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最弱スキル【地図】が【こうしえん】になった!? - 高度戦術支援地図で最強クランに成り上がれ!  作者: 秋乃せつな


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第114話 わたくしエリートなもので

 昨日は大変だった。買い出しが! しかし、ウチには優秀なブレーンがいる。園子が地上に戻った車の中で買い物リストから効率の良い買い物ルートと、さらに安く仕入れられる店までを網羅。巨額のパーティー資金に物を言わせて大量購入!


 マジックバッグに投入する際は手提げ付きのビニール袋に入れた方が取り出しやすいものもあるということで、大量の買い物をする者、車の中で仕込みをする者などみんなで手分けして作業した。車両(ハイエース)のキャパシティを遥かに超える物量が小さなバッグひとつに吸い込まれる様はとてもシュールだった。


「なぁ、兄やん。これって喧嘩の準備なんやろ? なんかイメージとちゃうな」


「うん。そうだね。でもこれは喧嘩っていうより戦争だと思うけどね」


「おーん? そっちの方がもっとイメージ出来へんけどな」


 最後の店での仕入れを終えてマンションに帰る車中で一番若い葵が都会の夜景を遠い目で眺めながらそんなことを呟いた。単純作業の繰り返しにやられていた。


 うーむ。これを続けていると自分が何をしているのか見失ってしまうかもしれなくて危険だな。


「まぁ、しばらくはこれが続くかもしれないな。今日のところはゆっくり風呂ににでも入ってリセットしてくれ」


「せやなー。ほな、風呂上りのマッサージ、しっかり頼むで」


 くっ! こいつ、肩こりなんかしてないとか言ってやがったくせに! 先日のキャプ旅行以来マッサージに目覚めてしまったか。しかし、この戦術を考案したのは俺だ。部下を気持ちよく働かせるマネジメントも管理職の務めだ。しょうがないなぁ。


「うん。俺はそれぐらいしか役に立たないからなぁ。それに葵は肩こり酷いから毎晩やった方がいいし、任せな。じゃあ、葵が先に風呂入って、マッサージ中に園子と香流(かなれ)に風呂入ってもらうか」


「あら? わたしもマッサージお願いしたいから順番はこっちで決めるわよ」


「え? そりゃそうか。みんな疲れてるよな。地上じゃ身体強化使えてないんだもんな。悪い悪い、そんなことも気付いてやれてなかったよ」


「うふふふ。千里さんのマッサージは中毒性がありますからね。もうそれがないと気持ちよく寝られませんからよろしくお願いしますね」


「千里さんへのマッサージはあたしがばっちりキメるんで任せてくださいね!」


「あー、咲耶(サク)ちゃんのスポーツマッサージは効くからね。俺も葵と同じで普段、肩こりとか気にしたことないけど、咲耶(サク)ちゃんにマッサージされると気持ちいいからよく寝れるんだよね」


「兄やん! ウチも咲耶ちゃんに教えてもろたから今夜から参加すんで!」


「そうか。前は葵に腰に乗ってもらったりとかしてたよなー。どれだけ上達したか腕前拝見だな!」


 いや、女性とはいえマッサージってものは大変体力を使うんだよね。


 そんなわけで、帰宅後の俺はみんなの洗濯などしつつ女性陣のマッサージを終えてから風呂に入って、上がったら待ち構えていたみんなに自分の部屋のベッドに寝かされて、寄ってたかってマッサージされた。なにこれ?


 何かの実験動物にされた気分だったが、おそらくこれは傍(はた)から見たらハーレム状態だと思うので黙ってた。そして知らない間に眠りに落ちて、今朝、ゆり起こされるまで寝むりこけた。


「千里、起きて。朝よ」


「え? あれ?! 園子! なななななんで俺のベッドで腕枕!?」


「え、え、え、そんな驚く?」


 そりゃ驚くだろ! ここは確かに俺のベッドだ! いったい昨夜なにが!?


「いや、あれ? 昨夜の記憶が無いんだが?! 俺、昨日の夜、酒とか飲んでないよな?!」


「飲んでないわよ? え? マッサージしてたら寝ちゃったからそのままにしてたのよ? 目覚まし付けないで寝たでしょ? だから起こしに来たの。ほら、千里はいつでも話を聞くからってカギ掛けてないでしょ? わたしもいつでもいいように掛けてないけど」


 思い出してきた。そうだ、マッサージされて寝落ちしたのか。


「あー、そうだ。寝落ちしたのか。あー、びっくりした。園子が隣で寝てるもんだからちょっと、一瞬、勘違いしそうになっただけだ。オーケー、目が覚めたよ、でもなぜ起こしに来て腕枕に……」


 その時、勢い良くドアが開いて勢い良く勢いのある娘(こ)が飛び込んで来た。


「兄やん! まだかいな! あっ!」


 そして勢い良く出て行った。


「なんだあいつ。どうしたんだ?」


「葵ー!」


 そしてもうひとり勢い良く出て行った。うちは朝から賑やかだ。ひとりの部屋で深夜パソコンの画面を睨みながらマイクに向かってしゃべっていた頃の生活が遠い昔のことのようだ。


