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【18】 もっと強く抱いてくれますか?

奈美「今朝ニュースを見て、そのあと小学校から『海斗が頭を強く打った』と電話があり、

もし、もしも、海斗まで失ったら、と考えたら頭がおかしくなった」

大輔「……」

奈美「海斗が死んだら、私も死のうと」

 奈美の目尻からシーツへと涙が流れた。

大輔「……」


奈美「だから、今日だけは、今日だけは、誰かにそばに居て欲しかった」

 涙声だった。

大輔「……」

奈美「今日の私を、誰かに支えて欲しい」

大輔「……」

奈美「私だって、そんなときがあるのよ」

 大輔が黙って奈美の背中に手をやり、ぐっと抱き寄せた。


奈美「もっと強く抱いてくれますか?」

大輔「……」

大輔が黙って強く抱きしめた。

奈美「もっと」

大輔「……」

大輔がもっと強く抱きしめた。

大輔「痛くない?」

奈美「大丈夫。それに、痛くてもいいの」

大輔「……」

奈美「生きていることを体感できるから。誰かと居ることを体感できるから。だから、痛くていいの」

大輔「……」


奈美「抱き合ってわかることってあるでしょう?」

大輔「……」

奈美「あなたの体温、あなたの鼓動」

大輔「……」

奈美「ヒトを感じられるでしょう」

大輔「……」

奈美「『あの人、心が温かいね』って言うでしょう」

大輔「……」

奈美「このことなのね」


大輔「……」

奈美「抱かれていると、落ち着くの、ほっとするのよ」

大輔「……」

奈美「ずうっとひとりだったでしょう」

大輔「……」

奈美「だから抱きしめられて、それが痛くても誰かの腕の中に居る方が、ずうっとずうっと心が癒えるのよ」

大輔「なら良いのですが」


奈美「幼い子が母親に『抱っこ、抱っこ』って。時も場所もわきまえずにせがむでしょ、あの気持ちがわかるわ。だから今は、私があなたにせがんでいるの」

大輔「……」

奈美「抱かれていると安心するのよね、そしてときにはその安心という布団に潜って、いつしか眠ってしまうことも。これって最高に幸せよね」

大輔「……」


奈美「ほらカンガルーとかワラビーとか有袋類の動物っているじゃない? あの動物たちの子供は幸せよね。、ずうっと抱かれているような、今度自分が生まれ変わったら5歳まではカンガルーかワラビーがいいな」

大輔「その後は何に生まれ変わりたいの?」

奈美「今度またこんな機会があるときまでに考えておきます」

大輔「……」


奈美「『一日一回、子供を抱きしめると良い子が育つ』と言った人がいるけどそのとおりね。親も一日一回は、子供を抱きしめるべきね」

大輔「『抱く』のではなく、『抱きしめる』のですね」

奈美「うん」

大輔「子供だけでなく大人も一日一回抱きしめれば良い大人が育つと思うな。みんながみんな夜抱き合って寝ていればいじめやけんかなど絶対起きないと思う。なんで戦いや争いなんかが起こるんだろう。みんな抱き合っていればいいのに」


奈美「そうよねぇ。誰かが言っていた『人類みな最高のセックスをしていれば戦争など起きない』と」

 しばらくの間沈黙が続いた。

奈美「もっと、くっついてもらってもいいですか」

 大輔が奈美を強く抱きしめながらも腰が引けていた。

大輔「はい、でもただ……」

奈美「ただ何か……」

大輔「ちょっと下の方が、変化していまして、」

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