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最弱スキル【地図】が【こうしえん】になった!? - 高度戦術支援地図で最強クランに成り上がれ!  作者: 秋乃せつな


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115/122

第115話 別荘賛歌

「え? ここ、どこっすか? 何階層っすか?」


 さすがに何も言わないのはかわいそうなのですぐにネタばらし。


「ここは第八階層の隠し安地だよ。【こうしえん】で見つけたんだ。この泉を中心にぐるりと密林に囲まれていてね、誰も入って来られないんだ。密林の外には音とかも一切漏れ出ない隔離された空間なんだよ。今のところ【こうしえん】と連動した【瞬間移動】しか入る方法が無いんだ」


「なななんかテントとかあるし?」


「全部俺たちが持ち込んだんだ。あそこは小佐原(おさわら)さん用のテントで、簡易的な鍛冶場にもなってる。合成作業なんかも出来るから便利なんだ」


「バーベキューコンロがあるってことは」


「ここ、安地やさかいな。火ぃが使えんねん! ステーキとか鉄板焼きとかめっちゃ美味しいで」


「あの建物はなんですか?」


「あれは水洗トイレとお風呂ね。あっちのが男子用よ。早くここの夜の安全性を確認したいわね。そうすれば寝泊まりも出来るわ」


「そうだな。それも喫緊(きっきん)の課題だな」


「凄いっす! 完全にプライベート空間じゃないっすか!」


「うふふふ。そうですね。私たちここを『別荘』と呼んでいます」


「ああー! あれ! あれ!」


 咲耶(サク)ちゃんが突然大声を上げて対岸を指差した。モンスターか?! いや、【地図(マップ)】にはそんな反応は無いぞ?!


「あれ! 薬草じゃないっすか!」


「薬草? ポーションの原料ってやつ?」


「そうっす! 森林とか草原エリアの川原とか池の周りとかの水辺でたまーに見つかるやつっす! なんであんなに沢山生えてるんすか!」


 残念ながら俺たちに薬草の知識は無い。園子も遠くに生えているし、ただの雑草だと思ってたらしい。


 あらためて【地図】で検索を掛けると【薬草】の表示が出てきた。【こうしえん】に対する俺の命じ方が悪いらしい。くそ、まるで出来の悪いAIを相手にしているみたいだ。


 さっそくみんなで近付いてみる。


「これが薬草なん? ただの葉っぱやん」


「うおー! わっさわさ生えてるっすー!」


「なんだろうな? ヨモギ?」


「そうね。薬草ってたしかにこんな感じね。薬師が調薬で使うし、ポーションなんて魔法の薬ですからね。常設依頼の採取品のトップ項目だけど。これ、薬草って言われてわかる?」


「咲耶(サク)ちゃん、ダンジョンの中ってこれに似た薬草じゃない草もあるの?」


「ありますよ。そっちは本当にただの草っすけど」


「とりあえずこれ写真撮っておこう。今度その雑草を見つけた時に撮影して違いを覚えないとな」


「写真あるっすよ。えーと、これっす」


 咲耶(サク)ちゃんが依頼のために冒険者に配る用の写真を見せてくれたが、目の前にある薬草との違いがわからない!


