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ずっと不安で安心できない

朝。


事務所の隅で、俺はルームウォーカーの上を歩いていた。


カタ、カタ、カタ。


一定のリズム。


相棒がソファから言う。


「それ意味ある?」


「ある」


前を見たまま答える。


「体は動かさないと鈍る」


「探偵に必要?」


「人間に必要だ」


相棒は肩をすくめる。


そのとき、事務所のドアが開いた。


遠慮がちな音。


俺は歩きながら言う。


「相談か?」


若い女が立っていた。


「……はい」


「何だ」


女は少し迷ってから言う。


「ずっと不安なんです」


相棒が顔を上げる。


「何が?」


「分からないんです」


俺は速度を少し落とす。


カタ、カタ。


「普通だ」


女が目を瞬かせる。


「え?」


「人間は不安を探す生き物だ」


「危険を見つけて、生き残ってきた」


相棒が腕を組む。


「じゃあ不安はなくならない?」


「なくならない」


女は俯く。


「じゃあ、どうすれば」


俺はマシンを止める。


少し考えてから言う。


「使えばいい」


女が顔を上げる。


「使う?」


「不安は警報だ」


「鳴ったら、何が怖いか見る」


「対処する」


「それだけだ」


相棒が笑う。


「便利なものね」


俺は肩をすくめる。


「人間はそれで生き残ってきた」


女はしばらく黙っていた。


それから小さく言う。


「……少し楽になりました」


俺は頷く。


「それなら来た意味はある」


女が帰る。


ドアが静かに閉まる。


俺はルームウォーカーに戻る。


カタ、カタ、カタ。


相棒が言う。


「あなたはどうしてる?」


「何が」


「不安なとき」


俺は前を見たまま答える。


「歩く」


相棒は少し笑った。


事務所の朝は、いつも通りだった。

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