 顔を洗うのに階下に降りるとなにやら女子チームで会議をしていたのでそっと通り過ぎた。着替えて再びリビングに行くとちょうど朝食を食べるタイミングだった。


「みんなおはよう。今日の朝練はあっちでいいんだよね?」


「はい。咲耶さんには今朝はダンジョンで稽古をとお願いしていますので」


「中庭は昨日いろいろ並べてたからちょい狭いかもっすけどね」


 なるほど、まだ別荘の件は話していないんだな。ちょっとしたサプライズか。付き合おう。


「なんか今朝は園子が大人しい気がするけど。さっきは体調悪いようには見えなかったけど大丈夫か?」


「え? ええ、もちろん、問題ないわよ」


 ちょっと顔が赤いように見える。


「園子ちゃんはちょっと調子に乗ってしもただけやからなぁ。じゃんけん勝ったんがうれしすぎたみたいやなぁ」


 ほう? なんの遊びだろう。


「くっ! ん? でも待ってよ? これ、よく考えたら葵がいつもやってることと何が違うのよ? ちょっと葵! 騙されないわよ! あなたがやってわたしがダメな理由は無いわよね! 危ないわね。もう少しでNG行為認定されるところだったわ。まったく、小娘だと思ってたらあんたもなかなかやるわよね」


「あちゃー。バレてもうた。勢いで押し切れる思たんやけどなぁ」


「うふふふ。そこまではもうグレーではなくホワイト判定ということですね。では次は未経験の私の番ですね」


「おー、なるほどなるほど。香流様はそれがご所望なんすね。じゃあ、香流様の次はあたしっすね?」


「咲耶さんには順番は回って来ないと個別にきちんとお話した方がよろしかったでしょうか?」


「咲耶、あんたもいい度胸してるわよね。それとも興味本位で修羅の道に飛び込む命知らずなのかしら」


「咲耶ちゃん、こればっかりは今からはもう無理やで。もう大渋滞してエライこっちゃねん」


「うふふふ」


「ジョーダン! ジョーダンですから! マジで! あたしは一途なのがいいっすから!」


「大丈夫なのか? なんか揉めてんの? まぁ、何か順番待ちしてるならみんな仲良く交代でね?」


「千里がそれでいいならわたしもそれでぜんぜんいいのよ?」

「うふふふ。順番でいったら私が二番目ですね」

「スマホ先見ててくれたらウチが一番のはずやってんけどなぁ。ほんでもって実際の時間もそんな違わへんねんけどなー! けど、それでエエんやったらもうそうすんで? マジで」

「今日のベーコンエッグの黄身の火の通り方完璧だな! うっま! ん? どした?」


 視線が痛い。朝からはしゃぎ過ぎたか。あ、これはアレだ!


「あーそうか! わかったぞ! 昨夜のマッサージが効いてるんだ。すごく身体が軽いよ。みんなありがとう」


「あー、うん。そうね。就寝前のマッサージね。じゃー、なにかそのうち間違いが起きるかもだから生活のルーティンに組み込むわね」

「そうですわね。それではさっそく今夜から。順番は先ほどの通りで」

「おー、なるほど。腕の見せ所やな」

「うわぁい。あたしの教えられることもう無いかもー」


 ◇


「おはようございますぅ!」


 ハイエースのスライドドアが開くなり元気に雅代が入ってきた。


「おはよう。遅くなってごめんね」


「いえいえ、これで本格的に動けます!」


 雅代の契約書にサインを入れるために車まで書類を持って来てもらった。


「はい、じゃあこれで契約完了。オークションは任せるよ。それからウチの傘下になった竜騎兵(ドラグーンズ)のひとたちのアイテムも一緒にお願いすることになりそうなんだ。仕事はだいぶ増えると思うけどさ、収入になるから頑張ってね」


「は? なんて?」


「あれ? 園子? 言ってないの?」


「あ! ごめんなさい! 昨夜(ゆうべ)伝えようとしたけどマッサージに夢中で忘れてたわ」


「え、そうなの? というわけでさ、咲耶(サク)ちゃんもRenegades(レネゲイズ)入りして、同時に竜騎兵(ドラグーンズ)が丸ごとウチ預かりになったんだよ。はい、これがその書類ね。だからRenegades(レネゲイズ)の竜騎兵(ドラグーンズ)部隊っていうことだね。で、第二十六階層の竜騎兵(ドラグーンズ)の店をRenegades(レネゲイズ)が譲り受けてウチの店になったんだよ。そこでアイテムの買取を始めるんだ。竜騎兵(ドラグーンズ)だけじゃなくて、持ち込みもね。ギルドでの下取り価格を元に買い取るから、鑑定が必要なものは鑑定額に応じて、それ以外はその日の地下ギルドの査定表に応じて支払う。値段の確定したものはウチが買い取った時点で好きにできるから、オークションの方が値段が上がりそうなら好きにしていいよ。下取りの手数料は二割で雅代の五パーセントの取り分はそのままでいいから」


「きた。キタキタキタキタキタキーターッ! あー、もうわたしRenegades(レネゲイズ)専属でやってけるじゃないですかぁ! っていうか絶対これひとりじゃキャパオーバー!」


「雅代、あんたはもうRenegades(レネゲイズ)の金庫を預かってる身なのよ。ビビってんじゃないわよ? これが星名千里よ! しっかりなさい! このまま一気にてっぺんまで成り上がるのよ! 振り落とされるんじゃないわよ!」


 今、一瞬、園子から普段、俺たちに見せていないものが見えかけた気がしたのは気のせいだろうか?