「これはむずいな。ダメだ! まったく違いがわからん」


「おーん? どれどれ。たしかになんかちゃうな」


「葵、あんた本当にわかってるの?」


 咲耶(サク)ちゃんが葵にスマホにある薬草と雑草の写真を見せたらそれぞれを完璧に言い当てた。


「凄いな葵。なんでわかるんだ?」


「んー、なんでやろ?」


「うふふふ。葉の先端の形が少し違いますね。あとは茎の太さですかね」


「さすが香流様! え? ていうか説明してないんすけど? 写真見比べるだけでわかっちゃうんすか? やっぱり天才!」


「いえいえ、私は葵さんが写真を見比べている時の視線でわかっただけですから、本当に凄いのは葵さんですよ」


「香流が今なにを言ったのかはよくわからんけど確かにそうだな。葵が違いを一回見ただけでわかったのは凄いな」


「せやろ? まあ、何が違(ちゃ)うかの説明はようせんけどな!」


「違いが説明出来ない……。こっちも香流と同じで何言ってるかわからんな」


「薬草を採取する時は引っこ抜いたらダメっす。必要なのは葉っぱの部分すから、出来るだけ茎の上の方で刈るっす。そしたらまた生えてくるっす」


「ん? 咲耶(サク)ちゃん、これ薬草とちゃうの混じってんで」


「え? あ! ホントだ! ここ、薬草じゃないのも生えてるじゃないっすか! ちょっと面倒っすね」


「葵、ちゃんとわかってるのね。説明は出来ないのに」


 いったいどういう類(たぐい)の才能なのかはわからないけどなんか凄い。


「あ、千里、マジックバッグ貸してくれる」


「お、そうか、これに入れておけば鮮度も落ちないもんな」


「え? ああ、それもそうね。咲耶、薬草入れてちょうだい。ありがと。あと、さっきの雑草もちょうだい」


 園子がマジックバッグに両方入れてからバッグに手を入れた。


「なるほどねえ。千里も手を入れてみて」


 園子が広げるマジックバッグに手を突っ込む。


「雑草を取ってみて」


 バッグの中のものは全部わかる。雑草はさっき覚えたばかりだ。迷いなく掴み取る。


「雑草なんかいらないのになにやってんだ?」


 薬草に似た雑草を捨てる。


「そうなのよ。私も千里も一応、薬草と雑草の違いは分かってるのよね。だからマジックバッグに手を入れれば雑草を取り出せるわ」


 今、何をやらされたか唐突に理解した。


「おお?! そういうことか! 咲耶(サク)ちゃん、選別して狩らなくても、もう大丈夫だよ。その辺のやつを丸ごと適当に刈ってマジックバッグに入れて雑草だけ取り出して処分すればいいんだ! 園子もさすがだな!」


「おおー! それは便利っすね! あたしは一応、薬草刈り過ぎたせいで特殊技能(アーツ)が生えて薬草が見ただけでわかるんすけどね。密生してると選別するの大変だから、とりあえずまとめて刈ってあとで仕分けしてたっす」


 スキル特性じゃなくて特殊技能(アーツ)ってそんなところにも出来るのか。というか今までどれだけ薬草を刈ったんだろう。


「んんっ?! この池っていうか泉って」


 咲耶(サク)ちゃんが今度は泉を振り返ってきょろきょろしだした。


「千里さん、この水ってどこから来てるかわかりますか?」


「ああ、それならあっちのテントの前あたりとかの水の底から湧いてるのが見えるよ。他にも湧き出てるんじゃないかな? ほら、あそこも波紋が出来てるでしょ」


「マジっすか。でも流れ出て行ってないっすね」


「そうなんだよね。川が無いのは不思議だけどね。まぁ、ここってダンジョンだからそういうものなのかなって」


「そもそも、地下から直接湧き出てる時点でここって泉源じゃないっすかぁ」


「せんげんってなに?」


「泉源ってのは水とか温泉が地中から出て来る最初の場所っていう意味だな。そこから出た水やお湯を源泉って言うんだ」


「おー、源泉な。なるほどな。そういう意味やったんか」


「いやいやいやいや、国語の授業やってる場合じゃないっすよ! ダンジョンの泉源からの直接の水っすよ! 調薬の要じゃないっすか! うわ! ってことはなんすか? ここの薬草って泉源の源泉で育ってんじゃないっすか?! それを泉源から出たばっかりの源泉で調薬出来るんすか?!」


