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性格が悪い

事務所のドアが開いた。


入ってきたのは、三十代くらいの男だった。


座るなり言った。


「俺、性格悪いんです」


探偵はコーヒーを飲む。


「そうか」


「職場で言われて」

「友達にも言われて」

「元カノにも言われました」


「うん」


「だから、多分本当に性格悪いんだと思います」


少し間が空く。


探偵は言った。


「何した」


「え?」


「性格悪いって言われるようなこと」


「思ったことは結構はっきり言います」

「おかしいと思ったら、おかしいって言うし」

「無理なことは無理って言うし」


「うん」


「それでよく揉めます」


探偵は少し考えてから言った。


「そいつらは」

「自分の性格直したのか」


男は黙る。


「……直してないと思います」


「じゃあ」

「お前の性格直そうとしてただけか」


男は少し驚いた顔をした。


「……言われてみれば」


探偵は言った。


「性格にいいも悪いもない」


男は黙る。


「あるのは」

「合うか合わないか」

「都合がいいか悪いか」

「それだけだ」


男は何も言わなかった。


探偵は続ける。


「人のこと性格悪いって言うのは簡単だ」

「でもそれ」

「相手を自分の都合いい人間に変えたいだけだろ」


男は小さく息を吐いた。


「……そうかもしれないです」


少し間が空く。


男は言った。


「じゃあ俺」

「このままでいいんですかね」


探偵は言った。


「人に意地悪してないなら」

「別にいいんじゃないか」


「……してないと思います」


「じゃあいいだろ」


男は少し考えてから言った。


「俺、優しくはないけど」

「嘘つくの嫌いなんですよね」


「そうか」


「だから思ったこと言うんですけど」

「それで嫌われるなら」

「もう仕方ないのかなって」


探偵は言った。


「全員に好かれるのは無理だ」


「……はい」


「だから」

「嫌われないように生きるか」

「嘘つかないで生きるか」

「どっちか選べ」


男はしばらく黙っていた。


それから言った。


「……嘘つかない方がいいです」


「じゃあ」

「嫌われるのは仕方ないな」


男は少し笑った。


帰り際、男は言った。


「俺、性格悪いですかね」


探偵は少しだけ考えてから言った。


「さあな」


「え」


「ただ」


「はい」


「正しいやつが」

「優しいとは限らん」


男は少し黙ってから、


「……覚えときます」


と言って帰っていった。


ドアが閉まる。


相棒が言う。


「ねぇ」


「何だ」


「いい人って何だろうね」


探偵は少し考えてから言った。


「都合のいい人だろ」


コーヒーはもう冷めていた。


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