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人が嫌い

 男は座るなり言った。


「人が嫌いなんです」


 探偵はコーヒーを飲みながら言った。


「そうか」


「でも、仕事は人と関わらないといけないし」

「近所付き合いもあるし」

「親戚もいるし」


 男は少し疲れた顔で笑った。


「疲れるんです」

「人といると」


 探偵はカップを机に置いた。


「何かあったのか」


 男は少し考えてから言った。


「……色々、ありました」


「友達とか」

「会社の人とか」

「恋人とか」


 少し間。


「もう、疲れたなって」


 探偵は黙って聞いていた。


 男は言った。


「だから、もう人に期待するのやめようと思って」

「最初から期待しなければ」

「裏切られても何とも思わないし」


 探偵は少し笑った。


「それで、人が嫌いになったのか」


「はい」


 探偵は少し考えてから言った。


「嫌いってことはな」


 男は顔を上げた。


「まだ期待してるってことだ」


 男は黙った。


「本当にどうでもいいやつのことは」

「嫌いにもならない」


 静かな部屋に、時計の音が落ちる。


 男は小さく言った。


「……じゃあ」

「まだ、人のこと嫌いじゃないのかもしれませんね」


 探偵は肩をすくめた。


「嫌いになるくらいには」

「関わってたんだろ」


 男は少しだけ笑った。


「……そうですね」


 しばらくして、男は立ち上がった。


「ありがとうございました」


「どういたしまして」


 ドアが閉まる。


 相棒が奥から顔を出した。


「人が嫌いって、寂しいね」


 探偵は少し考えた。


「寂しいから、嫌いになるのかもな」


 窓の外で車が走っていった。


「本当にどうでもよくなったら」

「嫌いとも思わなくなる」


 少し間。


「嫌いって言ってるうちは」

「まだ人間の中にいるよ」


 探偵はそう言って、コーヒーを飲んだ。


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