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雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!  作者: 三沢ケイ


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6.伝説の諜報員、再び(4)



『当然受けないと思っていたのに、意外だわ。どういう風の吹き回し?』

「余計なことを聞くんじゃねえ。それより、依頼を受ける代わりに情報をくれ」

『どんな情報?』

「11年前に、俺の住んでいる地域の雪山に、10歳くらいの少女が捨てられた。おそらく貴族絡みで、毒物混入事件が絡んでいる。その事件について、調べられるか?」

『フォレストに調べられない情報なんてないわ』


 狐面の女は笑う。


『依頼費用は報酬から相殺でいいかしら?』

「ああ、頼む」


 ガレスは頷く。ガレスの報酬額はフォレストでも最高レベルだ。多少相殺されたところで、痛くも痒くもない。


『じゃあ、先方にはあなたが受けると伝えていい?』

「ああ。一ケ月は動けねえとも伝えてくれ」

『一ケ月?』

「愛娘が里帰り中だ。家族の時間があるんでな」

『伐採がそんなことをいう日が来るなんて……。大地震の前兆かしら』

「うるせえ。わかったら、さっさと依頼情報を送れ」

『はいはい、わかりましたよ』


 使い魔の上の画面が消え、バサバサと飛び去って行く。

 

「久しぶりの活動だな。さて、どうやって攻めていこうか」


 ガレスは首をこきっと鳴らした。




 エノレアは翌日から、ガレスの仕事の手伝いを始めた。

 休養しろと言われたものの、何もしないのも性に合わず、体を動かしていたほうが落ち着くのだ。


 切り倒した木の幹を頭上に投げ、剣を引き抜くとさいの目状に斬る。エノレアの周囲に、薪の形に斬られた木がドスンドスンと落ちた。


「やるな。王都に行っても腕は落ちてなさそうだな。訓練でもしてたのか?」

「えへへっ。お父さんが言う通り、王都には引ったくり犯がよくあらわれるから、そのたびに退治しているわ」

「そりゃ、頼もしいな」


 ガレスは笑う。

 ふわっと風が吹き、肌をなでる。久しぶりに汗をかいたので、そよ風が心地よかった。

 切り株に座り休憩していたエノレアは、ふと足元に小さな花が咲いていることに気付く。


「そういえば、お父さん。相談したいことがあるの」

「なんだ?」

「以前、毒物混入事件のあとから奇妙な夢を見るって言ったでしょう? その夢で、私がよく歌っていた歌があるの」


 エノレアは、その場で歌を歌って聞かせる。


「この歌の歌詞、暗号なんじゃないかと思って」

「確かにそんな気がするな。月のしずく……月光を浴びた朝露ってことか?」

「そうかもしれないし、月光花の蜜のことかも。そのほかの部分も、色々と解釈できるわ」


 月のしずくに赤い実ひとつ

 白き大地の眠り草

 金の花びら銀の糸

 めぐる季節を待ちましょう──


 とても不思議な歌詞だと思った。

 そのまま聞いても何のことを言っているのか、全く意味が通じない。けれど、歌詞として歌うのを聞いている分にはそこまで違和感もない。


「もしかして、伝承歌か?」

「伝承歌?」

「ああ。その一族に伝わるなんらかの秘密を子孫に残すために、歌にするんだ。その一族以外の誰かが聞いてもわからないような歌にな」

「ってことは、この歌は私の本当のお母さんから伝わった歌ってこと?」


 エノレアは思わず前のめりになって聞く。

「あくまでも、可能性の話だ」

「うん」


 エノレアは頷く。

 ガレスがいてくれたおかげで寂しいと思ったことはないが、それでも学校の友達が母親といる姿を見て羨ましいと思ったことは何度もある。


(めぐる季節を待ちましょうってことは、長期熟成させる食べ物、もしくは薬かしら? できるかわからないけど、解読できないか試してみようかな)

 

 母親の痕跡を見つけたかもしれないと思うと、それだけで嬉しかった。

 

 カサッと離れた場所から、音がした。

 そちらを見ると、鹿が二頭いる。


「お父さん。鹿だわ」


 エノレアは声を潜め、ガレスに囁く。


「ああ」


 ガレスは腰に付けている金属製の棒を抜くと、まっすぐにそれを鹿に向かって投げる。ヒュンッと風を切る音がして、棒は鹿の首に突き刺さった。

 声を出す間もなく一匹が倒れ、もう一匹は慌てて逃げ出した。


「やったわ! 今日は鹿肉ね!」


 エノレアは歓声を上げる。

 

「当たり前だろう。俺にかかれば、こんなの朝飯前だ」


 ガレスは得意げに胸を張る。


「そういえば、お父さん。前に送ったお菓子は食べた?」

「菓子?」

「ほら。鹿のXXに似た見た目の──」


 美味しくてさぞかしびっくりしただろうと、エノレアは期待に満ちた目でガレスを見上げる。


「ああ、あれか。まだだ」

「えー! なんで食べないのよ! すごく美味しいのに! もう、私が食べる!」


 エノレアはぷくっと頬を膨らませる。


「いーや。あれは俺がもらったから俺のもんだ」

「食べないくせに何言ってるの」


 エノレアは言い返す。

 こんな親子喧嘩もどきも久しぶりだ。


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原作を担当している漫画の新連載が始まりました! 虐げられ令嬢×最強魔法使いの、触れたいのに触れられないジレきゅんロマンス、是非お楽しみください


■タイトル 「魔力ゼロの身代わり花嫁 ~触れてはいけない“あなた”が最愛になるまで~」   

■漫画家/原作者 よくねる先生/三沢ケイ

■レーベル 一迅社 コミック

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