今度はアイスを頭の上でグルグル回し始めた。
大輔「ふむ?」
奈美「なにか?」
大輔「海斗君、頭の上でアイスを回しているけれど、何かのおまじない?」
奈美が海斗を見た。
奈美「うん、もう、あの子ったら」
大輔「どうしたんですか?」
奈美「なぁに、ね。この前、市役所のお兄さん、あなたが来たので『海斗はテレビゲームばっかりやっているから、もっとあいそうをふりまかないと、お兄さんに嫌われちゃうわよ』って言ったのよ」
大輔「うん?」
奈美「そうしたら、あの子おバカだから、『あいそうをふりまかないで、アイスを振り回している』のよ」
大輔「ははははは」
奈美「私に似ておバカでしょう?」
大輔「お母さんが、おバカかどうかは分かりませんが、お母さんの話を聞く良い子じゃありませんか」
奈美「あなたって、本当にいい人ね」
この日、奈美は夫松島博之について坂口大輔に話し始めた。
奈美「夫と出会ったのは、韓国のテーマパークだったわ」
大輔「ロッテワールドですか?」
奈美「ええ、そう。今思うと、夫の博之は最初から、私から逃げようとしていたのではないかと思うの? その後も何度か私と別れたいような会話や素振りがあったし……」
大輔は黙って聞いていた。
奈美「11年前、私が友達の(土江)順子と二人で韓国ソウルを旅行していた時のことだったわ……」
奈美は大輔に、夫との出会いから夫が失踪するまでの話をした。




