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最弱スキル【地図】が【こうしえん】になった!? - 高度戦術支援地図で最強クランに成り上がれ!  作者: 秋乃せつな


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第34話 休日っぽく

 今日は寅吉(とらよし)家と一緒に第二回内見大会だ。待ち合わせは十一時半に当該(とうがい)マンション最寄り駅。昼飯を一緒に食べてから十三時に内見開始の予定。


 昨夜はすき焼きだった。食費を払おうとしたら家賃だと言われた。今回だけということでありがたくいただいた。


 彼女たちも遊びで俺の家にいるわけでもない。自分の家の家賃を払いながら俺の家にいるのだから、俺の家で寝泊まりすることに家賃なんかもらうつもりはないし、俺は葵の保護者みたいなものだから、葵からも何ももらうつもりはないと話した。


 ただ! タダのすき焼きは美味かった! とだけ言っておく。食後はプリントアウトした資料を元に作戦会議という名の宴会に突入した。酔っぱらった園子と香流が葵に(あお)られてセーラー服を着たことはたぶんシラフの時に話題にしたらダメな気がするから無かったこととして一日を開始する。撮影データは鍵を掛けたフォルダーに永久保存だ。


「兄やん、今日はどういう恰好で行けばいいんやろな。冒険者マンションやから装備着て行くとか?」


 しっかりと朝ごはんを食べながら葵が聞いてきた。俺は二日酔いではないがコーヒーとヨーグルトだけで充分だ。葵以外は俺と同意見みたいだった。今日の帰りはコーヒー豆を補充しよう。


「いや、今日はダンジョン行かないし、普段着でいいんじゃないかな。あ、でもマンションに出入りするからサングラスだけは持って行こうか」


「なるほどなー。ほなウチもそうするわ」


 俺はマジックバッグをどうするか悩んでいた。


「園子、マジックバッグを持って歩こうと思うんだけど、どうすればいいかな」


「あー、そうね。不用心だから置いて行くよりは持って行きたいわね。いつものリュックじゃちょっと大きすぎて普段着に合わせるのは不自然ね」


 クローゼットから肩掛け出来る丈夫なコーデュラ生地のトートバッグと斜め掛けできるメッセンジャーバッグを出す。肌身離さないという意味でメッセンジャーバッグを選んでマジックバッグを中に仕込むとちょうど納まった。


「園子、これどう思う?」


「え? その中に入ってるの? いいんじゃない。わからないわ」


「みんな、なにかマジックバッグに入れておきたいものがあったら渡してくれ。重いものも入るから」


 みんなが首を傾げたあとに自分のバッグをまさぐってポイポイいろいろなものを入れ始めた。折りたたみの日傘はわかる。化粧ポーチはまぁまぁわかる。あとは言えない。この()たちは俺に対してはプライバシー的なことや異性的な垣根はもうだいぶ希薄っぽい。それに対してすぐに「ま、いっか」となる自分の心理状態は説明のしようがなかった。俺はそれを『パーティーメンバーだから』という未知の感情に仕分けした。たぶん彼女たちのそれも俺と同じようなものだろう。


 待ち合わせ場所の駅はほんの数駅先だ。集合時間の三十分前に家を出れば充分間に合う。みんなで今後の引っ越し日程や近隣ダンジョンの情報などを話して過ごした。四人いれば話題には事欠かないし、だれも何もしゃべっていない瞬間も気まずさもない。今朝も気付いたら葵が鼻歌を歌っていたけど誰も何も気にしていなかった。園子がサビで一緒に歌い始めてそこでみんな違和感を感じて、ハっとなって笑い合ったぐらい誰もがリラックスしていた。女子校の教師とか部活の顧問とか、女子スポーツチームの監督とかコーチってこんな感じなのかもしれないなと思った。


「まぁ、寅吉家もさ、あの部屋を見てあの値段を聞けばさ、引っ越さない理由はないよな」


 香流も同意見のようだ。


「正直、仮に寅吉さんが仕事を辞められないとしても、このままパーティーにいていただけて、月に一、二回お休みの日だけお付き合いいただければ私たちにはありがたい存在ですね」


「うん、まさにその通りなんだよね。第一階層で二回連続でお宝発見というのがどこまで必然で、どこまで偶然なのかわからないけどさ。今の段階としては偶然だったと思ってた方がいいとは思うんだ。その上で、効率良くダンジョンを巡って似たようなお宝を発見、獲得すること。そして、簡単に倒せるボスがいるダンジョンを巡ってスキルの使用回数を増やし、経験値を稼ぐこと。この二本柱でパーティー運営をしようと思う。みんなのスキル発動回数が増えればとてつもない相乗効果を生んでいく気がするんだ」


