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最弱スキル【地図】が【こうしえん】になった!? - 高度戦術支援地図で最強クランに成り上がれ!  作者: 秋乃せつな


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第88話 成長

 翌朝、完全に二日酔いでまぶたの腫れたすっぴんの雅代(まさよ)を乗せた車両が代々木公園前ギルドに到着した時、中から出てきたのは化粧完璧、足取り軽い敏腕窓口担当美人受付お姉さんだった。あなた誰?


「兄やん、社会人て凄いんやな」


「うーむ。たしかに凄い。真似してはいけないタイプではあるけどな」


 二台の車を代々木公園第一ダンジョンの駐車場に停める。


「小佐原(おさわら)さん、本当にひとりで大丈夫ですか?」


「ええ、問題ないでござる。八階だし、何かあっても自分ひとりならどうとでもなりますゆえ」


 まず、合成作業を進めるために小佐原さんを安地のキャンプ地に送ってからメンバーを寅吉さんに入れ替えて第十九階層の下り階段近くにテレポートする。


 人数が増えるとこういうやりくりも大変になるな。


『今日はこの下、第二十階層のボス攻略が主目的です。マネージャーのスキルの残りが七回。帰りもガッツの分があるから、三回分残す必要がある。このまま無駄なく進めても、余裕を持たせて今日は二十一か二十二階層までだな。とりあえず二十階層に降りよう。行軍隊形で出発。ゴーゴー』


 階段で休む冒険者を横目に足早に下りきって、すぐに地図で確認しながら小部屋に入る。彼らはボス戦を前に階段安地で休憩中だったのだろう。ひょっとしたら昨日からの泊まり組かもしれない。


「跡を付けられてはいないな」


「この辺まで来るとすれ違う冒険者もみんなだいぶ強そうで怖(こわ)なるな」


「うむ。そうだな。間違いなく実力者ではあるからな。ただまぁ、向こうも君たちを見て相当に驚いていたよ」


「女性冒険者も珍しいわけではないけど、さすがにひとつのパーティーに若い女性三人はめずらしいでしょうからね。嫌でも目を引いてしまうな」


「ほんでも、向こうもタイガーはんと兄やん見てビビっとったけどな!」


 一応、俺も男として視線に精一杯の威嚇は込めたけど、寅吉さんはともかく俺にはそんな威圧感は無いだろう。


 ちなみに、寅吉さんに確認したところ、先日の斬鬼刀(デーモンスレイヤー)は不要だが、鬼手甲(デーモンガントレット)は使ってみたいとのことだった。これでまた寅吉さんの見た目の迫力が増した。


「さあ、ボス戦だ。さすがに端までは遠いな。マネージャー、頼む」


「いくわよ。レディ、ジャンプ」


 ボス部屋前に到着。良い時間に来たのかボス部屋近辺に冒険者の姿はない。


「前回、隠し部屋で倒したオーガのレベルが高いやつだな。ここも単騎だから楽勝なはずだ。だけど俺たちのやることを変えるつもりはない。いつも通り粛々とクリアするぞ。俺たちは!」


「弱い!」


 葵がドアパネルにタッチするとデカイ扉がゴゴゴと重い音と共にスライドして開いた。隙間を潜って中に入ると、五人入ったところで閉まっていく。


 平らな石を椅子代わりに座っていたオーガがのっそりと立ち上がる。


 隠し部屋にいたレベル20のオーガよりもまともなヘビかトカゲのような革の服を着ていて、身体も一回りデカい。手に持つ曲刀は同じだが、錆の具合が少なく、一応、刃がありそうに見える。


