↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/87

【12】 なぜ主人は私の前から姿を消したのか?

 奈美が返事をしないので、大輔はついつい話を大きくしてしまった。そのことに大輔が気付き、

大輔「ごめんなさい。聞き過ぎですよね」

 大輔が頭を下げた。


奈美「大丈夫。何を聞かれても大丈夫ですから。それと敬語は使わなくて大丈夫よ。私もそうするから」

大輔「ありがとうございます」

奈美「『ありがとう』でいいのよ」

大輔「そうですよね。でも、なかなか。すぐには難しいです」

奈美「そうよね。……主人は、私から消えたんだと思うわ」

大輔「『思う』って、―――どういうこと?」

奈美「私の前から姿を消してもう3年も経つわ」

大輔「『3年も』って、それって大変なことじゃないですか?」

奈美「そう、大変なことになったわ。でも、もうそれは過去の話。今はもう落ち着いたし、なんとも思ってない」

 奈美がしんみりと語った。

大輔「そう……」

大輔が小さく頷いた。


奈美「主人が居なくなってしばらくは大変だったわ。それはもう……、想像を絶するような出来事の毎日だった」

大輔「ふむ」

 大輔が小さく頷いた。

奈美「だって、ある日突然居なくなったのよ、何も言わずに。朝『仕事で二泊三日の研修に行くから』と言って出たきり、三日後帰ってくるかなぁ、と思ったけれど帰って来なかった。主人の勤め先は税務署だったの。帰ってこなくなった翌日に、勤務先から電話があったわ」

大輔「なんて?」


奈美「『今日、ご主人お休みですか?』って。逆にこっちが聞きたかったわよ! 『昨日、主人は、ちゃんと帰りましたか?』って。でもそのときは聞けなかった、私は、取り繕うので精一杯だったから」

大輔「大変だったんだ。苦労しましたねぇ」

奈美「主人が行きそうな所は全部電話したし、電話がないところは探しに行ったわ。でもまったく見つからなかった。手がかりさえなかった」

大輔「それは大変だったでしょうね」

奈美「なぜ主人は私の前から姿を消したのか、考えたわ。昼も夜も、そして朝になるまで」

大輔「で?」

奈美「わからない、それが結論」

大輔「それが結論?」

 大輔がオウム返しに呟いた。


奈美「1、私がいやになって家を出て行った。

2、以前から女が居て、その女と日本のどこかで暮らすことになった。

3、これからの子育てに不安を感じて飛び出した。

4、仕事がいやになってホームレスになった。

5、仕事の関係で恨みを買い殺された。

6、何が理由かわからないけれど、とにかく自殺した。

……考えれば考えるほど私は暗くなり落ち込んだ。どれをとっても暗い理由ばかり。私の方がこの世から姿を消したかったわよ」


大輔「それは、相当辛かったでしょうね。大変な思いをされましたね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。