【22】 『セックス三度した』
その夜、大輔は一度自分の家に戻り、また十時過ぎに奈美の部屋を訪れた。すでに海斗はぐっすりと寝ていた。奈美は二人分の布団を敷いたが、ひとつの布団に二人が入った。
奈美「昨日の分まで、ねっ!」
大輔「うん」
奈美が大輔に抱きついた。二人は二日分、夜を楽しんだのだった。
翌朝、大輔は海斗が起きる前に奈美の家を出て自分の家に戻って行った。
その日の夕方、奈美がパートの仕事から家に戻ると、海斗がすでに帰っていて相変わらず夢中でテレビゲームをしていた。
奈美「さて、夕食の準備ね」
奈美がテーブルの上を見た。すると、そこに海斗の字でメモが置いてあった。奈美がそのメモを手にして黙読した。
奈美「……」
言葉を失った。
メモに書かれてあった内容が、奈美にとってあまりにショックだった。
奈美(『セックス三度した』)
頭の中で海斗のメモを繰り返した。
奈美(えっ! あの子起きてたの?)
奈美が海斗を見た。横顔だった。海斗は母親が見ているのにも気づかず無邪気にゲームにのめり込んでいた。
奈美(ウソっ。聞こえちゃったのかしら?)
奈美(えっ、寝ている子を起こした?)
奈美(そんなに私……)
奈美の顔が赤くなった。
しばらくして、
奈美(ウソっ。三度じゃなく二度よ)
奈美(でも、そんなの小学生の子供が数えられないか)
奈美(わーっ、どんな顔して海斗と向き合えばいいの?)
奈美(ああーっ、弱ったわ。うん、もう!)
奈美(夕飯の支度もしないといけないし、ああーっ、どうしよう!)
奈美(困ったわ。ああーっ!)
奈美(ダメダメダメ! 冷静に。とにかくここは冷静にならないと)
奈美(落ち着いて。慌ててもろくなことは無いし)
奈美(そうだ、とにかく説明よ。あの子に理解してもらえるように説明よ)
奈美(えーっ! でも、なんて説明するのよ?)
奈美が再び海斗の顔をチラッと見た。
奈美(私のことなんか無視ね。ゲームに夢中)
奈美(うん? 待って、昨日のことで私を嫌いになった?)
奈美(そう言うことってあるのかしら? だからゲームで気持ちを発散させている?)
奈美(とにかく、もうばれちゃったんだから、覚悟を決めなきゃ)
奈美(「お父さんが居るのにゴメン」って言う?)
奈美(他には?)
奈美(「好きだから抱き合ってたの。海斗ともするでしょう」って)
奈美(でも、声は出さないか)
奈美(もう、私なにを考えているんだろう?)
奈美(ダメだわ。いい案が出ない)
奈美(降参!)
そのとき、海斗がゲームを止めてキッチンにやって来た。
奈美(わーっ! どうしよう?)
海斗(あっ、それ)
海斗がメモを指さした。
奈美(あーーーーーっ、もうダメ!!!)
海斗「『渡した』って漢字、合ってる?」
奈美「えっ!?」
海斗「この前国語の授業で『度』を習ったんだ。その時先生が、隣に『三』を書くと『渡す』になります。『クラスに居る渡辺さんの渡ですね』これは中学で習います。って言ってたから、書いてみた」
奈美「うん?」
奈美(あれっ? よく見ると最初も『セックス』じゃなく『ソックス』って書いてある)
海斗「ねぇ、『ソックス渡した』って、読めるよねぇ」
奈美(『三』が離れすぎ! でも怒れないわ)
奈美「うん、そう読めた」
奈美(自分のウソつき!)
自分を戒めた。
海斗「やったー」
奈美(止めて、その言葉)
奈美が天井を向いて目をつぶった。




