嫉妬されない=愛されてない?
探偵は事務所のソファで寝転がって、雑誌を顔に乗せていた。
「生きてる?」
「生きてる」
「お客さん」
「……起きるか」
雑誌をどけて体を起こし、ソファに座り直す。
二十代後半くらいの女性が、少し困った顔で座っていた。
「私、彼氏がいるんですけど」
「うん」
「嫉妬されないんです」
探偵はコーヒーを一口飲んだ。
「男の人と遊びに行っても、何も言われないし」
「自由でいいよ、って言われます」
女性は少し黙ってから言った。
「これって……」
「愛されてないんですかね」
探偵はカップを机に置いた。
「嫉妬してほしいのか?」
「……少し」
探偵は少し考える。
「嫉妬ってのはな」
「不安なときに出るもんだ」
女性は黙る。
「取られるかもしれない、とかな」
「自信がない、とかな」
窓の外を見る。
「余裕があるやつは」
「あんまり嫉妬しない」
女性は小さく言う。
「じゃあ、嫉妬しない人は」
「愛してないわけじゃないんですか」
探偵は肩をすくめる。
「本当に興味なかったら」
コーヒーを飲む。
「そもそも付き合わないだろ」
女性は少し驚いた顔をした。
しばらく黙ってから、小さく笑う。
「……そうか」
女性は立ち上がる。
「ありがとうございました」
「どういたしまして」
扉が閉まる。
相棒が顔を出す。
「嫉妬しないって、いいことなの?悪いことなの?」
探偵はソファにもたれた。
「さあな」
少し考える。
「愛し方なんて、人それぞれだろ」
窓の外で車の音がした。
「証拠なんて」
コーヒーを一口飲む。
「探しても、仕方ないだろ」