 オーガとはまだ距離がある。新たな侵入者をいたぶってやろうという余裕と邪悪さを感じる。恐怖を与えようと意図的にゆったりと動いているみたいだ。


「エース、いいぞ」


 オーガの足元から青白い炎が立ち昇るとあっという間に業火となって燃え広がり始める。


 青白い炎が迫る中、シャボンのドームに包まれる。結局、オーガは【絶対領域】に触れることなく、あっという間に消滅した。


「エース、オフで」


「うーん、ボスって感じせえへんな」


「スピードも無い近接特化のモンスターは俺たちと相性がいいな。ただこれもエースの【地獄炎(ゲヘナ)】の威力が高いお陰だけどな。よし、クローザー、オフで」


「千の言う通りよ。【地獄炎(ゲヘナ)】は遠距離攻撃なのか近距離攻撃なのかわからないけど、とにかく破格に強いわよね?」


「うむ。エースの攻撃力は普通の【範囲攻撃魔法】と比べても強いのではないかね? というかだね、魔杖(マジックワンド)を使い始めたからわかりにくいが、そもそも当初の頃より攻撃力が上がっていないかね? ボスのオーガ相手に瞬殺に近いのは魔杖(マジックワンド)のバフの範疇(はんちゅう)を超えているように思えるんだが」


「レベルアップの恩恵が身体能力ではなくスキルに割り振られてる?」


「彼女も『特異体』ということかもしれないね」


 もしそうだとしたら葵の攻撃力は青天井だ。スキルの攻撃力がアップしたところに魔力石(マナストーン)で【範囲攻撃魔法】特化で強化の付与(エンチャント)を施した魔杖(マジックワンド)が更に攻撃力を増幅させ続ける。いったいどういう成長曲線を描いているんだ?!


 前回、初めてオーガを倒した時に感じた違和感はこれか! あまりに瞬殺だったから、近接特化モンスターと相性がいいと思ったんだが、そうじゃない。ヒットポイントお化けであるはずのオーガを瞬殺してるんだ! 単純に攻撃力が高いということの証左だったんだ。そういえば、以前マザー・グラスウルフを倒した時も、周りにいたグラスウルフたちをすごい早さで一網打尽にしていた。


 なんとも背筋の凍る話だが、こんなに頼もしいことはない。彼女は文字通り『Renegades(レネゲイズ)』のエースに成長している。


 いや、そもそも園子の【瞬間移動】も「実際に目で見えている所にしか跳べない」と言っていたはずだ。【地図】があればどこにでも跳べるというのもよくわからないぞ?


 香流は体力の特異体なのは間違いないだろうが、彼女の魔力は【絶対領域】にしか影響しないパラメーターのはずだ。


【こうしえん】はいったいどこまで影響しているんだろう?


「ああ、ダメだ。自分にできないことを他人に求めるのは悪魔の誘いだ。このパーティーなら世界を目指せるなんて。これなんですね、タイガーが前に言っていたことは。俺にもおぼろげに見えてしまいますよ。『世界最強』の文字が」


「うん、慌てることも急ぐこともない。彼女たちはもちろん、あなただってまだ若いんだ。やりたいこともできることもゆっくり探せばいい」


 若いと言われて一瞬、その気になりそうだった。一回りも年上から見れば俺だって若く見えるのだろう。だが、彼女たちが若いということはその通りだ。若い女性たちだ。彼女たちの未来を閉ざすことだけは決してあってはならない。いつだって彼女たちの未来は開けたものにしなければならない。冒険に、クランに尽くして終わるような人生にだけはしてはならない。


 オーガの魔石を拾いながらクラン運営についてもっと考えなければと思いを馳せた。


「兄やん、今度はこんなん落ちてたでー」


「うお、それはまたゴツいな」


 葵が黒い盾を持っていた。赤い紋様が絡みついていてなんとも言えない迫力がある。


「それもひょっとしてオーガ固有のネームドアイテムなんじゃないか?」


「そうね。デーモンウォールとか鬼壁(おにかべ)って呼ばれる有名なネームドの盾よ」


「魔鉄鋼製の盾だね。それはとても良いものだよ。そして非常に高価だ」


「ほーん。ほんならマネージャー用やな。ほい」


 あっさりと園子に渡す葵。


「なんでよ。あなたが使いなさいよ」


「うーん、なんかコレはちゃうねん。ウチいらんわ」


「えー? なによそれ」


 怪訝そうな顔をして盾を受け取る園子。受け取ると同時に盾が少し大きくなった気がした。


「どうだ、マネージャー」


「ん-、そうね。さすがネームドね。悪いわけないわ」


 言ってる顔が綻(ほころ)んでいるのに気付いていなさそうだ。


「エースのその直感は信じていいと思う。アイテム対して抱いた最初の感情は大切にした方がいいことが多い。不思議なんだがね、そういうのはよく見たよ。そしてそれを感じることが多い冒険者は自分に合う合わないに関わらず良いアイテムを拾うことが多くてね。昔の小隊にもそんな奴がいて、よくラストアタックを取らせていたよ。本人は俺ばっかり働かせやがってなんて言って文句を言っていたがね」


