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最弱スキル【地図】が【こうしえん】になった!? - 高度戦術支援地図で最強クランに成り上がれ!  作者: 秋乃せつな


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第37話 可愛くなくする

「お? 赤い魔石やん。ちょい大きいな」


(あおい)さん、ちょっとではないですよ。これ、巨大ですよ。赤の魔石ってこんなに大きいものがあるんですね」


 園子に魔石を手渡されて、うっとりしながら香流が言うと、マジ映画。


「それ、数百万は間違いないわ。千里が一人で獲ってきたのよ」


「は? えっ?!」


 掛井さんが俺の顔を見ながらフリーズした。


「ひとりで初めて行ったダンジョン探索から戻った男にそんなものを目の前に置かれたらどう思う」


 園子が掛井さんに向かって聞いていた。


「そんなの手放しませんよ! 魔石も! 男も!」


「おおう。掛井はんもなかなかのもんやな」


「あっ、いえ、失礼しました~」


「わかります。園子さんもそうしたってことですものね。私たちも人のことは言えませんからね。今さら取り(つくろ)っても仕方ないです」


 そう言って香流(かなれ)が口に手を当てて上品に笑った。あれれ? 俺って捕えられた宇宙人的な感じなのか? まぁ、特殊なスキルでこの()たちを呼び寄せたっていう負い目が俺にはあるからな。逆に『捕まえた』って思っててもらえるなら俺としては助かる。いずれにせよダンジョン探索を成功し続けることこそが最も優先すべき事だ。


「いや、はい。でも、今は、まぁ、その、ね?」


 ここまで歯切れの悪い園子は初めて見る。当事者としては居たたまれないな。フォローしておくか。


「まぁ、冒険者だからね! それぞれ秘めたる思いというか、やりたいこととか目標とか、それよりもそもそも俺たちはみんな自立している社会人だからね、生活が大事だから。俺が偶然でも手に入れたその魔石が役に立つならそれだけで俺はうれしいよ。それが今ここにあるのは間違いなくあの時、園子がそうすべきだって言ってくれたお陰だし。じゃなきゃとっくに手放してる。しかも今は同じパーティーに入ってくれて、命を預け合うパートナーになってくれたんだ。一緒に生活もしていて何の不満もないどころか、感謝しかないよ」


「ぱ、パートナーでい、いっしょにせいかつ、んがもごっ」


 園子にキメられそうになる掛井さん!


「せせせ千里! さん! 一緒に、共同! 共同生活ですよね!」


「ん? あ、あぁ、そう! 言い方がキモかったな! スマン! 掛井さん! 匂わせとかじゃないから! パーティーとしてシェアハウス? 的な? そういう一緒に生活だから! 決して園子とそういう仲になったとかじゃないから!」


「あ、あーはいはい。パーティーでよくあるやつですねぇ。えーえー、そりゃあもう、わたしもこういう仕事してますから? そういうのはよく見聞きしてますので」


「へー。やっぱりそうなんだ。今度ぜひどういう問題が起きがちなのかとか参考までに聞かせ」

「千里! そういうのはホラ! わたしも詳しいから! 私が帰ったら話すから! あんまりね、大きい声じゃ言えないことも、ね!」


「あぁ、そうなんだな。まぁ、言いにくいこととか守秘義務を犯してまで聞く気もないよ。俺もこの歳になって初めての冒険者稼業だからさ、なんでも知りたいし聞きたいだけだから」


「あー、ホントに一緒に暮らしてるんですね~。え? でも知り合ってまだ数日なんですよね? 星名さん、冒険者になったの三日前? 四日前? それなのにもう何人かで一緒なんですか? え? 園子先輩だけ、とか?」