「兄やん、なんかウチ、あのままこっち来(こ)んと大阪おった時の自分が見えた気がしてんけど、何かの見間違いやろか?」


 敏感に何かを察して怯える葵の頭を撫でながら俺もそれの正体がわからず混乱を覚えるのだった。


「うーむ、なんだろうな? でもなにかとても『らしい』ものだった気もする。不快ではないなぁ」


「うふふふ。活(い)き活(い)きとしている園子さんは素敵ですね。私も見習わなくてなりませんね。内に秘めたるが大和撫子(やまとなでしこ)ではあるでしょうが、いけませんね。私の中に巣食うモノが撫子(なでしこ)ではなく益荒男(ますらお)であることが運命の出会いで解き放たれてしまいました。もう止められません、止まりません。なんという解放感でしょう。早く、早くそこに辿り着かせてくださいませ」


「香流様、お気を確かに! あたしがいますから大丈夫っすよ!」


 香流が小声で何か言っているがよく聞き取れない。みんなこれから起きる争いを前に高揚している。これを俺がコントロールしなければならない。もう少し、ボス戦で経験を稼ぎたいところだ。隙を見て下層の攻略を進めようか。


 寅吉さんは昨日も下に泊まり込んだ。真由美さんに電話連絡したところ、無事なら問題ない、しばらく入り浸(びた)るんでしょう。とのことだった。とりあえず大丈夫そうだが、今夜は連れて帰ろうと決めた。


「雅代、仕事がパンクしないようにコントロールしてくれ。人手が足りなければ真由美さんにも声掛けてみるし。こっちの仕事が増えると香流はそっちの仕事に手が回らなくなるかもしれない。竜騎兵(ドラグーンズ)の経理状態がけっこういい加減という話もあるしな。帳簿が手に入ったところでまた打ち合わせしよう」


「うーん、いいですね~。クラン経営っぽくなってきたー! これこれー! その吸収しちゃった話し自体はまだナイショですよね?」


「うん。Titans(タイタンズ)が代々木第一ダンジョンで問題を起こしている話はどこまで知ってる?」


「あー、ついに始めたかってことで注視はしてますよぉ? 内緒ですけど藤間元子(ふじまもとこ)とクランボスの長科茂人(ながしなしげと)はギルドでも要監視対象に指名されました。それと、先日の盗撮騒ぎの全権移譲決議ですけど、元ギルド長が発動してこっちが負けるわけないですからね。即日で受理されて完全勝訴で決着です。それでですね~、彼らのお金の流れを追ったんですけど、どうもTitans(タイタンズ)がチラつくんですよぉ。肝心なところで途切れるので黒に近いグレーです。でも、法を犯しているってわけじゃないですからねー。歩荷(ぼっか)の件だって完全に任意ですから。冒険者は自己責任ですぅ。レベルが低いから下層に行ってはいけませんなんてルールもありませんし。まだギルドの出る幕じゃないですぅ~」


「ギルド内にもTitans(タイタンズ)派閥はいるだろ? 咲耶(サク)ちゃん、竜騎兵(ドラグーンズ)はどうなんだ?」


「それはっすね、元隊員の元冒険者っていう職員はいるんすよ。そういうところとは流れはあるんすけど、特定の職員とかはいないっすね」


 お金に無頓着だとそういうところで綻(ほころ)びが出るな。


「雅代、いろいろ気を付けろ。ギルドと自宅の往復とかもな」


「あー、そうですね~。とりあえずギルドに来る時はござるを使うから大丈夫ですぅ」


 なるほど、アイテムの受け渡しがあるからちょうど都合がいいな。小佐原(おさわら)さんにはボディガードもお願いしよう。


「そうか。小佐原さんのことは徹底しろよ? あと、竜騎兵(ドラグーンズ)関係者ともコネクションを築いてしっかり味方に付けるんだ。それから、雅代がいない間って俺たちが持ち込むアイテムをギルドに預けておけるかな?」


「ぜんぜん問題ないですよぉ。私が専属受付嬢ですからねぇ~。鑑定が必要ならホールまで持ってきてもらって、誰か職員呼んで出してもらってもいいですし~」


「なるほど。よくわかったよ。雅代がギルドに籍があって良かったよ」


「ふっふっふっふ。外部嘱託(しょくたく)のエリートフリーエージェントへの道も遠くはないですよぉ~」


 それがなんなのかまったくわからないが何か凄そうだ。



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