【26】 『模範タクシー』と『一般タクシー』?
翌日。
4人は、奈美と順子が宿泊しているホテルのロビーで博之たちと待ち合わせをし、そこから模範タクシーに乗った。ホテルのコンシェルジュが模範タクシーを呼び「Nソウルタワーまで」と韓国語で言ってくれた。
前の座席に、北井洋次が座り、後部座席に奈美を挟んで博之と順子が座った。
タクシーの中で、
奈美「ねぇ『模範タクシー』ってどういう意味?」
博之「韓国には『模範タクシー』と『一般タクシー』があるんだ」
奈美「そう」
博之「最初はもちろん『一般タクシー』だけだったけど、不当請求や相乗りを強要する運転手さんが増えてきて、ある一定の基準をクリアーした優秀な運転手さんにだけ『模範タクシー』の称号が与えられたと聞いているよ」
奈美「『一定の基準』って?」
博之「例えば、ある程度外国語がしゃべれる、接客態度が良い、道に詳しい、クレジットカードも取り扱っている、とか」
奈美「私とはまったく正反対ね。外国語はダメだし、接客も上手とは言えないし、私なんか、『模範』じゃなくて『最悪』でしょうね」
博之「『最悪タクシー』か。いいですね。一度乗ってみたいな」
奈美「あら、そうですか? お口が上手いこと」
博之「奈美さんは、なんのお仕事をされているんですか?」
奈美「ファミリーレストランのホール係、でも、接客が下手で辞めたばかりなの。それで休みが出来たから、この韓国に来たの」
博之「今まで働いて来たご褒美ですね」
奈美「まぁ、そんなところ。私もいつかは、模範になれるかしら?」
博之「もちろんですよ」
奈美「韓国のタクシーは、差別化しているのね」
博之「うん、だから『模範タクシー』は、観光客に人気があるようですよ」
奈美「なにか『模範タクシー』と『一般タクシー』との見分け方があるの」
博之「『模範タクシー』は黒に金色の帯がかかった車体で、『一般タクシー』はそれ以外の色です」
奈美「そう言えば、このタクシーも黒に金色よね」
順子「あっ、あれも」
すれ違うタクシーを指さした。
奈美「『模範タクシー』って、やっぱり料金が高いのかな?」
博之「そうですね、割高になってますね。ですから地元の人はみんな『一般タクシー』を使うみたいですよ」
順子「あれっ、大きな『模範タクシー』もある」
対向車のワンボックスカータイプのタクシーを指さした。
博之「ええ、8人まで乗れるジャンボタイプもあります」
順子「へぇー、そうなんだ」
奈美「もしこの世の中、労働者の胸に札を付けるとしたら、博之さんは『模範』で、私は『一般』なんでしょうね」
博之「そんなことはないさ」
奈美「そうかなぁ。博之さんは何でも知っていて、わかりやすく教えてくれる。私は、どこへ行っても使い物にならずクビになっちゃうわ」
そうこうしているうちに模範タクシーは、『南山ケーブルカー』乗り場までやって来た。Nソウルタワーに行くには、ここでタクシーを降りて、あとは『南山ケーブルカー』で行く方法がある。
Nソウルタワーは、小高い丘の上に建っていた。『南山ケーブルカー』に乗ると、丘の上まで乗車区間は約600メートル、乗車時間約3分の空中散歩が楽しめるのだ。ただし、乗るまでに、15分からときには1時間待たなければならなかった。




