【34】 人間関係や家庭がうまくいく秘訣
博之「テレビに良く出るあるタレントさんが言っていたけれど、『喜怒哀楽』という言葉の『喜』と『楽』だけ人に見せて、『怒』と『哀』は決して他人に見せないようにするんだ。って」
奈美「それが、人間関係や家庭がうまくいく秘訣ってことなの?」
博之「そう! 僕は、結婚式のときそう思ったんだ。けれども、もう式は始まっていたし、この流れを止めてはいけないと思って仕方なく『はい、誓います』と答えたんだ」
奈美「じゃあ、あの答えは本心じゃないってこと?」
博之「うん。『喜びは二人で分けるけれども、悲しみはひとりで背負う』。その方がうまくいくと信じている」
奈美「そう言えば、私が5歳のとき、飼っていた猫が、朝、交通事故で家の前で死んでいたの。猫は何度か轢かれたらしくてもうとても見られない状態だった。父は、私が寝ているうちに、庭に穴を掘って猫の死骸を埋めたわ。そして、私が幼稚園へ行ってから、更に深い穴を掘り直し、埋めたらしいわ。結局その日、父は会社を休んだの。その日に限って大きな仕事があったにもかかわらず」
博之「うん」
奈美「そのことを知ったのは私が成人になってからだった。母がこっそり教えてくれたの。父は、私が悲しむから母に『絶対に言うな』と口止めしたのに。だから家では、それまで猫がどこかへ行っちゃったことになっていたのよ」
博之「君のお父さんは、僕と同じ考えだったんだな」
奈美「母もその猫の死骸は見てないんだって。父が『見るな!』と言ったらしいわ」
博之「わかるな、その気持ち」
奈美「もし、母が父から『猫の死骸を処理しておいて』と頼まれても、母は出来なかったかも知れない」
博之「それで思い出したけれど、昔、ご近所で家の中でゴキブリが出ると、旦那さんが新聞紙を丸めて叩いて殺すんだけれど、後始末は奥さんにやらせる家があったんだ。その奥さんが僕の母に随分こぼしていた」
奈美「その奥さんは、死骸の始末だけやらされたんだ」
博之「うん」
奈美「母が成人になった私に、猫が死んだ話をしたのは、もう猫が死んだ事実を受け入れられると思ったからじゃないかしら」
博之「子供には話せないけれど、大人になったらなんでも話した方がいいってこと?」
奈美「うん」
博之「でも大人になっても、浮気している話なんかは、お互い知らない方が幸せなんじゃないかな。ほら『知らぬが仏』って言葉もあるくらいだから」
奈美「その話は、そもそも浮気することが間違いよ」
博之「なるほどね」
奈美「喜ぶ話と楽しい話は他人にできるけれど、怒る話と哀しい話は他人にできないのかしら?」
博之「テレビだってそうだよ。トーク番組で悲しい話をする芸能人はいないし、怒りばっかりの国会中継なんて誰も見ていないのが現状だろう?」
奈美「そうよね。でもそうなのかなぁ? じゃぁ、なんのためにあの牧師さんの言葉があるの? 今まで何十年も何百年もあの言葉が使われてきたんでしよう?」
博之「外国人はともかく、日本人が、しかもキリスト教信者でもない人が、みんな真剣に考えて答えているのだろうか? 単に『はい、誓います』と形式的に言っているだけなんじゃないのかな?」
奈美「そうかぁ~。無宗教の女性でも、教会でウエディングドレスを着た結婚式に憧れるからね」
博之「日本人は、仏教徒でもクリスマスやバレンタインをするんだよ。不思議だよな」
奈美「それだけ順応性があり、心が広い国民なのよ。みんないい人ばかりなのよ!」
博之「いいなぁ奈美さんは。純粋で、天然で、うらやましいよ」




