【15】『アラジンと魔法のランプ』
大輔「では、こうしましょう。今回のお詫びの印として、私があなたの三つの願いを叶えます。これならいいでしょう。これで、市としても、私としても、あなたの願いを叶えることで気が楽になります」
奈美「ふふふふふ。まるで『アラジンと魔法のランプ』ね」
大輔「良かった。笑い声が聞けて」
奈美「では、早速一つ目のお願いを頼みます」
大輔「はい、なんでしょう?」
奈美「今日だけでいいから、ここに泊まっていってもらえません?」
大輔「はい、お願いは何でも引き受けます」
奈美「海斗が頭を打って、今日だけは、私心配なの」
大輔「そのお気持ちは良くわかります」
奈美「海斗に何が起こるかわからないじゃない? 私だけじゃ車もないし、海斗を持ち上げるだけでも大変だし、もし坂口さんがこのまま居てくれたらどんなに助かるか」
大輔「大丈夫です。泊まります。なんなら車の中で寝てもいいですし」
奈美「そんな。車じゃ体に良くないわ。ここに布団を敷くからぐっすり眠ってください。何かあった時だけ起こしますから」
大輔「わかりました」
大輔は職場に電話をした。
大輔「課長居ますか?」
職員「今、代わります」
課長「その後、どうですか?」
大輔「お子さんを寝かせて、様子を見ているのですが、まだ目を覚ましません」
課長「そうですか」
大輔「市役所には戻らずに、このまま松島さんのお宅に居てもよろしいですか?」
課長「そうね。その方が、お母様も安心でしょうから。お母様が『良い』と言えば、そうしてください」
大輔「わかりました」
課長「その代わり、今日だけですよ」
大輔「わかりました」
課長「5時15分まで、出張扱いにしておきますから」
大輔「ありがとうございます」
電話を切ると国民健康保険課長の茂森早紀が、大輔からの電話の内容を、係長の小竹由夏に伝えた。
係長「そうですか。わかりました」
係長の小竹は、浮かぬ表情を見せた。
由夏(自分が坂口さんに、松島さんを送るよう命じたのに、なんなんだろう、この気持ちは?)




