証拠はいらない。でも、持てる位置にはいる
事務所のソファで、探偵は寝転がっていた。
相棒がコーヒーを置く。
「ねぇ」
「ん」
「何で探偵なんてやってるのよ」
探偵は目を開けない。
「別に」
「元弁護士でしょ」
「そうだな」
「戻らないの?」
少し間。
探偵はゆっくり目を開けた。
「最初は」
「それで守れると思ってた」
相棒は黙る。
「権利も、立場も」
一拍。
「でも」
「守れないやつの方が多かった」
コーヒーを一口飲む。
「証拠があっても」
「正しいって分かってても」
「終わらないやつがいる」
相棒は腕を組む。
「終わってるよね、法律的には」
「そうだな」
一拍。
「外側はな」
少し間。
「中は、残る」
相棒は何も言わない。
探偵は天井を見る。
「解決しても」
「納得しないやつがいる」
「勝っても」
「決められないやつがいる」
コーヒーを置く。
「欲しいのは、そこじゃない」
一拍。
「もっと手前だ」
「……どういうこと?」
「そのままでいい」
「それって、いつも言ってるやつ?」
「そうだ」
一拍。
「そこからだ」
相棒は小さく息を吐いた。
「面倒くさいわね」
「そうだな」
少し間。
探偵は続ける。
「ただ」
一拍。
「いざって時のカードは、持っておきたい」
「証拠ね」
相棒が少し笑う。
「証拠はいらない、んじゃなかった?」
少し間。
探偵は目を閉じる。
「基本はいらん」
一拍。
「でも」
「必要になるやつもいる」
相棒は黙る。
探偵は続ける。
「使うかどうかは、そいつが決める」
少し間。
「俺は、取れる位置にいるだけだ」
相棒は小さく息を吐いた。
「……なるほどね」
少し間。
「……いいんじゃない」
探偵はソファに横になる。
目を閉じた。




