【31】 もっと相応しい人がいますよ
ある土曜日。
次に二人が逢った場所は、日本にある『ピースランド』という名のテーマパークだった。
最初に二人はコーヒーカップに乗った。このアトラクションの名称は『カップDEぐるぐる』。
BGMでJ-POP『大人ジェリービーンズ』が流れていた。
『子供の頃によく乗ったコーヒーカップ、初めてのデートで乗ってハンドルをたくさん回した』
そんな内容の歌詞が聞こえて来た。
奈美「あたしたち、初めてのデートらしいデートね。ワクワクしちゃう。このコーヒーカップ、子供の頃、好きだったなぁ」
博之「いいなぁ。僕はあまり遊んだ記憶が無いんです。女性とお付き合いしたことも無いし」
奈美「そうなんだ。堅物なのね」
博之「僕は税金のことしかわからない偏った人間だから話が合わないかも?」
奈美「世間では同じ趣味がいいとか、価値観が一緒が良いとか言うけれども、私は別世界の知らない人がいいな」
博之「めずらしい御意見ですね」
奈美「同じ趣味、同じ仕事をしていると、どうしても細かい所までわかるから、口出しをしてぶつかってしまうような気がするの」
博之「そうそう、学生時代のクラブでも、今の職場でもそう言う経験をたくさんしました」
奈美「まったく知らない世界なら口出しもしないし、うまくいくんじゃない?」
博之「そうですか?」
奈美「そうよ」
そう言うと奈美はコーヒーカップのハンドルをぐるぐる回した。
2番目に、二人はジェットコースターに乗った。このアトラクションの名称は『ヒューストン』。
BGMでアメリカ合衆国の歌手、ホイットニー・ヒューストンの『オールウェイズ・ラヴ・ユー』が流れていた。
『わたしは常にあなたを愛しています』
そんな内容の歌詞だった。
奈美「ねぇ、結婚しようよ!」
博之「君には、もっと相応しい人がいますよ」
奈美「それ『ノー』って意味よね」
博之「うわっ!」
ジェットコースターが急降下した。会話が途絶えた。