「うちでは必然的にエースがファーストアタックでラストアタックですからね。じゃあアイテムがよく出るのはエースのお陰なのかもしれないな」


「おー、ほな、ウチめっちゃ貢献度高いな!」


「ああ、だから最初から言ってるだろ? ウチには葵がいなきゃダメなんだって」


「兄やんのそれは女の子みんなに言うてるからなぁ。タラしの言うことは信じへんようにしてたからちぃとも本気にしてへんかったわぁ」


「うふふふ。千さんは女の子を褒めるのがとてもお上手ですからね。気を付けてくださいね?」


「タラし……マジか。俺ってそんな軽薄な男だったのか。それじゃあ十八の頃からまったく成長できていないってことだよな。なんてこった」


「こら、変なこと言うんじゃないわよ。千が変わっちゃったらどうするのよ」


「あー、兄やん、そんなんウソやん! 本気にしたらアカンて! 兄やんの言うことはめっちゃ効くねん! みんなも褒めてもろて喜んでんねん! ただなぁ、ウチはほら、褒めてもろたことなんか無いさかいな。そんなんいろいろ兄やんに初めて言うてもろて、それで最初のころは信じられんかったところがあったっちゅう話なだけや。だから恥ずいんはウチの方やねん! ウチかて兄やんにいろいろエエとこあるて言うてもろて、めっちゃ嬉しかってんて! でも、そんなん全部真に受けてたら惚れてまうやろ? だから、そうならんよう流しとっただけやから」


「今も聞き流してるって言うのかしら?」


「今はやな、兄やんが言うてることは全部ホンマやってわかったからな、ぜんぶ真に受けてんで?」


「だそうですよ、千さん。だから私のことももっと褒めてくださっていいですからね? 女の子は褒められると可愛くも美しくも優しくも強くもなれますから」


「千、あなたは変わってはダメよ。成長しようとも思わないで! あなたは歪んでないし、間違っても来なかったわ。そうね、十八歳のころにちょっと変な石に躓(つまづ)いた、というよりは派手に事故ったみたいですけれど。それはわたしたちが矯正するから任せて欲しいわ」


「うーむ。なんだかよくわからんけどきみたちに悪く思われていないんだな? みんなのことは無条件に信じられるからな。変わらないでいいなんていうのは一番簡単なことだからな。そんな楽なことでいいならお安い御用だぞ? まぁ、女の子に肯定されたんなら安心だな! よし、先に進もう」


 十代の女の子の冗談に付いて行けないのはおじさんだからしょうがない! それよりも若い女の子の言うことを真に受けてしまったことの方が問題かもしれん。いや、女性のことは永遠にわからないという方がしっくり来るな。「女は任せろ」なんて言う男の方が俺だって信用できん! 女性を騙すヤツになるより、女性の言うことに一喜一憂して騙される男でいる方がいいじゃないか。人生、いつまでも勉強だなぁ。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


【パーティー名:Renegades(レネゲイズ)】

L:星名千里(ほしなせんり):SEN(Lv17→18)【高度戦術支援地図】Lv.3/5(Exp.1/5)

2:寅吉勝利(とらよしかつとし):タイガー(Lv.65)【剣術】Lv2 (Exp.0/10)

3:岩沙香流(いわさかなれ):クローザー(Lv22)【絶対領域】10/11/Day

4:西宮園子(にしのみやそのこ):マネージャー(Lv19)【瞬間移動(テレポート)】7/11/Day

5:川下葵(かわしたあおい):エース(Lv17)【範囲攻撃魔法:地獄炎(ゲヘナ)】10/11/Day


なろうは不定期で遅れて更新になっています。


最新話(今のところ毎日)更新はカクヨムになります

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