【21】 これって不倫かしら?
その日の夜。
大輔は、仕事が終わると真っ先に、奈美と海斗の住むマンションを訪ねた。
ドアの所で、
大輔「その後、海斗君は大丈夫ですか?」
奈美「ちょっと上がって、」
大輔が部屋の中に入って行った。
奈美「ほら、あの通りよ」
奈美が指さした所に海斗が居た。海斗は、ダイニングチェアーに座り、テレビゲームをしていた。
奈美「海斗、この前三浦君から借りたサッカーの靴下、洗ったから明日返してね」
海斗「わかったー」
海斗がテレビゲームをしながら返事をした。
海斗は小学校でサッカーをやっていた。奈美はテーブルの上に綺麗に洗った靴下を置いた。
大輔「海斗君、元気そうで良かったぁ」
奈美「ええ、坂口さんがこの部屋を出てから、私が海斗の手を握り、そのまま海斗の手を左右に振っていたら目を覚ましたわ」
大輔「良かったですね」
奈美「ええ、お陰様でもう海斗の体はなんともないみたい」
大輔「はい、」
奈美「ただ、」
大輔「ただ?」
奈美「ただ、記憶だけがどうもなくなっているようなんです」
大輔「えっ!」
奈美「ジョーブ君が思いっきりぶつかってきたみたいで」
大輔「すみません」
奈美「いいのよ、あなたが謝ることじゃないし。でもジョーブ君からひとこと謝罪の言葉があっても良さそうなものなのに」
大輔「私が、代わって、」
奈美「私あなたのことは大好きだけど、ジョーブ君はダメね。とっても恨んでいるのよ」
大輔「私からよく注意しておきます」
奈美「ええお願いします」
大輔「で、記憶の方なんですが?」
奈美「覚えているところもあるんだけれど、まったく記憶が飛んでいるところもあるのよ」
大輔「そうですか? お医者さんには連絡したのですか?」
奈美「はい、よくあることだと言ってました。『頭を打った直前のことは、記憶されないけれど、他のことは徐々にすべて思い出すでしょう』って」
大輔「そんなことがあるのですね。知らなかった」
奈美「海斗に聞くと、やはり社会科見学に行ったことは覚えてないみたい」
大輔「そうですか」
奈美「それ以外のことは、まぁまぁ、記憶があるみたい」
大輔「そうですか」
奈美「でも、まぁ他は何ともないから安心したわ」
大輔「良かった。話は変わりますが、ご主人からは、まったく連絡ないのですか?」
奈美「ええ、もうあきらめています。私から逃げたかったのか、それとも税金の調査で恨みを買って殺されたのか。私には、この子がいるから大丈夫。主人のことは、もう、どうでもいいわ」
大輔「お母さんがしっかりしているから海斗君は、お父さんが居なくても気にしてないと思いますよ」
奈美「そうかしら、そうは思えないけど」
大輔「私もあなたと昨夜と今朝一緒に居て分かったのですが、とても心が落ち着きました」
奈美「そう、じゃぁ良かった。坂口さんに嫌われたんじゃないかと、とても心配していたんです」
大輔「あなたと会うときだけ楽しいのではなく、今日、職場で離れて考えていても楽しかったのです」
奈美「私もあなたと一緒にいると何か落ち着けて、そして心が弾むような、これって不倫かしら?」
大輔「不倫ねぇ、そうかも知れませんが実際にはご主人さんがいないわけだから」
奈美「主人がいないから、ちゃんとしたセカンドラブね」
大輔「そうです、セカンドラブです」
奈美「良かった!あなたにそう言ってもらえて」
大輔「はい」
奈美「じゃぁ、今から正々堂々と交際宣言しても大丈夫ね」
大輔「はい」
奈美「何か、昨日の夜、あなたの腕の中に抱かれていたら、忘れられなくなっちゃって、」
大輔「私も。これから一旦自分の家に戻り、食事して風呂に入ってまた来ます」
奈美「じゃぁ、十時過ぎに。海斗が寝てからね。うふっ!」
大輔「はい」