「兄やん、今のはどういう意味になんのん?」


「うーむ。さすがに何が何やらわからん」


 だが、咲耶(サク)ちゃんが興奮状態なのは間違いない。そういえば小佐原(おさわら)さんも鍛冶で水に入れて締めている時に何か変だって言ってたな。


「園子、そういえば園子の髪の指通りが良くなったのってここで風呂に入ったあとからじゃないか? 化粧のノリがいいとかも言ってなかったっけ」


「うっ。よく覚えてるわねそんなの。でも、確かに言われてみればそうかも」


「あらあら。ひょっとしてそういう効果もあるんですか?」


「泉源で風呂……いったいなにやってくれちゃってんすか」


「まぁ、そう言うてもなぁ、これ、使い放題やからな」


「それはそうっすけどね。これ、飲みました?」


「いや、さすがに得体が知れないから飲んではいないんだけどね、シャワーとか入っちゃってるし、その時に口に入ってるよな。なんともないけど」


「これ、飲めますから。まぁ、念のために煮沸ぐらいしてもいいっすけど、やんなくても大丈夫っす。体調良くなるっすよ」


「そうなの? じゃあ、あとでコーヒー淹れるよ」


「ううう。泉源コーヒー」


 採取はコーヒーを淹れてる間とかでも出来るので朝練を開始したのだが、咲耶(サク)ちゃんが後ろ髪を引かれまくっていた。


 ドカカカカカッ!


「いやー、これっぽっちも歯が立たないな」


「いっそ清々しいぐらいやわ」


「レベル差もあるから実力の差が地上の比じゃないわね。そもそも人間の動きじゃないでしょあれは」


 カカカカカカカッ!


「もう棒の先っぽが見えへんやん」


 香流と咲耶(サク)ちゃんが打ち合ってるけど、もうわけがわからない。


「香流(かなれ)は俺たちとそんなにレベル変わらないのになぁ」


「そうね。なんで防げるのかしら?」


 カカカカカン、カッカッ!


「ぷぅ。こんなところでしょうか! 香流(かなれ)様、さすがですね!」


「いえいえ、咲耶さんが防御しやすいように打ち込んでいただけているからですから」


「なぁなぁ、なんで香流(かなれ)ちゃんはそんなに上手いこと合わせられんのん? ウチまったく見えへんで?」


「あー、葵ちゃん、それはっすね、身体強化がうまく回ってないっすね。その訓練もした方がよさそうっすね」


 咲耶(サク)ちゃん曰く、身体強化とは筋肉による運動能力の強化の事だけではないということだった。視力そのものの強化も出来るから、動体視力も上がるということだった。


「訓練道具の中にいろいろあるからあとで出しますね。アメリカンクラッカーってわかります?」


「棒の先にボールがふたつ付いててカンカンやる子供のおもちゃだよね」


「そうっす。あれをやってボールの動きを目で追うんすよ。まぁ、なんでもいいんすけど、そういう速い動きのものを目で追う訓練をやると動体視力が付いてくるんす。身体強化自体はレベルアップでもう準備出来てるはずなんすよ。だけど、身体というか意識がそれの使い方をわかってないから使えてないんすよ」


「なるほど。潜在能力的にはもう持ってるのか。それは使わないのはもったいないね。だけど、香流はもうそれが使えてるってことかい?」


「そうなんすよ! だから天才なんす!」


「そういうことか。センスの問題だな。これは頼もしいね」


「おー、でも、訓練したらそこに近付けるんやな」


「あら。葵、たまには良いこと言うじゃない。まだ始まったばかりですものね。それに、こんなに良い訓練場所を持ってる冒険者もそういないものね。燃えるわね」


 具体的に強くなれる方法があることがわかって園子の何かに火が着いたみたいだ。


「はっ!? 今から聖水シャワーっすね!?」


「聖水ってそんな大げさな。でも、女子風呂の方はお湯を溜めるようにしておいたからシャワーだけじゃなくて風呂も入れるよ」


「うおおお! 香流様! 早く! 行きましょう!」


 女子にはゆっくり浸かってもらってる間にサクっとシャワーを浴びて、のんびりとコーヒーを淹れた。


 咲耶(サク)ちゃんは薬草採取のことはすっかり忘れて聖水風呂を楽しんだようだ。


「これは美味しいね。やっぱり水が違うと味が違うんだなぁ」


「兄やん、これやったら牛乳なくても飲めるで」


「へぇ、葵がブラックのまま飲めるんだ。でもそれ、カフェオレ用に少し濃いめだから牛乳入れてもいいかもよ」


「あ、ホンマや! めっちゃ美味いでこれ!」


「ヤバいわ。ちょっと料理してみたくなってきちゃった」


「うふふふ。お米炊きたいですね」


「園子も香流も料理が上手だからなぁ。将来の旦那さんがうらやましいな! 今は俺がその恩恵に預かっててなんだか申し訳ないよ。葵もふたりをよく手伝ってるからすぐに料理上手になりそうだしなぁ」


