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頑張っているのに評価されない

 事務所のドアが、ゆっくり開いた。


「……相談、いいですか?」


 入ってきた男性は、どこか疲れた顔をしていた。


 机に足を投げ出していた俺は、軽く手を上げる。


「どうぞ。失恋でも仕事でも、人生相談でも」


 横から声が飛ぶ。


「それが人の話聞く態度?」


 相棒だ。


 仕方なく足を下ろす。


 男性は椅子に座るなり言った。


「頑張ってるのに、評価されないんです」


 視線は下を向いたまま。


「残業もしてますし、仕事も引き受けてます」

「でも評価されるのは、いつも別の人で……」


 言葉が詰まる。


「正直、やる気がなくなってきて」


 しばらく黙ってから、俺は聞いた。


「評価されたら、満足する?」


 男性は少し驚いた顔をする。


「……え?」


「上司に褒められて、昇進して、給料上がったら終わり?」


 男性は考え込む。


「……いや」

「たぶん、次はもっと上を目指すと思います」


「だろうな」


 相棒が静かに言う。


「評価って、もらってもすぐ次が欲しくなるものよ」


 男性は、はっとする。


 俺は続ける。


「他人の評価ってのはな」

「終わりがない」


「今日は評価されても、明日は不安になる」

「また抜かれるんじゃないかってな」


 沈黙。


「じゃあ、どうすれば……」


 男性が絞り出すように言う。


 俺は窓の外を見ながら答える。


「自分で決めろ」


「……何をです?」


「今日の自分、納得できるかどうか」


 静かに言う。


「サボったと思うなら、やれ」

「やれるだけやったなら、それで終わりにしろ」


 相棒が付け加える。


「他人の点数表で生きてると、一生休めないわよ」


 男性は、しばらく黙っていた。


 やがて、小さく笑う。


「……確かに」

「評価されても、不満は消えなかったです」


「だろ?」


 男性は立ち上がる。


「なんか、少し楽になりました」


「上出来だ」


 頭を下げ、部屋を出ていく。


 ドアが閉まる。


 俺は椅子にもたれかかる。


「解決したか?」


「してないわよ」


 相棒はコーヒーを口にする。


「でも、自分で終わらせる方法は分かったんじゃない?」


 少し間。


「……それで十分だろ」


 湯気が、ゆっくり揺れていた。


 他人に認められる証拠なんて、

 いくら集めても足りない。


 自分で納得できるなら、それでいい。


 それが分かったなら――


 もう、証拠はいらない。

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