「みんなでって言ってるでしょ?! ふ、二人きりだったらど、同棲じゃないそれわ!」


「あ、そうか。じゃあ」

「そんなことより仕事! 魔石! わたしたちこれから出かけるのよ!」


「あ、はい。そうでした。えーと、星名さん、連絡先の交換お願いしてもいいですか? ちょっと個人的にいろいろとお話を」

「いいから早く仕事!」

「は、はいぃ」


 まぁな。こんな冴えないアラサーのおっさんと一緒に住んでるとか恥ずかしくて知り合いには知られたくなかったよな。掛井さんも大好きな先輩のことが心配なんだよな。


「掛井さん、今度俺たち冒険者(アドベンチャー)マンションに引っ越すんですよ。ちゃんと暮らすので心配しないでくださいね」


「えー! すごーい! 遊びに行ってもいいですか~?」

「ダメよ! 冒険者の住んでいるところは秘匿したいわ。気軽に友達を呼ぶようなことはしない方がいいわ。自宅ならなおさらね」

「ちっ」


 確かに。セキュリティの強化は今さっき俺が注意したばかりだ。油断だな。気を付けよう。


 しげしげと眺めていた葵から魔石を受け取ってリュックの中のマジックバッグに収納した。


 園子はタブレットを操作しながら掛井さんと話しをしている。約束の時間まではまだ三十分ほどあった。


「じゃあ、それを用意させますね。園子先輩、冒険者なの出来るだけ隠したいですよね。発注はしたのでちょっと行って取ってきますね。支部長はもう少ししたら来ると思います~」


 そう言って出て行った掛井さんが五分とせずにコートを持って戻ってきた。


「うん、いいね。薄手で邪魔な時はリュックに入れられるし、その割に丈夫そうだ」


「これ、冒険者の地上での移動用も考慮しているんです。だからデザインにも力入れてて、たぶんこれから主流になる商品だと思います」


「香流はフルアーマーだと夏場とか余計に暑くなってしまいそうだね」


「このアーマー、体温調整機能が付いているので見た目より快適なんですよ」


 ま、マジか! 今も稼働中と言われて耳を近付けたけどまったく作動音がしない。駆動部品は無くて、温冷却の素子の反応で調節するらしい。凄い。寅吉さんのアーマーにも付いてるはずだってさ。


 俺と香流はロングコートタイプ。園子と葵はセミロングをチョイス。俺のはブラックのままなので特殊部隊もしくは殺し屋系。香流は白っぽいものを選んだ。フルアーマーのままよりは威圧感が出た。俺と並んでいる限りは絡まれることも少ないだろう。園子と葵は黒とグレーの暗めのデジタル都市迷彩。葵は可愛くないと不満だったが、そもそもの目的が可愛くなくするためなのでしょうがない。


「今日のみんなの小型リュックなら背負ったままコートを着ても大丈夫そうだな」


「可愛くないなぁ。まぁ、モテる女はしゃーないか」


 ドアがノックされてコートを着ない方が絡まれなさそうな威圧感とオーラたっぷりの歴戦の猛者が現れた。


「お待たせした。お、移動用かい?」


「せやねん。可愛ないねん」


「はっはっは。それは仕方ないな。ダンジョンに入れば脱げるからな。では、行こうか」


 掛井さんにお礼を言って渋谷第一ダンジョンに向かった。前回ここに来た時より一段と桜が綺麗に咲いていた。もうほとんど満開だ。


「キレイ」


 隣を見ると香流がバイザーを上げて桜を見ていた。いや、間違いなくあなたの方がキレイです。


「ふわぁ。やっぱ香流ちゃんは()えるなぁ」


 すかさず園子が写真を撮っていた。香流もすっかり慣れたものでパーティー内ではキレイと言われても素直に喜ぶだけだった。


「せっかくやから装備着たまま桜と写真撮りたいなぁ」


「いいね。ワンドのテストを兼ねて代々木公園のどっちかに軽く潜ろうか。その時に写真も撮ろう」


「ふむ。前回は第一だったから第二に行ってみようか」


「お時間は大丈夫なんですか」


「うむ。今日は時間が取れたんでね。長引けばそのまま半休、すぐに終われば社に戻るつもりなんだ」


 食べ物と飲み物はアルコール含めてマジックバッグに蓄え始めている。武器も入っているので、防具さえ着ていればもういつでもダンジョンに潜れる。


 ダンジョン入口で係のおっさんが俺たちを見るなり「いらっしゃい」と声を掛けてきた。パーティーカードと入場料を支払って領収書を香流に。


 バイザーに色を入れてロビーで待機していると、約束の五分前に男がひとりで入ってきた。




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