「か、香流様の手料理っすか! 千里さん! なんて贅沢な!」


「わははは。いいだろ! 俺の孤独な独身時代の食生活とのあまりのギャップにまたいつかあの時代が来るのかと考えると恐怖しかないよ」


「そ、そういう場合はずっと誰かが側にいて作り続ければいいだけの話じゃないかしらね?」

「それはなかなか有意義な提案ですわね。うふふふ。嫌いじゃないですよ?」


 葵もそういうことをやる機会がなかっただけで、やらせてみると手先は器用だし、味の違いも本当に敏感に感じ取ることが出来ている。だからつい、おもしろくなっていろいろな店に連れて行きたくなる。


 園子なんかは、行きたいと思っていたけど行けなかった店に行けるようになって、とてもうれしそうだ。お陰で俺もその恩恵に預かっていろいろ楽しめている。そこに関しては俺も葵と同じような立場だから何も偉そうなことは言えない。


 それに、葵を連れて行くと店の料理人がみんなおもしろがっていろいろ教えてくれるし、食わせてくれる。素直に美味いものを美味いと言い、しっかり味の違いがわかるのだから、プロの方が葵のことをおもしろがるのだ。


 第一印象の『ヤンキーギャル』が覆る瞬間を何度も目の当たりにした。「人は見かけによらねえやな」と呟いて、店を出る時に葵に深々と頭を下げた寿司屋の大将の姿は忘れられない。その大将からは時々、今は何が旬だとか連絡が来る。常連の寿司屋が出来たのは完全に葵のお陰だ。というか最近では葵は大将と直接連絡を取っていて、夏にヒラメ釣りに行くぞと誘われているらしい。葵は大将のことを「じいちゃん」と言っているが、向こうもまんざらじゃなさそうなので放置だ。


「さて、そろそろ十時だな。天気も良くて戦争日和じゃないか?」


「ぎゃはははは。天気ええ方が戦争に向いてんのん?」


「配送するなら天気がいい方がいいだろ?」


「問屋から直接の買い付けですもんね。投資額の十倍以上になるんですもの。こんな美味しい話はないじゃない。せいぜいあの女の懐を軽くしてやらないとね」

「まぁ、なんやわからんけども、あのおばはんが悔しがるんやったらおもろそうやからなぁ。兄やんで遊んだんやったら今度はウチらが遊んだらんとなぁ」

「うふふふ。女性として良い思いをされたのにそれを自らお捨てになったことをせいぜい後悔していただきましょう。そしてそれが他の女のものになったことを見せつけるのです。本来なら最後の部分まで見せつけて差し上げたいものですが、それは叶いそうもありませんものね。であれば今の支えである金銭を奪い取るぐらいしかこの胸の情動を抑え切れませんわ」

「ああっ、心のままに振るまわれる、そんな野生を感じる香流様も素敵っす」


 あの四人、会話が成立しているようには見えないけど意思統一は出来ているみたいだ。戦いに赴くに当たっては同性にしかわからない部分もあるのだろう。というか、元子って一回嫌われると同性に徹底的に嫌われるタイプだよな。その逆でカリスマにやられて信者になる者の方が多いけど。嫌った人も反対勢力になることはなくて、ただ距離を置くだけなんだよな。そう言う意味で今まで敵がいなかったんだろう。


 だが、元子。俺はもう知ってしまったんだ。なぜダンジョンで再会してしまったんだ。お前を知ってる俺にしかできないこと。お前を知ってしまった俺がやらなければならないこと。人として、女としての幸せだけでは満足できなかったんだな。もう少し待ってろ。今、会いに行くぞ。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 


応援、ブクマ、星記入、感想、ありがとうございます。

励みになります。

それだけが執筆の燃料です!


先週は夜更新で新規獲得を目指しましたが目立った効果はありませんでしたー


平日朝、土日は昼更新に戻します。

余裕があれば日曜日は複数更新もあるかもです。

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