「そうなん? それやったらええんやけどな」


「葵は自分に自信が持てないでいるよな。みんなそれぞれの理由で過去にダンジョンを諦めている。それはそのままでいいよ。俺は葵のその気持ちはとても好ましく思う。少なくとも「もっと深い階層に潜って稼ごうぜ」って言う人間なんかよりはな。俺たち、まだ一時間しか冒険していないパーティーだから。調子に乗るのは早過ぎる。それでも金が手に入って、おかげで時間が出来た。勝ちパターン探そうぜ」


『ええ、そうですね。それではまた明日。失礼致します』


 下でコソコソ話している間、園子がロフトで電話をしていた。


「そろそろ時間ね。行きましょう。遅刻はしたくないわ」


 園子がはしごを降りてきた。元上司って言えるのかな。遅刻はマズイだろう。相手は元陸自の兵隊だ。ぜったい遅刻して来ないというか、早めに来そうだしね。


 駅に向かう道すがら園子から電話の結果報告があった。


「刀匠、というか武器防具職人の小佐原(おさわら)氏とアポイントメントを取ったわ。明日の午後十二時に渋谷第一ダンジョンのロビーよ。スキル鑑定の合間でおそらく人はそんなにいないはずだわ。誰もいなければホールで、人がいそうだったら全員でボス部屋に入って誰も入ってこれないようにして合成作業をするそうよ。杖と魔石の合成だけだから数分で終わるって言ってたわ。魔石の大きさは難易度に無関係って言ってたし、言動に矛盾も無いので大丈夫だと思うの」


「園子、電話してくれてありがとう。なるほどね。向こうは独りで来るんだろうか」


「ええ、それも確認したわ。独りだそうよ」


「冒険者機構と繋がりがある人だし、こっちには【こうしえん】があるから不意打ちを受けることも無いだろう。あとで念のために寅吉さんの都合も聞いてみよう。みんなも寅吉さんも正式なパーティーメンバーだっていうことを忘れないようにね」


 最後のは自分に向かって言ったようなものだ。すごい人だけど、だからと言ってこっちが委縮するのは絶対に違うからだ。


「あ、ところで合成費用は結局いくらになってるんだっけ」


「五万よ」


「特殊技能な割に安いよね?」


「そうね、でもまあ数分の作業で五万円もらえるならやらないよりはマシなんじゃない?」


 確かに。一日の仕事としては充分ではある。ただまあ、フリーランスとしてはそういう考えはよろしくないけど。発注側としては嬉しいね。


「ほな五万、今、香流ちゃんに渡しとこか」


「いや、それなんだがな。みんなの意見が聞きたいんだ。ダンジョンボス攻略に直接関わる装備はパーティー資金から出した方が良くないかと思ったんだよ」


「どこまでをその範疇と考えるか難しいわね。寅吉さんの刀は個人装備でしょ? でもそうね、今回の魔杖に関してはわたしもパーティー資金でいい気がするわ。そもそも魔石は千里の個人所有の物だしね」


「ああ、そうか。それは忘れてたな」


「うふふふ。考えてたのは葵ちゃんの個人負担金の事だけなんですね。千里さんらしいこと」


 そんなに可笑しいことなのか香流にはしばらく笑われた。


「俺たちのスキルには金が掛からないからなぁ。葵が他の場面でもスキルを使って、それに装備代が掛かるならそうは思わなかったと思うんだけどさ。メイン目標のボス戦の時にしか使わない装備って考えるなら、香流がこの先に必要になるかもしれないマジックポーションとかもパーティー資金じゃないとおかしくなるだろうし。葵の杖もそれと同じだと思ったんだ」


「うん。その通りね」


「はい。私もそれでいいと思います」


「いや、ウチが使うもんなんやからウチが出したらそれでええやん」


「というわけで寅吉さんに聞くまでもなく、賛成過半数の三票獲得でパーティー資金から支出に決定しました」


「はあ? なんやようわからんわ」


「葵ちゃん、その五万円一度預けて下さい。はい、今、杖の代金に五万円をプラスで返金作業完了しました。この預かった現金五万円を今日の支払いに使わせてもらいますね」


「うーん。みんながそう言うんやったらきっとそれが合ってるんやろな。ほな、そうさせてもらうで? あとで返せ言われてももう返さへんからな」


 照れ隠しなのかおどけてそんな事を言う我が家の末っ子だった。


「それで園子、普通に職人に合成を頼んだらいくらぐらいするの?」


「そうね。今回は最高クラスの素材同士で合計一千万(いっせんまん)円オーバーだから。その一割から二割が相場ね」


「へー、そうなんだね」


 小佐原(おさわら)氏への同情を禁じ得ない。


「ところでみんなの服は昨日買ったやつだよね? みんな春らしくて可愛いね。おじさんは一緒に歩くのに気後れしかないよ」


「いやー、兄やん、素直か」




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